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» 2011年01月01日 11時00分 UPDATE

リーダーシップと実現力:模範と異分子 〜マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏の場合〜

「模範の提示」と「異分子の注入」が組織を変える――。B2B2CからB2Bへ。変革の渦中にあるマイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏に組織改革の実践的な知恵を聞いた。

[谷古宇浩司,ITmedia]
higuchi マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏。組織変革の要諦は「自ら模範を示すこと」と「異分子を注入すること」(撮影:大星直輝)

ビジネスマインドの軌道修正

 樋口泰行氏がマイクロソフトの代表執行役社長に就任したのは2008年4月である。彼に課せられた使命は組織の変革。「B2B2CからB2Bの体質に移行する」(樋口氏)ための組織変革を行うにあたって、避けることができないのは社員一人一人が持つビジネスマインドの軌道修正だった。

 2007年のマイクロソフトへの入社以来、そして2008年4月の社長就任以来、私が断固としてこだわってきたこと。それは、“日本のお客様・パートナー様と盤石な信頼関係を構築する”ということ。

 樋口氏はThe Official Microsoft Japan Blogのエントリー「2011年へ向けて。樋口のコミットメント。」で上のように書いている。

 PCメーカーと協業し、OSやOfficeソフトのライセンスを販売するビジネスモデルを「B2B2C型」とするなら、システムインテグレータとパートナーシップを結び、企業向け情報システムの構築を支援するビジネスモデルは「B2B型」といえる。

 マイクロソフトは前者のビジネスモデルを洗練させることで一時代を築いた。しかし、後者については、いまだ大いに改善の余地があると樋口氏は考えているようだ。

 B2B型のビジネスモデルを支えるマインドとは、パートナー企業との信頼関係構築にエネルギーを注ぎ込もうと志向する意識のことだ。パートナーシップを結ぶシステムインテグレーターに対して、全面的かつ継続的で緻密な技術サポートを提供することで、長期間に渡る信頼関係を築くこと。つまり、パッケージの売り切りビジネスとは質の異なるビジネスマインドが求められるのである。

「異分子」の注入

 マインドの軌道修正において、樋口氏が採った施策は大きく2つ。1つ目は「自ら模範を示すこと」、もう1つは「異分子を注入すること」だ。

 「『本社の方針だ』と上から押し付けても、現場に“腹落ち感”は生まれない」(樋口氏)。パートナー企業の面倒を徹底的に見る、という姿勢を現場に浸透させるには、口で言うだけでは不十分だ。自ら現場に赴き、自らの信念を具体的な行動として目に見える形でスタッフに示し続ける必要がある。自分で問いを設定し、自分で答えを導かなければ、人は動かない。“腹落ち感”とはそういうことだ。組織のトップが模範を示すことで、組織を構成する一人一人のスタッフに、変革の動機を起動させる。「トラブル対応を含め、積極的に範を示していく」と樋口氏は言う。

 異分子を注入することで、組織によい意味での“化学反応”を引き起こすことも狙った。エンタープライズビジネスの成功体験者を日本法人の要職に据えたのである。変化には恐怖が憑(つ)きまとうものだ。成功体験に基づいたノウハウの伝播は、変革を志す組織に変化を恐れない勇気を呼びこむ。

 執行役 常務 ゼネラルビジネス担当 バートランド・ローネー氏がマイクロソフトの日本法人に加わったのは2009年2月である。2010年4月には常務に就任した。マイクロソフト フランスにおけるSMS&P Director France(Small and Midsize Solutions and Partner)の経験を日本のビジネスパートナー網構築に生かすのがその役割。ローネー氏の指揮の元、日本のすべてのビジネスパートナーにはマイクロソフトの専任担当が張り付く。マイクロソフトとパートナーシップを結ぶシステムインテグレーターは、マイクロソフトの専任担当と共にビジネスモデルに関するアドバイスなどを含むさまざまな技術支援を受けることができる。

 2009年7月に執行役 常務 ビジネス&マーケティング担当に就任したヌノ・デュアルテ氏もローネー氏同様、ヨーロッパの成功ノウハウを日本法人に“移植”する上で重要な役割を果たす。デュアルテ氏はマイクロソフト ポルトガルで西ヨーロッパ地域のゼネラルマネージャーだった。

 マネジメントチームの質は、組織の運命を占う上で決定的に重要な要素だ。「ビジネスに対する厳しさ」「企業文化の深い理解」「顧客第一主義」――。樋口氏が理想とする組織には、このような理念が絶えず伏流している。理念は空気感を生み出す。組織の空気感を清浄な状態に保つことがマネジメントの使命だ。自社のマネジメントチームを「とてもよいチームになった」と樋口氏が口にするとき、その唇の端から、照れたような笑みがこぼれた。

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