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システム構築の新標準:プライベートクラウド構築を盤石に――先進事例が示す道 (1/3)

プライベートクラウドの具体的な事例は少ないが、そこから学べることはたくさんある。IBMやNECなどが手掛けるプライベートクラウド構築から、活用のポイントやシステム構築の将来像を探っていく。


 システム構築の手法である「プライベートクラウド」は新しい取り組みでもあるため、具体的な事例の数はまだ多くない。だが、数少ない事例から学べることはたくさんある。今回は企業におけるプライベートクラウド構築の事例を通じて、活用のポイントやシステム構築の将来像を探っていく。

 プライベートクラウドを構築するには、情報システムに対する強いガバナンスを維持しながら、「リソースの統合と共有」「構築/運用プロセスの標準化」「構築/運用プロセスの自動化」という3つのステップを踏んでいく必要がある。ガバナンスを維持するためのノウハウが十分にないユーザー企業は、それを蓄積していく努力が必要だ。

 現時点におけるプライベートクラウド構築の事例は、ベンダー自らの手で構築、運用されているものが多い。その事例を見てみよう。

研究開発に特化したIBMクラウド

 「IBM Research Compute Cloud(RC2)」は、世界8カ所にあるIBM基礎研究所の研究員が活用するオンデマンドのITリソースサービスだ。仮想化されたサーバ環境をあらかじめ用意しておくことで、研究員は各自のプロジェクトに必要なシステム環境を素早く構築できる。利用における手順は次の通りだ。

(1)RC2にアクセスし、CPU、メモリ、ストレージなどの必要なITリソース、ミドルウェアなどのソフトウェア環境をメニューから選ぶ。

(2)選んだ内容は利用申請という形で上長に送られる。

(3)申請が承認されれば、ITリソースが自動的に配備される。利用側はどのデータセンター内にシステム環境が構築されたかを意識する必要はない。


 RC2は研究開発という限定された用途向けだが、プライベートクラウドを構築する3つのステップ(第2回の連載を参照)の最終段階である「構築/運用プロセスの自動化」まで到達している。これまでIBMでは、ITリソースが利用できる環境の構築に約2週間かかっていたが、RC2の導入によって10〜20分程度に短縮できた。これにより、同社の研究開発は大きく効率化されたという。

 IBMが取り組むもう1つの活用事例は「Technology Adoption Program(TAP)」と呼ぶものだ。TAPとは、8万人以上のIBM社員が参加する社内コミュニティーである。ここでは新しい製品やサービスを開発する際に活用することで、品質や革新性を高めている。従来はプロジェクトごとにITリソースを確保していたが、仮想化によるプライベートクラウドの仕組みを取り入れたことで、システム構築に必要なハードウェアや人員の費用などの運用コストを、年間で87%削減したという。

 IBMの2つの事例では、(1)複数拠点から社員が利用できる、(2)個々のプロジェクトは期間限定、(3)ITリソースをさまざまな形態で利用する――といった点が共通している。ここでのポイントは、個別に構築してきた情報システムを集約し、負荷を平準化していることだ。

 例えば、特定の時間帯に負荷が集中するバッチ処理のみを多数集めても、負荷平準化という観点では最大限のメリットが得られない。バッチ処理時間帯以外にはITリソースが遊休状態となってしまうからである。ITリソースを最大限に活用するためには利用形態の異なる情報システムを集約する必要があるが、サービスレベルが大きく異なるシステムをいきなり集約するのは運用管理の面でハードルが高い。そこでIBMは、研究開発やサービスといった用途に特化することで、この課題を回避しているわけだ。

国内の先進事例――NECの基幹システム刷新プロジェクト

 プライベートクラウドの構築において、国内ではNECの取り組みが先進的だ。同社は販売/経理/資材などの基幹システムをプライベートクラウドで刷新するプロジェクトに着手した。グループ企業にもその対象はおよび、業務プロセスの大規模な再設計(Business Process Re-engineerig:BPR)も進めていく。

 「Express5800」や「ECO CENTER」といった同社製のサーバを活用し、「SAP ERP」「Windows Server 2008」「SQL Server 2008」を使って情報システムを構築する。仮想化されたITリソースを運用管理する独自のミドルウェアも開発することで、同社の間接部門に掛かる総コストを2割以上削減する。

 ビジネス面でも整備を進める。具体的には、業務プロセスの設計や最適化を行うNECのツールと方法論をまとめた業務プロセス管理ツール「ARIS(ARchitecture of Integrated Information Systems)」を活用する。

 異なる拠点の基幹システムをプライベートクラウド上で効率的に稼働させるには、拠点間やグループ企業間の整合性に配慮した業務プロセスの管理と、仮想化されたITリソースを効率的に管理するミドルウェアが欠かせない。クラウドへの取り組みを強化するNECにとって、基幹システムのプライベートクラウド化は、それに関連する種々のソリューションの実証とノウハウを蓄積できる点で大きな意味を持つ。いかにARISを磨き上げ、新規に開発するミドルウェアの完成度を高めるかが、注目すべきポイントになるだろう。

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