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» 2010年05月11日 08時20分 UPDATE

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:グローバルクラウドの法的課題克服に向けた展望 (1/2)

企業の海外展開においてクラウドサービスを活用する場面が出てくる。その法的課題の検討と環境整備で求められるのは、「国際的合意と国内合意」および「フィードバック」の観点だ。

[水越尚子,ITmedia]

 各国でグローバルクラウドの法的課題が検討される中、日本では今後1〜2年で素早く法的環境を整備する必要がある。そのためには、「国際的合意と国内合意」「サービス利用企業、プロバイダー、業界のフィードバック」という観点を考える必要がある。本稿ではこの2点を解説する。

国際的合意と国内合意

 2010年に入り、クラウドに関連した報告書が続けて発表されている。総務省による「スマート・クラウド研究会」の中間とりまとめ案(以下、中間とりまとめ)が2月10日に、「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」の報告書が3月31日に発表された。また、4月16日に発表された「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」の最終報告書では、民間企業のクラウドサービスの利用におけるメリットや課題に言及している。

 このうち、中間とりまとめでは、クラウドサービスの普及と法的課題をまとめ、アジア太平洋経済協力会議(APEC)や経済協力開発機構(OECD)を通じた国際的な合意形成が必要であると提言している。国際的合意とは、条約や二国間協定などで策定される国家間の合意を指す。

1.国際的合意形成を支える国内合意

 中間とりまとめでは、グローバルクラウドの法的課題として、「各国に保存されたデータベースに関する裁判管轄権」「個人情報保護法」「知的財産権や著作権の保護」「有害情報対策」「政府の民間データへの介入の可能性」などを挙げている(法的問題の論点整理は「グローバルクラウドに潜む法的課題」を参照)。

 ここで、国際的合意とは何かを具体的に説明したい。例えば、個人情報の国外移転は、グローバルクラウドの活用における法的課題となる。

 EU(欧州連合)は、当該国が十分なデータ保護レベルを確保している場合に限り、第三国への移転を認めている(EU「データ保護指令(Directive95/46/EC)25条」)。スイスやカナダ、アルゼンチンにも個別の協定があり、データの国外移転が可能だ。

 日本でも上記協定の適用について、EUと協議を行うか検討するとしている。日本企業がグローバルプレイヤーであり続けるためには、このような協議と国際的合意が必要となってくる。

 だが、グローバルクラウドの法的課題について他国と合意を形成するには、人員やノウハウの継続投入が必要である。合意形成において、政府は日本のポリシーや相手国の申し出に合わせた譲歩の可否を検討しておかなければならない。

 特に人間の尊厳にかかわる「プライバシー」「個人データ」分野の協議には、国民および産業界の支持が不可欠だ。政府は、同時に国内合意も形成していく必要がある。

2.米国・EU間協議の例

 個人データの国外移転について国際的合意が形成された例としては、米国国務省が定める「セーフハーバー原則」が有名だ。米国とEUは同原則のもとで個人データの移転について協議を続けており、二国間の官民で個人データを移転するさまざまな局面(クラウドサービスの活用を含む)を念頭に、検討を重ねている。

 両者で進められている具体的な協議の内容を見ていこう。例えば、欧州理事会と米国の国土安全保障省からなるHigh Level Contact Groupは、情報共有プライバシーと個人データの保護における捜査情報の共有――国家間でなく、民間企業から捜査機関への個人データ移転も検討対象に入っている――について、EUと米国の共通原則をまとめている(2009年11月)。具体的な共通原則は以下のものだ。

(1)共通原則の項目

1.特定の捜査目的/目的の制限

2.完全性・データの品質

3.関連性および必要性/比例の原則

4.情報セキュリティ

5.特別カテゴリーの個人情報の取り扱い

6.説明責任(アカウンタビリティ)

7.独立性を有した効率的な監督

8.個人によるアクセスと訂正・削除

9.透明性および通知

10.救済

11.個人の利益に反する自動化された決定の制限

12.受領国の当局からさらなる第三国への個人データの移転の制限


 さらに、以下の項目は未定の検討事項としている。

(2)ペンディング(未定)の検討事項

1.民間事業者がデータ移転の際に負う義務との一貫性

2.同等かつ相互のデータ保護法の適用

3.第三国との関係に与える重大な影響の防止

4.情報交換とプライバシーおよびデータ保護に関する二国間合意

5.EUと米国の間の制度的枠組み


 EUは、米国との捜査情報の共有および個人データの保護に関する国際的合意について、2010年12月3日まで意見を受け付けており、現在までに提出された意見が確認できる

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