マイクロソフトは、上級副社長のクルトワ氏来日に際して記者向けのブリーフィングを開き、Azureなどを中心としたクラウドコンピューティングへの取り組みを紹介した。
「今後、Microsoftはエンタープライズ市場に特に力を入れる」
米Microsoftのインターナショナル担当プレジデント、ジャンフィリップ・クルトワ上級副社長は話す。マイクロソフトは11月18日、クルトワ氏の来日に際して記者向けのブリーフィングを開き、金融危機で悪化する景気への考え方や「マイクロソフト版のGoogle App」ともいわれるAzureなどを中心としたクラウドコンピューティングへの取り組みを紹介した。
――今後はさらにエンタープライズ市場に注力する
クルトワ 日本のエンタープライズ市場では、樋口社長の顧客経験を生かしたいと考えている。世界的な景気の悪化で接待費、会議費の節約が求められる。そういったコストを削減するために、例えばWeb会議が今後普及するだろう。仮想化もキーワードの1つだ。JR東日本情報システムは、われわれの仮想化技術を利用することで、ハードウェアとソフトウェアのコストを20%も削減した。通常、企業のサーバの稼働率は10%未満ともいわれている。90%に上る既存のサーバ容量を効果的に利用できる点で仮想化ソフトのメリットは大きい。
――クラウドコンピューティングをどう考えているか
クルトワ われわれは11月17日、「Exchange Online」および「SharePoint Online」を正式発表した。ExchangeやSharePointをSaaS(サービスとしてのソフトウェア)形式で提供するこれらのサービスは、先日発表したWindows Azureと併せてMicrosoftのクラウドコンピューティングへの重要な取り組みだ。
一方、Microsoftは単なるSaaSではなく、Software+Service(S+S)という戦略をとっている。(SoftwareとServiceを共通のソースコードで構築しているため)SaaSを利用していたユーザー企業が、使い勝手やコスト面の有利さを求めて自社運用システムに移行するのも容易だ。
樋口 マイクロソフトが提供するクラウドは3つのレイヤーに分かれる。最下層にあるのが、Windows Azureの層だ。これはWindows Server 2008のバックエンドとしての性能をMicrosoftが提供するクラウドの中で提供する。次の層が開発者向けのディレクトリサービス、最上位がExchange Onlineなどのビジネス向けソフトウェアだ。こうした提供方法はIT業界にとって大きなパラダイムシフトになる。
――クラウドによって、システムインテグレーターなどパートナーのビジネスを奪うことにならないか
クルトワ パートナーには新しいチャンスが生まれる。われわれはオンラインビジネスアプリケーションを発表した。パートナーはこれらの製品を販売でき、カスタム化する需要もある。KDDIがやっているように、ホスティングするという選択肢もある。すべてのプレイヤーが共存できるビジネスだとわたしは考えている。
――CRMなどのビジネスアプリケーションについてはどうか
クルトワ われわれは以前にGreat PlanesやNavisionといった企業を買収し、それを基礎にCRMアプリケーションを提供している。成長率は年17%と高く、他社のシェアを奪っている状況だ。パートナーによるカスタマイズを経て小規模企業にも浸透し始めている。
樋口 日本語化に時間がかかったため日本市場での展開は遅れた。だが、母数が少ないこともあり、日本では毎年2倍の勢いで伸びている。使い慣れたOfficeに似たユーザーインタフェースなどが高く評価されている。以前は海外の現地法人ではじめに採用され、本体が後から導入するケースが多かったが、現在は国内のパートナーの評価が高まってきた。ERPについては、国内特有の要件に対応した上で提供することを考えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.