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» 2010年08月24日 16時40分 UPDATE

オルタナティブ・ブロガーの視点:トップクラウド事業者は一体いくらもうかっているのか?:AmazonとRackspaceの場合

クラウド事業は本当にもうかるのでしょうか。AmazonとRackspaceの財務報告を基に、オルタナティブ・ブロガー、鈴木逸平氏が考察しています。

[鈴木逸平,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「鈴木いっぺい の 北米IT事情: 雲の向こうに何が見えるか?」からの転載です。エントリーはこちら。)

 北米のクラウド市場は、ざくっと大きく分けて、Amazon Web Service、Rackspace Hosting、その他、で3分割しています。かなり乱暴な分け方ですが、そんなようなイメージで持っていただければ結構だと思います。

 クラウドコンピューティングは、いまだに賛否両論が飛び交う、非常に興味深いキーワードです。今更その価値を評価するのも変な話ですが、技術的な評価はさておいて、本当にもうかるビジネスモデルなのか? という素朴な疑問に対してはしっかり評価をすべきなのでは、と思うところです。

 その判断の拠り所として一番参考になるのは、北米の市場をほぼ独占しているAmazonとRackspace Hostingの2社の懐具合を調査することではないかと思い、ちょっと調べてみました。

 株式を公開している企業であるので資産状況は公開されているが、クラウドコンピューティング事業単体での収益状況については明らかにしていない、という点においてはどちらも共通しています。クラウドコンピューティング事業の北米市場争いにおいては両社合わせて全体の7割近くに達する状況であるため、一体どれくらいもうかっているのか、収益構造はどうなっているのか、大きな関心が寄せられるところです。

 Rackspace社の最近の10-Q(四半期ごとの財務報告)によると、下記の情報が報告されています。

  • 現在のクラウドユーザーは8万8590件で、去年の5万1440件から大幅に伸びている
  • 同時期に獲得したホスティング(元々のRackspace社の事業)顧客は100社増え、1万9433件
  • クラウド事業での売り上げは、5500万ドルで昨年から50%増
  • ホスティング事業は、クラウド売り上げの約10倍で6.2億ドルであるが、年成長率は14%に留まっている。

 非常に興味深いのは、今年はデータセンタースペースを8000平方フィート減らしている、という事実。つまり、データセンタースペースを減らしながらも1平方フィート当たりの売上を25%増加させ、約4440ドル/sqftを達成しているのです。

 一方、Amazon Web Serviceについては、UBS(スイス銀行)の調査によると、同社は年間5億ドルの売上を達成している、とのこと。これはAmazon全社売上の2%に相当する。 この数字は、Amazon社の決算報告書に記載されている「Other」という項目の売上をベースとしている。同じ分析によると、Amazon Web Serviceの売上は、2014年には25.4億ドルに達する、と予測しています。

 AmazonのIT投資の総額――現時点で36.5億ドルと比較するとまだ小さい数字であり、実際の投資に対する回収という面ではまだまだ難しいビジネスである、と言わざるを得ません。また、Amazonの本業であるe-Retailing事業と比較すると非常に比重の小さい事業であるため、今後どのような展開になっていくのか、注意深く見ていく必要がある、といえます。

 クラウドコンピューティングのトップ2社が、いずれも高収益型の事業とは必ずしも言えないという実に意外な結論に達してしまう。それは、今後のクラウドコンピューティングの未来を分析する上で重要な事実である、といえます。トップ2社がこういう状況であるなら、3位以下のベンダーはいったいどういう状況なのか、何となく想像がつきそうな気がします。

 サービス事業という性格上、そう大きな市場の伸びや変化が出てこないと想定されるので、収益性を上げようと思うと、徹底的なコスト、それもCAPX(初期投資)とOPEX(運用コスト)の両面での削減を行いつつ、売上は継続的に伸ばす、という戦略を具体的に策定して進めることが必要です。北米のクラウドコンピューティングのコストで最も大きいのは、継続的な設備投資と電力コストです。これらは集約化を積極的に行うことによって達成する戦略が最も一般的である、といえます。また、稼働率を100%にできるだけ近づけるように運用方法をシステム化することも重要といえます。

 北米のクラウドコンピューティング事業者は、人件費の削減を既に自動化ソフトウェアソリューションで達成しており、まだそのエリアで遅れを取っている日本のベンダーは、自動化、監視などの運用ソフトウェアの開発や導入を積極的に行うことが非常に重要である、といえます。

 最大のポイントは、Amazonにしても、Rackspaceにしても、クラウドコンピューティング事業がそれぞれのビジネスの中心事業ではない、ということです。考えようによっては、いつでもやめることもできるし、収益状況も詳細に公開する必要がない、ということです。

 よく考えてみると、どちらの会社もクラウドコンピューティングについて強力な宣伝やマーケティング活動をしているわけではなく、どちらかというと周りが盛り上げている、という印象があります。

 もしかして、クラウドコンピューティングというのは、そういうモノなのかもしれない、なんてふと思うと、日本企業のクラウド騒ぎにちょっと不安を感じたりもする、今日この頃です。

 みなさん、いかがですか? ちょっと興醒め?

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変更履歴:表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。[2010/08/14 16:58]


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