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» 2011年01月22日 22時00分 UPDATE

日本発の「Topcoderトレーニング講座」は最強最速アルゴリズマーへの最短経路

アプリケーションプラネットは2月5日から、日本発となる「Topcoderトレーニング講座」を開設する。講師は「最強最速アルゴリズマー養成講座」の著者としても知られる高橋直大氏。これにより、優秀なアルゴリズマーたちが活躍できる場が日本でも生まれるかもしれない。

[西尾泰三,ITmedia]

アルゴリズマーによるアルゴリズマーのためのトレーニング講座、開講

Topcoder 形容しがたいトップレベルのプログラマーたちが参加するTopcoder

 高橋直大――彼を形容する言葉は幾つかあるが、ITmediaの読者であれば、「アルゴリズマー」という言葉が最も彼をよく表していると知っているかもしれない。ITmediaの超人気連載「最強最速アルゴリズマー養成講座」の筆者が彼だからだ。

 Microsoftが全世界の学生を対象に毎年開催している技術コンテスト「Imagine Cup」の2008年度大会で、当時まだ成人になったばかりの彼は、アルゴリズム部門に日本代表として参加、並みいる強豪を押さえて世界第3位に入賞し、その非凡な才能を世に知らしめた。

 その後、慶應義塾大学環境情報学部に通う傍ら、上述の連載を開始するなどして、一般には難解に思われがちなアルゴリズムを身近なものにさせようと奮闘してきた高橋氏。それと平行する形で、世界中からトップレベルのプログラマーがオンラインで参加しているプログラミングコンテスト「Topcoder」にも参戦し続けており、2009年には「NASA-TopCoder Challenge」で5位入賞を果たした。この大会は、惑星外探査などの長期ミッションに必要な医療物資の量と配分を適切に行うアルゴリズムを競うもので、高橋氏のアルゴリズムを参考にして作られたアルゴリズムが今年からロシアで実運用されるなど、その活躍はすでに日本を飛び出している。

 さらに、2010年に入るとTopCoderが年に一度開催しているトーナメント制の大会「TopCoder Open(TCO)」にも参戦。TopCoderで日々しのぎを削る世界中のコーダーたちの中でも、特に優れた者だけが参加を許されるコーダーの聖域ともいえるこの大会には、高橋氏のほか、Googleが主催するプログラミングコンテスト「Google Code Jam 2009」で3位に入賞し、「プログラミングコンテストチャレンジブック」の共著などでも知られる東京大学の岩田陽一氏(@wata_orz)や2007年の国際数学オリンピックで金メダルを獲得した東京大学の副島真氏(@rng_58)が決勝に進んでおり、Marathon部門は岩田氏が首位で高橋氏が2位、Algorithm部門は副島氏が首位と2部門の上位を日本人が独占した(コーダーの聖地『TopCoder Open』で日本人が2部門制覇参照)。

tn_ep1.jpgtn_ep2.jpg TopCoder Open 2010各部門の優勝者たち(写真=左)と日本勢。右から高橋氏、竹井悠人氏、副島氏、岩田氏(写真=右)

 競技プログラミングの伝道師でありながら、身を持ってその可能性を実証しているのが”アルゴリズマー”高橋直大氏である。

Topcoderトレーニング講座はベストショア開発の礎となるか

 最強最速アルゴリズマー養成講座のほかにも、Topcoderのライブコーディングをニコニコ生放送で配信するなど、精力的にアルゴリズムの普及に励んでいる高橋氏だが、いよいよ次の大きなステージに移ろうとしている。それが、アプリケーションプラネットが2月5日から開始する「Topcoderトレーニング講座」だ。高橋氏は学生ではあるが、同講座の講師として招致されている。

