Google、Amazonとも戦える――IIJのクラウド戦略栗原潔のクラウドレポート

アナリストの栗原潔氏が国内主要ベンダーのクラウド戦略について取材する。インターネットイニシアティブ(IIJ)の取締役ソリューション本部本部長、時田一広氏に聞く。

» 2009年12月22日 08時00分 公開
[聞き手:栗原潔,ITmedia]

 アナリストの栗原潔氏が国内主要ベンダーのクラウド戦略について取材する。今回は、日本を代表するISPの1つであるインターネットイニシアティブ(IIJ)の取締役ソリューション本部本部長、時田一広氏に同社のクラウド戦略について聞いた。

栗原 クラウドサービスとして「GIO(ジオ)」を発表しました。詳細を教えてください。

IIJの取締役ソリューション本部本部長、時田一広氏

時田 IIJはホスティングなどのデータセンターアウトソーシングを中核事業としています。柔軟性を強化したサービスとしてGIOを10月に発表しました。IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)の階層に焦点を当てる一方、PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)やSaaS(サービスとしてのソフトウェア)分野についてはパートナーシップに依存する戦略です。

栗原 市場におけるサービスの位置付けとしてはどう考えていますか。

時田 高品質のサービスをレンタルサーバと同じくらいの価格で提供し、かつシステムインテグレーターによる個別案件の構成と同等の柔軟性を保つようにしています。サービスのラインアップとしてはGIOパブリックとGIOプライベートがあります。

栗原 両者の相違はどうなっているのですか。

時田 GIOパブリックは誰でも手軽にクラウド環境を実現するためのパッケージ型サービスです。Amazon EC2などと同じ位置付けにあるサービスと考えてください。GIOプライベートは企業内クラウド(インターナルクラウド)という意味ではなく、顧客独自の環境をIIJのデータセンター内に構築するサービスです。より細かい構成設定が可能で、顧客独自のサーバ、例えば商用UNIXのサーバをハウジングによりお預かりして、クラウドのほかのサーバと組み合わせて利用することも可能です。

栗原 料金体系もAmazon EC2のような従量制なのでしょうか。

時田 現状ではメニューから選択する月額固定型となっています。サーバリソースは0.5コア単位で利用可能であり、最低料金は月額8000円です。もちろん、規模の拡張は可能です。資源の使用量に応じて極端に料金が上下する体系は、日本企業には向かないと感じています。

栗原 サービス開始時期はいつですか。

時田 GIOプライベートは2009年の11月から、GIOパブリックは2010年4月からの開始を予定しています。GIOプライベートはIIJが2000年から展開しているオンデマンド型のホスティングサービスであるIBPS(Integration & Business Platform Service)の延長線上にあるサービスなので先行して始めることができました。

栗原 クラウドの世界においては特に米国系企業を中心に「規模の経済」による低コスト性が差別化要素になっていると思いますが、IIJはどのように対抗していくのでしょうか。

時田 コスト削減には2つの方向性があります。1つは規模の経済、もう1つは自動化です。規模の経済については、クラウドと既存サービスも同じ基盤上で展開しているため、十分なバイイングパワーを持っていると考えています。さらに、自動化という点では、管理機能を長年かけて自社開発していますので、Amazon、Googleなどの米国系クラウド事業者にも対抗できます。実際に、2年前と比較した実績値で、コストを30%程度削減できています。コスト削減をこれからも続けます。

栗原 今後の方向性を教えてください。

時田 まず次世代データセンターの構築を進めています。場所はまだ申し上げられませんが、グリーンを徹底的に追求したファシリティになる予定です。サーバリソースの自動拡大機能、いわゆるクラウドバースティングも開発中です。パートナーシップについては、既に仮想化関連でCitrix、Microsoft、SaaS分野でサイボウズ総研との提携を発表しています。さらに拡充する予定です。

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