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» 2010年05月28日 19時00分 UPDATE

コントロール不能な口コミと仲良くするには:ソーシャルメディア時代の企業ブランディング戦略 (1/4)

Twitterの登場は企業と生活者のコミュニケーションを劇的に変えた。手間暇を惜しまなければ、予算がなくても、世界規模の広告キャンペーンに匹敵する効果を生み出せる。問題は「手間暇」の中身だ。ソーシャルメディアの専門家 ループス・コミュニケーションズの代表取締役 斉藤徹氏に、企業とソーシャルメディアの正しい付き合い方を聞いた。

[聞き手、構成:谷古宇浩司、鈴木麻紀,ITmedia]

ソーシャルメディアの口コミはコントロール不能

ITmedia ブログやTwitterなどのソーシャルメディアの登場は、企業と生活者のコミュニケーションの仕方にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

ループス・コミュニケーションズ代表取締役 斉藤徹氏 ループス・コミュニケーションズ代表取締役 斉藤徹氏

斉藤 今までは、ペイドメディア──新聞やテレビ、インターネットメディアのバナーといったマスメディアを通じて、企業は生活者にメッセージを伝えていました。そのメッセージ群のうちの一部を生活者がリアルな場で口コミを通じて伝播(でんぱ)していました。口コミされやすいネタというのは「誰かに伝えたいと思えるような情報」です。普通の情報はただ聞き流されるだけですが、情報の渦の中にはたまに「誰かに伝えたい情報」があります。

 リアルな場での口コミの伝播力というのは、例えば、1日にある人が3人くらいの友達に話すとか、その程度のものでした。一方、ソーシャルメディアを通じてなされる口コミの伝播力は、従来とは比べものになりません。口コミ効率が段違いなのです。Twitterにはリツイートという機能がありますね。ある人がある情報をTwitterでつぶやいたとします。その人には1000人のフォロワーがいる。もし、つぶやいた情報に強力な口コミ潜在力が備わっていたとしたら、1000人のフォロワーのうち多く人たちがリツイートし、それを受け取ったフォロワーがさらにリツイートするでしょう。その情報は爆発的な勢いで伝播していきます。

 ただし、注意しなければいけないことがあります。ソーシャルメディアで伝播する情報とは、生活者が興味を持つ情報だけだということです。逆に言えば、生活者が興味を持たない情報は決して広がらない。しかも媒体コストが無料だという点が大切です。例えば5月25日にポストしたわたしのブログエントリーは、1日で3000回以上リツイートされ、3万人以上の方に閲覧いただきました。ああいうこともあります。そして、もちろん、企業にとっては最悪な情報もリツイートされます。ソーシャルメディアによるメッセージ伝達のコストは驚くほど安価ですが、その効果をコントロールするのはすごく難しい。大きな効果が出る場合もあれば、企業にとってはネガティブな情報が凄まじい勢いで世間に広がってしまうこともあります。

ITmedia マスメディアを活用したメッセージ伝達は、ある程度スポンサーのコントロールが効くけれど、ソーシャルメディアはコントロールが困難だということですか。

斉藤 そうですね。今まではある程度、メッセージ発信者側がコントロールできました。口コミのパワーが弱かったから。しかし、ソーシャルメディアでは、メッセージ発信者が情報の伝播をコントロールをしようとしても、ほとんど不可能です。

ITmedia 企業が出した情報だけではなく、企業自身が予想しないさまざまな場所から情報が発生し、ソーシャルメディアを通じて広がり、さらにリアルにまで広がっていく……。

斉藤 今までは巨額の広告予算を用意できる企業だけが、生活者に、自社にとって都合のよいメッセージを伝達することができました。これからは、広告コストがほぼゼロの企業でも、生活者にメッセージを伝えることができます。情報の内容をコントロールをするのは難しいですけど。

ソーシャルメディアと相性がいいのはウッフィーに溢れた企業

 では、どういう企業がメッセージを生活者に伝達できるのでしょうか。シンプルに言うと「ウッフィー」に溢れた企業です。つまり、「好かれる」「つながる」「一目置かれる」企業ということ。

 ウッフィーのことを説明するときに、わたしはトップセールスマンを例に出します。こういう話です。

 トップセールスマンというのは、あまり商品の説明をしません。では、何をするかというと、相手にとってプラスになる情報をこつこつ届ける。そのうち、彼はその人の信頼を勝ち得るようになる。コップの水と同じです。コップに水が少ししか入っていない段階でガンガン売り込んでも普通は門前払いですよね。「間に合ってます」と言われて終わり。しかし、信頼感が醸成され、つまり、コップの水が溢れてこぼれ落ちるようになっていると、相手が自ら「全然買わないで悪いね。友達で買いたがっている人がいるから紹介するよ」みたいに、商談が進む場合があります。

 ウッフィーというのは、そういうこと。影響力の源泉として、これまではお金だけでしたけど、これからはソーシャルキャピタル──ウッフィーの力も無視できなくなります。情報の伝播を左右するキーファクターが「マーケットキャピタル」から「ソーシャルキャピタル」へ、あるいは「お金」から「ウッフィー」に移りつつある、ということです。

ITmedia しかし、コントロールはなかなかできないんですよね。

斉藤 コントロールはできません。コントロールしようとすると、伝播する情報は企業にとってネガティブなものに転化したり、伝播してほしいと考えている情報が伝播しなくなったりします。

ITmedia うわさされている当の企業が、口コミの流れをコントロールすることはできないと。

斉藤 できないです。対処のためのテクニックはありますが、効果は「多少」というぐらいで、本質的にはウッフィーを高める方がずっと効果的です。

ITmedia とはいえ、ウッフィーの先にはお金が存在するのでは。

斉藤 コップから流れ落ちた先には(お金が)ありますが、それ(お金)を目的にウッフィーを集めることは難しいでしょうね。

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