クラウド時代のデータベース新潮流

変化するデータベースクラウド時代のデータべース新潮流(1/4 ページ)

人によって定義が異なるなど不確かな要素も多いクラウドコンピューティングだが、今後のITシステムの主流になると考える人が多いのも事実だ。その鍵を握るのがデータベースである。

» 2009年10月05日 08時00分 公開
[谷川耕一,ITmedia]

クラウドコンピューティングへの大きな波

 キーノートセッションが終了しても、大勢の人で通路が混み合い会場の外になかなか出られない。これは、先日開催されたSalesforce.comのイベント「Cloudforce Japan 2009」での出来事だ。2008年の参加者2000名の倍以上、4000名を超える人が、クラウドコンピューティングの情報を求めて会場にやってきたのだ。

 2008年からの厳しい経済状況下にあっても、このようにクラウドには大きな注目が集まっている。いや、むしろ景気が悪いからこそ、クラウドの活用になんらかの光明を見い出そうとしているのかもしれない。

 世間で大きな関心を集めているものの、実際にクラウドを活用している企業はまだそれほど多くない。特に日本においては、クラウドを自社のITシステムの主流に据えている企業は現時点では皆無だろう。

 クラウドコンピューティングのとらえ方も人によって異なる。Amazon EC2やGoogle App Engine、あるいはWindows Azureのようなプラットホームを提供するものこそがクラウドだという人もいれば、インターネット越しに提供されるサービスはすべてクラウドの範疇だということすらある。

 インターネット越しではなく自社内に「クラウドのようなシステム」を構築し、それをプライベートクラウドと呼ぶ情報システムの形態が出てきた。Salesforce.comなどは、プライベートクラウドについて雲の向こうにないので厳密にはクラウドとはいえないとの考えだが、日本においてはむしろプライベートクラウドに関心が集まっている。

 さまざまな定義や見解があるにせよ、この不確かなクラウドコンピューティングというものが、今後のITシステムの主流になると考える人は多い。理由の1つが、うまく活用できればかなりのコスト削減の可能性があるからだ。クラウドでは、コンピュータのリソースを集約しそれを大勢のユーザーが共有して利用する。それにより、ITリソースの利用効率が飛躍的に向上し、コストを大幅に下げられる可能性があるのだ。この効果をさらに引き出すには、いかに多くのユーザーによってクラウドコンピューティング環境やサービスを共有できるかが鍵になる。

クラウドはサーバ仮想化だけでは実現できない

 クラウド環境下で莫大なユーザーにより集約されたコンピュータリソースを共有するとなると、仮想化技術の活用は避けては通れない。むしろ、仮想化が普及したからこそ、現在のクラウドの世界があるとも言える。

 クラウドコンピューティングでは、仮想化技術を利用してハードウェアなどのITリソースを集約、さらに集約したものを再び仮想化技術を用いて分割し、ユーザーごとに割り当てて利用する。仮想化技術自体はメインフレーム時代からある古いテクノロジーだが、最近になり一気に安価なIA(インテル・アーキテクチャ)サーバなどを利用できるようになったことが、コストの効率化を目指すクラウドコンピューティングを加速させるきっかけとなっている。

 クラウドコンピューティングにおける仮想化の対象は、サーバやストレージ、さらにはネットワークなどのハードウェアリソースが中心だ。しかしながら、データベースの雄Oracleは「そうした仮想化だけではクラウドでの真の効率化が実現しない」と主張する。いまや、情報システムを構築する際にデータベースを利用しないものはない。サーバやストレージと同様、データベースレイヤーの仮想化も重要だとOracleは主張する。

 確かに、サーバやストレージが仮想化されていても、その上で動くデータベースが仮想化されていなければ、仮想化サーバ上にアプリケーションごとにデータベースを多数起動し、それを別々に運用しなければいけなくなる。

 これでは、ユーザー数が増え、さらに管理するアプリケーションが増えれば増えるほど多数のデータベースが乱立することとなり、システム管理の手間とコストが増大する。そうなれば、ハードウェアリソースを効率良く利用するのも難しくなる。

 クラウドで仮想化を利用するメリットは、リソースの集約、共有による効率化だけではない。柔軟な拡張性も、極めて大きなメリットだ。ところがデータベースが仮想化できなければ、サーバやストレージが仮想化で柔軟に拡張できたとしても、データベースがそれに追随できない。

 そのため、全体としては拡張性に欠けるクラウドコンピューティング環境が出来上がってしまうのだ。データベースも仮想化し、負荷の変化に合わせ柔軟にサーバを追加したり減少させたりできることは、クラウドコンピューティングの拡張性を確保する上では重要な機能といえる。

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