企業セキュリティ市場に新風を巻き起こすKaspersky――日本での展開を聞くReport(1/2 ページ)

コンシューマー向けセキュリティの印象が強いKasperskyだが、グローバルでは約20万社の企業顧客を抱える。このほど企業セキュリティ分野での事業強化を表明した同社幹部に、日本での展開について話を聞いた。

» 2010年12月02日 18時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 ロシアのセキュリティ企業Kaspersky Labは、11月にロシアで開催した海外メディア向けの説明会で、法人ビジネスを強化する方針を表明した。日本市場ではどのような展開を計画しているのか――法人ビジネス担当副社長のキース・マスケル氏と、法人ビジネス グローバルセールスディレクターのギュンター・フルーマン氏に聞いた。

 同社は10月に、既存製品を含む法人向け製品の大幅なリニューアルを実施。エンドポイントやサーバ、ストレージ、クラウドサービスに対応した12種類のマルウェア対策製品をラインアップに加えた。

2010年に発売した主要な法人向け新製品

マルウェア対策はコモディティ化していない

法人ビジネス担当副社長のキース・マスケル氏

 国内の法人向けマルウェア対策市場では、トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーの大手3社がシェアの大半を占める。近年にクラウド技術を利用するサービスの登場が話題になったが、それを除けば、3社それぞれのシェアが若干変動する程度で大きな変化は起きていない。

 こうした状況についてマスケル氏は、「マルウェア対策がコモディティ化したとは考えていない。ユーザーに提供できる価値はまだまだある」と話す。同氏が「最大の価値」と強調するのがコスト削減である。

 マルウェア対策にかかわるコストは、導入と運用の2つに分かれる。導入コストは多数のPCやサーバにソフトをインストールする作業や時間だ。運用コストはシグネチャの更新管理といった平時のものと、マルウェア感染による緊急対応時のものに細分される。

 マスケル氏によれば、新たな製品ラインアップでは「ビルディングブロック」型の導入に対応し、ユーザーは保護するコンピュータ環境に適した製品を組み合わせて、各種製品を一元的に管理できるとしている。またマルウェアの検出精度についても、第三者評価機関のテストで常に上位の成績を維持しており、同社製品が企業のIT部門にコスト削減の価値を提供するものだと強調する。

 「クラウドコンピューティングや仮想化、ソーシャル化などIT部門が取り組むべき課題は山積みだ。一方でセキュリティの脅威は高度化し、セキュリティ対策も複雑化している。セキュリティに関するユーザーの負担を減らすのが当社の役割だ」(マスケル氏)

 Kasperskyのようなアプローチは、競合他社でも既にとっている。マルウェア対策にデータ暗号化やバックアップなどの機能を付加価値として追加し、統合版セキュリティ製品として展開するところも多い。Kasperskyでも暗号化機能やDLP(情報漏えい防止)などの機能を将来的に導入する方針を打ち出してはいるが、製品の中核となる技術はマルウェア対策だとしている。スパムや不正アクセス、フィッシング詐欺といった攻撃手法が多様化しても、そこには必ずマルウェアが介在する。マルウェアの脅威からユーザーを保護することが最も重要になるとしている。

 マスケル氏によれば、マルウェア対策技術の進化にも積極的であるという。定義ファイルでは追従が難しい新種マルウェアのブロックを目的とするホスト型IPSを採用しているほか、仮想化環境向けには米VMware、米Citrix Systems、米Microsoftの各ハイパーバイザー製品との適合認定を取得済みだ。

 「既に20万社の企業顧客がおり、1社で100万台ものワークステーションに導入しているユーザーもいる。プライベートで当社製品を利用するシステム管理者も多い」とマスケル氏は話し、企業セキュリティの分野で同社が競合他社に劣らない実績とノウハウを有していることを主張している。

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