プライベートクラウド

クラウド時代のデータベースに求められる要件とはシステム構築の新標準(1/2 ページ)

日本オラクルの三澤氏は「クラウド時代にはデータベースも1つのインフラとしてとらえなければならない」と指摘した。

» 2009年08月27日 19時39分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

 日本オラクルは8月25日、同社のデータベースへの取り組みについて紹介するイベント「Oracle Database Summit」を都内で開催した。講演した日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長 三澤智光氏は「クラウド時代にはデータベースも1つのインフラとしてとらえなければならない」と指摘する。サーバの仮想化だけではクラウドコンピューティングは実現できないという。

日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏

 クライアント/サーバ時代は、OLTP(オンライントランザクション処理)をいかに速く、正確に行うかがデータベースに求められた。その後のインターネットコンピューティング時代には、セキュリティや大規模アクセスへの対応が求められた。現状ではさらに高性能な処理と並行し拡張性、可用性が求められている。

 これらのデータベースへの要求に対応するために、Oracleでは10年前から、複数のサーバを横断する形で1つの仮想領域を生成してデータベースを稼働させる「Real Application Clusters」を提供し、グリッドコンピューティングを実現してきた。このグリッドの技術こそが、クラウド時代の次世代データセンターでは極めて重要だと三澤氏は言う。このグリッドの技術があって初めて、その上で動くアプリケーションがマルチサービス、マルチテナントで提供できる。

パブリッククラウドでOracle Databaseを使う

 Oracleはクラウドコンピューティングに対し、2つのアプローチを持つ。1つがプライベートクラウドの構築、もう1つがパブリッククラウドを使うことだ。パブリッククラウドを使うアプローチとしては、Amazon E2への対応がある。

 「パブリッククラウドの1番のメリットは俊敏性」と三澤氏は言う。Oracleの環境を手に入れようとすれば、通常はハードウェアを注文し、それが届いてインストールして利用できるようになるまでに、2週間ほどかかるだろう。これに対しAmazon EC2ならば、ほんの10分ほどで利用できるようになる。

 「AmazonマシンイメージとしてOracle Database 11g、10g、WebLogicなどさまざまなものがあらかじめ用意しています。これらはまさに冷凍食品のパッケージのようなもので、選んで電子レンジで解凍すればすぐに利用できるのです」(三澤氏)

 実際に、Amazon EC2で簡単にOracleイメージを展開し、利用できるようにするデモンストレーションが行われた。単に素早く展開できるだけでなく、管理ツールのOracle Enterprise Managerを利用すれば、手元にあるOracleもAmazon EC2上のOracleも、1つの管理画面上から統一的に管理できる様子も示された。すぐに展開でき、それなりの処理はAmazon EC2上でもできるが、信頼性の観点から開発環境などで利用するのが現実的という。「本番環境では利用しにくい」と三澤氏は言う。

 Oracleの特徴は、このAmazon EC2上でも手元のサーバでも利用できる携帯性の高いライセンスを用意している点だ。Amazon EC2上で素早くOracle環境を開発し、出来上がったらそれを手元のサーバで運用するといった場合にも、Oracleのライセンスは移行可能だ。別途購入する必要はない。

Oracle Databaseでプライベートクラウドを構築する

 サーバの仮想化で仮に4台のサーバを物理的に1台に統合できても、仮想化サーバは4台残ってしまう。むしろ仮想化レイヤーが加わることで運用管理は複雑化するかもしれない。さらに一歩進んでシステムを論理的に統合化することが重要なのだ。そのためには、データベース、さらにはその上のアプリケーション実行環境まで仮想化していなければ統合できない。

 通常のサーバ仮想化は、1つのサーバリソースを分割し、利用する技術だ。これに対しOracleのグリッド技術は、複数のリソースをあたかも1つかのように統合するというまったく逆の技術だ。この2つを組み合わせることで、クラウド時代に必要な拡張性と可用性を初めて提供できると三澤氏は強調している。

 サーバの仮想化だけでは十分な可用性を確保できない。物理サーバで障害が起きた場合には、復旧に時間がかかりすぎるのだ。もちろん、VMwareのVMotionのような機能を利用したフェールオーバーも可能だが、対象がデータベースサーバの場合には、復旧するのに多くの時間が必要になるという。

 論理的な統合ができなければ、セキュリティ対策なども個々の仮想サーバごとに行わなければならない。マルチテント環境を考えた場合にはこれでは管理に手間がかかりすぎる。サーバプールを構築し、その上でマルチサービス、マルチテナントを実現できるのはOracleのセールスポイントといえる。

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