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» 2009年08月19日 08時00分 UPDATE

ネットベンチャーでもできるオフショア開発:「開発コスト数分の1」という幻想 (1/3)

システム開発のコストを減らす手法としてオフショア開発を視野に入れる企業が出てきた。だが外部委託によるコスト減という名目だけでは成果に結実しない。本稿では、Webサービスを立ち上げた経験を基に、オフショア開発において直面する課題やコスト構造の現実をお伝えする。

[今泉大輔,ITmedia]

 わたしが代表取締役を務めるピーポーズはWebサービスの開発をインドに委託している。最初の頃、それを人に話すと「オフショア開発をやっているのですか?」という反応が返ってきて、こちらが面食らった。自分たちにはオフショア開発という意識はなく、単に開発を委託している会社がインドにあるという認識だった。いずれにしても、委託側の文化や言語の関係など、オフショア開発には乗り越えなければならない壁があると感じている方も多いはずだ。そこで本稿では、小規模な企業がインドの企業にシステム開発を委託する際に生じる課題を、自らの経験を振り返りながら考察する。

前編である「Amazonクラウド」の威力では、ピーポーズが展開するWebサービスにAmazon EC2を使うことで、コスト削減につなげた事例を紹介している。


開発費3000万円が10分の1に

 利用者の空き時間を売買できるピーポーズのWebサービス「pepoz」は当初、大手企業の新規事業として企画されていた。同社がシステム開発の費用を見積ったところ、一式で7000万円という数字が出た。その頃はそれが高いのか安いのか分からなかった。その後、3000万円で開発してもいいという企業が現れた。受託構造をシンプルにすると、費用はそれぐらいまで下がるとのことだった。

 その後、紆余曲折があって、pepozを自分たちで立ち上げることにした。自己資金で始めるので3000万円は厳しい。幾つかの会社に見積をしてもらって、1000万円強でやっていただけるところが現れた。このソフトハウスでは非常に良心的な対応をしていただけたのだが、自分たちの予算ではまだ手が届かないため、断らざるを得なかった。

 残る選択肢ということで、インドの開発会社への委託を考え始めた。Webで検索したところ、日本企業からの受託を手掛けているインドの開発会社Fが見つかった。電子メールを送ったところ、すぐに携帯電話に連絡がきた。インドなまりの強い英語と日本語が混じった言葉で、自分たちを売り込んできた。その会社に決めたのは、日本法人のオフィスが新宿にあり、インド人の社長と話してみて、付き合っていけそうだと思ったからである。

 どのようなオフショア開発でも最初は第三者やメディアを経由した情報収集から始まるが、委託を決定する段階では、必ず現地の会社に赴いて、いわば現物を見て決めるのが普通だと思う。本来ならF社があるインドのプーネ市に出向いて担当者と顔を合わせ、委託を決めることが必要だったが、それが新宿で済んだのはありがたかった。これが2007年7月ごろの話である。

 インドへの発注に抵抗感がなかったのは、筆者がリサーチャーの仕事をしているネットワーク機器大手C社においてインド出身の方々が多数活躍しており、IT分野で働いているインドの人にはとにかく優秀な人が多いという肌感覚を持っていたからである。

 こちらから仕様書を出す前に、「とにかく300万円で抑えたい」ということをF社に伝えた。

仕様伝達は英語がベース

 続いて仕様の伝達に入った。F社は複数の日本企業の開発案件を手掛けた実績があるが、日本語対応ができるのは営業担当者と開発総責任者だけ。実際にわれわれとのインタフェースになるプロジェクトマネジャーは英語しか話せない方だということが後で判明した。あまりぜいたくを言っていられないので、英語ベースの仕様伝達が必要なのだと割り切って開発を進めた。

 pepozでは、人の時間の売り買いを可能にするという前例のない機能を形にする必要があった。何が必要か? まずモックアップである。とにかく頭の中にある構想を見えるモノにする必要があるということで、Webページでできたクリッカブルなモックアップを作成した。日本語表記に加えてF社のスタッフが 読める英語の説明を添えた結果、全体として文字がびっしり詰まったモックアップが完成した。モックアップを補足するものとして、すべての機能の動作を記述した英語の仕様書を書いた。

 この2つがこちらからF社に伝えた概念設計である。2007年夏から秋にかけてこれらの作業を実施した。概念設計を分析した詳細設計がF社から返ってきたのがその1カ月後。Excelのシート数が120にも上る膨大な設計書だった。これにかかる人月は11.5人月。1人月20日(現在は1人月22日に変更)で30万円、計350万円という見積になった。われわれの初期資金でカバーできる水準だったので開発を開始した。

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