点検:ストレスなきデジタル情報整理術

個人も組織も使える「思考プラットフォーム」を確立せよ点検 ストレスなきデジタル情報整理術(1/2 ページ)

仕事は人の判断で進む。すべてを機械が自動で行うようになるのは遠い将来だ。仕事をサポートする道具は数多いが、実際にはユーザーはその道具が原因でストレスを感じている。ストレスのない情報整理手法を確立するためには何が必要なのかを考える。

» 2010年03月10日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

新しい分野を切り開くのはシステムでなく人間

 業務をITで効率化するには限界がある。コストや技術の限界があって現状では難しい分野もあるが、突き詰めれば「人間の仕事だからITではこなせない」という限界点もある。人間の持つ総合的な状況判断能力、直感や感性、発想力といったものを、完全に機械で置き換えるのは難しい。機械が支援できるのは定型化できる範囲だけである。

 もちろん定型化された内容であれば人間が判断を下すまでもない。システム化して機械に任せてしまえばいい。人手を介さずに業務を進められるならば、効率は高まり、人的コストは低く抑えられ、ミスやロス、不正行為などのトラブルを軽減できる。基幹系業務のシステム化はそういう目的から進められてきたものだし、ISO(国際標準化機構)対応や内部統制などの対応においても、煩雑さを避けるためのシステム化が推奨されている。

 だが、定型化されない業務の多くは、機械では対応が難しい部分である。新たな業務を作り出したり、既存業務を見直す際には試行錯誤がつきものである。必ず人間の頭脳による判断が求められる。しかも企業には、変化へのより迅速な対応が求められている。例えば、商品サイクルや技術の進展、情報流通は早まる一方だ。業種や規模を問わず、常に新しい価値を提案していかない限り、多くの企業は生き残れない。

 変化のスピードが速まっていく経営環境の中では、業務を定型化して効率化するメリットを享受するために迅速に立ち上げていかねばならない。企業の中の人間は、より迅速に、的確な判断を下し、実行していくことが求められているというわけだ。

常に考え続けねばならない業務も少なくない

 定型化が難しい業務は実際には非常に多い。例えば製造業でいえば、開発・設計は業務内容そのものが「新しい商品を作ること」である。ある程度の方法論を確立したり、個々の段階で業務を定型化することはできても、業務全体におよぶ定型化は非常に困難だ。その業務に携わる人間が「どこをどうすれば性能を高められるか、コストを下げられるか」といった課題を常に考え続けねばならない。

 製造部門にも、より効率性と品質を高め、コストを下げるための工夫が求められている。業務そのものは装置や設備の活用で効率化できるが、その効率化の手法を考えるのは人間である。装置を改良して性能向上を図るにしても、それを装置自身がやってくれるわけではない。

 マーケティングやセールスも、常に「どのような施策を打てば売り上げを伸ばせるか、利益を上げられるか」を模索する必要があるため、やはり定型業務化が難しい。経営やマネジメントもまた、多種多様な情報を総合的にとらえて状況を判断し、戦略を立て、実行していかねばならない仕事だ。そこには普遍的な正解など存在せず、常に人間の思考が求められる。

 ほかの業種、例えば流通・小売業やサービス業などでも同様だ。ビジネスの現場において、定型化が困難な業務は多い。人間が判断を下さねばならない場面ばかりなのである。

多種多様な情報の在り方がデジタルでは問題に

 人間が判断を下すためには、基になる情報が必要だ。その品質や精度が、判断の迅速さ、的確さを左右する。だが、定型化される以前の段階、あるいは定型化が難しい場合においては、その判断に求められる情報も多種多様であり、1つの業務の中でも状況によって異なってくる。

 商品開発・設計であれば、材料や部品のデータなどはもちろん、過去の自社製品の情報、競合製品の情報、社内で共有されている設計ノウハウ、社内の各種基準や規則類、さらには業界標準規格や商品に関連する法令といった資料まで仕事で使うことになる。情報そのものの姿、状態もまた、多様なものだ。電子メールやWebの文章、各種の書式に沿って作られた書類、数表や図表、図面、画像や音声、動画などのコンテンツ……。個々のコンテンツはともかく、全体としてみれば不定形なものである。

 これらすべてが紙の情報であるならば、1つのファイルに束ねておき、机の上に常備しておくことで、必要なときにすぐアクセスできる。頻繁に使う部分には付箋紙を張り付けたり、備忘録のようにコメントを書き込んだり、あるいはミーティングの場で全員が顔を突き合わせて同じ紙を覗き込みながら議論する、といった活用方法もある。

 だが、紙の資料だけで仕事をするような場面は今では少ないだろう。デジタル情報は場所を取らず、紙よりも多くの情報量を持つことができるし、部分的に書き換えたりコピーしたり、またほかの人に転送するにも便利だ。さらに近年ではコストや環境の負荷を低減するためにも、ペーパーレス化が推奨される。

 とはいえ、デジタル情報ではさまざまな形態のコンテンツを扱うために、それぞれ対応するソフトがあり、1つの業務で複数のソフトを使わねばならないケースがどうしても多くなってしまいがちだ。ある文書を読んでいて、関連するデータをすぐに見たいとき、いちいち別のソフトを立ち上げて確認しなければならないのは問題である。また、正式な文書の中に、ちょっとしたコメントを書き込みたいときにはどうするのか。

 情報の管理においても、個人のPC内のフォルダで管理するのか、はたまた部署のファイルサーバで管理するのか、全社的なイントラネット上で管理するのか、といった問題が生じてくる。もし複数の管理手法を許容すれば、同じ内容であるべきファイルをどのように同期させるのか、という点も頭の痛い問題だ。

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