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» 2010年08月10日 07時00分 UPDATE

IT利用の不正対策マニュアル:内部不正行為を防ぐための10カ条 (1/2)

今回は、企業や団体における内部不正行為を防ぐ方法について、その概要を紹介します。

[萩原栄幸,ITmedia]

内部通報制度とは?

 2006年4月に「公益通報者保護法」が施行されて以降、急激に企業や団体で取り組みが広がったものが「内部通報制度」です。KPMG Japanでは、「内部通報制度とは、企業において、法令違反や不正行為などのコンプライアンス違反の発生またはその恐れのある状況を知った者が、そのような状況に適切に対応できる窓口に直接通報することができる仕組み」と解説しています。実際の名称には、「ヘルプライン」「ホットライン」「コンプライアンス相談窓口」といったものがあるといいます。

 現状では、9割以上の上場企業が内部通報制度に基づいた何らかの体制を構築、もしくは検討しています。内部通報制度は、内部不正の防止に有効な手段と考えられています。しかし、「米国のものまねのような発想で形だけを作って安心している経営者が多い」と批判的な人もいるようです。

 わたしも、日本におけるこの制度はまだまだ「仏作って魂入れず」の状態である企業が多いと考えています。程度の差こそあれ、「うちも確かにそういう面がある」と感じている企業関係者が多いのではないでしょうか。

内部通報制度の有効性

 ある経営者がこう話していました――「うちでは通報件数がこの1年ゼロだった。素晴らしいと思う。それだけ従業員の中には密告すべき内容がなかったということだからね」――。従業員が数千人もいる企業において、「ゼロ」が素晴らしいとはどのようなことでしょうか。

 わたしの経験では、「確かに素晴らしい企業だから結果としてゼロ」という可能性がないとは言いませんが、その会社は2ちゃんねるでの告発が散見され、さまざまなうわさが絶えないのです。内部通報制度の利用件数がゼロというのは(実際に調査を依頼された訳ではないので不明ですが)、一般的に考えれば制度そのものが有効に機能していない可能性があり、だから結果としてゼロになっていると思わざるを得ないのです。

 通報件数については米国での調査結果があります。「2009 CORPORATE GOVERNANCE AND COMPLIANCE HOTLINE BENCHMARKING REPORT」によると、従業員1000人当たりの通報件数は次の通りです。

  • 金融、保険、不動産業:7.93件
  • 製造業:4.47件
  • 官公庁:6.32件
  • 小売業:13.03件
  • サービス業:11.18件
  • 卸売業:8.80件

 これはあくまで米国での結果であり、日本の実態が米国と同じということではありません。

 内部通報制度の運用には、以下のような注意すべき点が幾つかあります。

 1:通報制度の一番の課題は、「従業員がどのくらい会社を信用しているのか」ということです。もし従業員の大部分が通報制度自体に対して疑念を持つなら、有効に運用することは絶対にできません。弁護士など社外への通報窓口を常設することを検討する必要があります。

 2:「件数ゼロ」とは、基本的には従業員にきちんとその周知がされていない、もしくは制度自体が否定されているなど、ネガティブな状況になっているとみるべきでしょう。部門の管理者は、経営者と真剣にこの状況を打開する方策を実施していかなければなりません。

 3:通報を「密告」と同じようにとらえる人もいて、日本人のカルチャーに馴染みにくいものです。その敷居を低くしていく方法を常に考慮しなければならず、啓発活動が重要になります。

 4:「匿名」を認めるかどうかは、どこの企業でも悩む問題です。安易に運用してしまうと、匿名で給与など自分の処遇に対する不満を訴えるケースが相次いでしまい、収拾がつかなくなる場合もあります。ただし、一般的にみれば匿名を認めるべきだと考えます。重要なのは、内部通報制度が不平不満をぶつける場所ではなく、内部の違法行為や犯罪に近い事象を早く発見して大ごとになる前に企業や当事者が速やかに改善をしていく場であることを理解してもらうことです。教育や啓蒙によって、従業員が「内部通報制度は私利私欲が作用する場ではない」と考えてくれれば良いのです

 5:受け付けた通報に対して、遅くとも2、3日以内に通報者に連絡をすべきです。匿名の場合でも1日も早く作業に着手し、できれば通報者にコンタクトできればなお良いでしょう。作業が途中であっても通報者には期限を定めて、話せる範囲で連絡します。「真剣に調査しています」「追加で質問をしたいので……」というアクションを必ず行います。

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