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» 2009年08月13日 08時00分 UPDATE

「脱KY」を図る情報コントロール術:チームワークは7人が限界?――場のデザインの初歩を学ぶ (1/2)

「場のデザイン」スキルを身に付けるためには、まず7人以下のチームを仕切ってみよう。できればその際、発言のハードルを下げ問題意識を共有しやすくするため、近い位階の人間同士だと、なおいい。

[野水克也(サイボウズ),ITmedia]

前回のおさらい

わたしはグループウェアベンダーに勤める40代の中間管理職。ある日相談を受けた友人、A夫の職場では、不況下での業績低迷で、社内の雰囲気が悪くなっているという。グループウェアの掲示板での雰囲気もすっかり冷めてしまい、さてこの先どうしようかと相談を受けた……。


ファシリテーションに求められる「4つのスキル」

 さて、前回話に出た「ファシリテーション」をもう少し詳しく説明しよう。

 辞書などに当たると、ファシリテーションの意味は「容易にする」や「円滑にする」と出ている。それが転じて、人と人とのコミュニケーションを円滑に進むように支援し、チームとして最大の成果が出せるように支援することを「ファシリテーション」、支援する人のことを「ファシリテーター」と呼ぶようになった。

 一般的に研究、または実践されている「ファシリテーション」は、主にリアルの会議やプロジェクト進行などに活用されているもので、ネットコミュニケーションでのファシリテーションについて研究された事例は、わたしの見る限り、まだない。

 しかし、時間差があることと、情報量が少ないことを除けば、リアルもネット上も、コミュニケーションの及ぼす効果自体にさしたる違いはない。

 さて、このファシリテーターに求められるスキルであるが、その流派やコンサルタントごとにいくつかの分類法があるようで、統一されているわけでもなさそうだ。ここでは日本ファシリテーション協会による、次の4つのスキルに沿って、話を進めたい。

  1. 場のデザインのスキル 〜場をつくり、つなげる〜
  2. 対人関係のスキル 〜受け止め、引き出す〜
  3. 構造化のスキル 〜かみ合わせ、整理する〜
  4. 合意形成のスキル 〜まとめて、分かち合う〜

 このうち、最も大切なのは「場のデザインのスキル」ではないかと思う。

 対人関係や構造化、合意形成は、多かれ少なかれ、ほとんどの人が日常意識していることであるが、場自体のデザインについては、案外、無頓着である。

 考えてみれば、酒の席と会社では違うコミュニケーションが生まれるし、大勢の前でのスピーチとグループミーティングでは、ほとんどの人がまったく違う発言方法をとるのに、場自体に注意を払わないのは、ずいぶんとおかしな話だと思う。

「経営変数」と「環境変数」

イラスト:本橋ゆうこ イラスト:本橋ゆうこ

 では、場をマネジメントするために必要な要素はなんだろうか? 前回、「人の行動は、発言そのものではなくその場の構成要素の相互作用で導き出される」という話をしたけれど、これをもう少し詳しく説明してみよう。

 企業などで社員の行動を促す構成要素には、大きく分けて、経営変数と環境変数がある。経営変数とは、動かしようのない業績、売上高などだが、そのほかに、容易に変えることができる目標や注力すべき指標、そして人事などの制度も、変数に含まれる。

 その昔、花王がライバル会社の追い上げを食らってピンチに立たされた時期に社長になった丸田氏が、営業担当者から売り上げノルマを撤廃し、「棚占有率」という新しい指標を営業目標にして以来、20期以上連続の増収を成し遂げている例は、経営変数の変更で会社の雰囲気を変えた好例といえよう。

 そして、もう1つの環境変数は、「変数」ではあるけれども、実際にはあまり計ることのできない“雰囲気”のようなものである。グループや会社を包み込む空気ともいえ、数値にも表れなければ実体もないので、厄介である。

 この“空気”は、どのようにして形成されるのだろう? 空気は、メンバーの心に起因する感情そのものの集合体であるが、これは経営変数によっても変えることができる反面、経営変数だけで変わるものでもない。

 この環境をコントロールするために企業では、例えば子会社を作ったり、新規事業部を作ったりして、新しい流れを起こそうとするが、わざわざそんなものを作るのは「経営変数」と「環境変数」を変えたいからに、ほかならない。


 ……というようなことを文章にまとめてA夫にメールしてみたら「オレにそんな権限あるわけないだろ!」とあっという間に返事が来た。

場のデザインスキルは、会社経営に通じる

 頭ごなしに人の親切を否定するとは、こいつも相当なネガティブモードだ。メールを書くのも面倒になってきたので(というか、ネガティブモードの人と話すのに、文字のコミュニケーションはあまり適切ではない)、まずは呼び出して、飲みながら話すことにする。取りあえず、今日のわたしのゴールは「ただ酒」を飲むことにしておこう。そのためには、A夫をいい気分にさせて帰さないと。

A夫 あのな、議論が後ろ向きで困ってるって相談してるのに、「子会社作れ」ってなんだよ!

 のっけから彼は、毒づきモードである。

わたし いやいや、大きいグループも小さいグループも原理は一緒だということを説明したかったんだけど、言葉足らずだったね。

A夫 だいたい、ファシリテーションの話じゃなかったのか? まるで経営論じゃないか。

わたし すまん、すまん。確かにメールを見返してみると、経営者向けのコンサルみたいなことを書いていたね。まあ、ちょっと知識のあるところを自慢したかっただけということで許してくれよ(笑)

 A夫はまだ納得しきってはいないようだが、言いたいことは言い尽くしたのか、少し表情が穏やかになっている。

わたし でもね。ファシリテーションのスキルの1番目の「場のデザインのスキル」は、実は会社経営とほとんど一緒なんだよ。だって、大小の違いはあれ、グループを1つの目標に向けて導いていくことに違いはないからね。

A夫 でも、会社経営の場合は経営変数だっけ? 目標とか指標とかいろいろ変えられるところがあるだろ。小さいグループの場合は、そもそも目標も指示も上から落とされてきているから、重苦しい雰囲気は変えられないんじゃないか?

わたし 確かに変えられる変数は、限られている。だけど、経営変数ばかりが変えられるものではないんだ。「場」そのものをデザインするスキルっていうのは、ここがミソなんだよ。

A夫 場のデザイン?

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