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» 2010年03月12日 08時00分 UPDATE

点検 ストレスなきデジタル情報整理術:「残業ゼロ」に向けて社員の能力を引き出す方法――元トリンプ社長の吉越氏 (1/3)

業務の生産性向上や効率化などの課題を解決するには、ITの活用に加えて、社員が活力を維持できることも重要になる。ストレスのない働き方を実現していくためのポイントを、「残業ゼロの仕事術」で知られる元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎氏に聞いた。

[聞き手:岡田靖,ITmedia]

 業務を効率化し、社員の生産性を高めていくことは、多くの企業に共通する課題だ。この目的を達成する手段の1つにITの活用があるが、ITを使う以前に社員一人ひとりの働き方に目を向ける必要がある。「残業ゼロの仕事術」の提唱者として知られる元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎氏に、社員が活力を維持していける社内環境をどのように構築していくべきかを聞いた。

仕事効率化への取り掛かり

吉越氏 吉越浩一郎氏

―― 吉越さんは「残業ゼロ」の考え方が仕事の効率を高める上で重要だと提起していますね。

吉越 残業ゼロを実現するには、仕事を「能力×時間」という平面でとらえるのでなく、「能力×時間×効率」の3次元でとらえることが重要です。人間の能力を簡単に高めるのは難しいので、特に時間と効率に注目すべきでしょう。

 例えば、朝9時までに作業を1つ終えてしまおうと早い時間に出社したらずいぶん仕事がはかどったという経験は、誰にでもあります。これは、朝9時までに終えなければいけないという「締め切り効果」に加えて、周囲から仕事を阻害されにくいという理由もあります。この2つの条件がそろえば、仕事がとてもはかどり、朝9時から夕方5時まで続ければ、全体の業務を大いに効率化できるでしょう。

 業務時間内に集中して仕事をすれば、夕方には体が疲れて考える力が低下します。そうなればすぐに帰宅して、翌日も効率的に仕事できるようしっかりと休むのです。このスタイルができればワークライフバランスが上手く回るわけで、決まった業務時間内にどう効率的に仕事をしていくかが大事です。

 仕事をする以上、社員には体力を維持することが当然のこととして求められます。体力があり、その上で気力が伴ってこそ能力が発揮されるのです。本来、会社はこのような効率的な働き方に対して給料を払うべきですが、日本の企業は、なぜかただ頑張って体力を使い果たすような働き方に給料を払います。

 その結果、社員は残業をしてばかりで疲れ切ってしまいます。体力がなくなれば気力も出ず、能力を発揮できるどころではありません。「頑張る」という気持ちは、日本人が働くこと対する意識としてとても素晴らしいものだとは思いますが、企業がそこに依存してしまうと、社員に頑張って体力で仕事をさせる環境を強いるばかりです。

―― 社員が体力と気力を伴って能力を発揮するには、何が求められますか。

吉越 まず、働き方の一部分を取り出して考えてみましょう。ある枠の中に配管があり、その中を仕事が流れていくとイメージしてください。配管が古くなれば、ところどころから仕事が漏れてしまうので、ばんそうこうをあてがって応急処置しなければなりません。日本人の働き方はばんそうこうを使って徹夜してでも一生懸命に頑張るというもの。仕事ぶりは良いのですが、社員はそこで疲れ果ててしまいます。

 また、仕事を「重要度」と「緊急度」という関係でみると、1.「緊急度が高い・重要度が高い」、2.「緊急度が高い・重要度が低い」、3.「緊急度が低い・重要度が高い」、4.「緊急度が低い・重要度が低い」と分類できます。日本企業が注力しているのは、1や2のような仕事にばんそうこうをあてがうような作業ばかりです。しかし、本当は3や4の方に注力しないと根本的な問題解決にはなりません。つまり、配管の穴にばんそうこうをあてがうのではなく、鉄板をあてがって本格的に補修し、配管を太くしたり曲げたりして直すというイメージです。そうすれば漏れがなくなって余裕ができ、視野も広がって、かつての環境がひどいものだったと気がつきます。

図 配管での仕事イメージ(左)と、「重要度」「緊急度」でみた仕事の分類

 これを徹底して配管をすべてきれいにしてしまえば、その枠の中で社員がしなければならいことがなくなります。社員を別の枠(仕事)へ配置したり、効率的に働かせたりできるようになるので、組織全体が適正化されるでしょう。しかし、このような取り組みはリーダーが考え、現場に示していかなければなりません。現場は水漏れする配管の中でばんそうこうをあてがうのに必死ですから、3や4の仕事にまで意識を向ける余裕がないからです。

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