 同講座は、2月5日から毎週土曜日に全4回の日程で開催される。1回の講座は6時間(休憩含む)で、アルゴリズムプログラミングの基礎やSRM問題への挑戦などを通じて、TopCoderで世界と渡り合っていける知識とスキルが短期間で身につく密度の濃い講座となっている。なお、各回の内容は独立しており、受講料は初回のみ無料。それ以降は1回当たり1万円。すべての回を受講するとディスカウントされた料金が適用されるほか、1月31日までに申し込んだ場合はさらに安価に講義を受けることができる。さらに、本記事が公開されるころにはすでに埋まっている可能性が高いが、受講申し込みの先着5名は全講座無料と太っ腹のサービスも用意されている。

 参加者からすれば、世界に通用するコーディング技術をその道の第一人者から直接学べるというのが一義的なメリットだ。また、受講者には専用のコミュニティーサイトを用意しており、講座の動画や上述の日本語化された教育コンテンツなどを提供するなど、同じ目的を持った同志たちと深く学んでいける仕組みを構築している。しかも、アプリケーションプラネットは米Topcoderから教育用コンテンツの提供を受けており、さらにそれを日本語化して提供している。Topcoderでは英語が基本となっており、そこが参加障壁の1つでもあるのだが、コストを掛けて日本語化されたコンテンツを読み込むことで、理解が促進されるのは想像に難くない。

tn_ep3.jpgtn_ep4.jpg 受講者には専用のコミュニティーサイトが用意されており、Topcoderのディープな話題を楽しむことができる(写真=左)/米Topcoderから許諾を受け、米Topcoderの教育用コンテンツを日本語化したものも用意されている。これは有益だ(写真=右)

 高橋氏は最強最速アルゴリズマー養成講座やニコニコ生放送を通じて、アルゴリズムの楽しさとそれを楽しむために最低限必要な知識を広く伝えてきた。そうした取り組みが企業を巻き込んでトレーニング講座というパッケージになったのは非常に興味深い。なぜなら、ポテンシャルがない市場に企業は興味を示さないのが通例だからだ。逆に言えば、このトレーニング講座は、さまざまな価値を生み出す可能性がある。

 では、どういった価値が考えられるのだろうか。分かりやすいところでは、アルゴリズムあるいは競技プログラミングの知名度向上だが、それは高橋氏がこれまでも取り組んできたことである。記者は今回の取り組みにさらなる可能性を感じており、例えばそれは「ベストショア開発」といった言葉で表現できる。

 ベストショア開発とはアウトソースビジネスの一種で、企業からの開発案件を受託し、設計、開発の各フェーズで複数の開発者に競争させ、より優秀な方のみを採用する開発方式を指す。開発自体が競技プログラミングの性格を帯びるといってもよいかもしれない。実際に欧米ではこうしたベストショア開発を利用して迅速かつ安価に優れたアプリケーションを開発した事例が数多く存在する。GoogleがChromeやChrome OSのベースとなる「Chromium」のバグ発見者に賞金を進呈しているのも一種のベストショア開発といえるし、上述のNASA-TopCoder Challengeも競技の形を取っているが、Topcoderの参加者らによるベストショア開発であるといってもよいだろう。Topcoderに協賛している企業の多くがこうした価値に期待している。

 あるいは、仕事を希望する競技者と、優秀な人材を求める企業とをマッチングさせるサービスなども考えられるだろう。Topcoderのレーティングが高い、いわゆる“Redcoder”の多くが、その能力を買われ、Googleをはじめとする有名企業に入社したといった話はよく耳にするが、それは、レーティングという公平で客観的な能力評価システムが有効に機能しているからである。アプリケーションプラネットは今回、まずはトレーニング講座という形でスタートしているが、ここに一定数の優秀な開発者が集うならば、同様の取り組みも期待できるだろう。

 そんな高橋氏は今回の取り組みについて、以下のようにコメントしている。

tnapro.jpg

 「最強最速アルゴリズマー養成講座」の連載を開始して以降、TopCoderの日本人参加者はおよそ2.5倍となり、ちょっとした競技プログラミングブームと呼べる状態が続いています。とはいえ、日本人のアクティブな参加者は500人程度で、日本全国のプログラマーの数と比べるとまだまだ少ないかなという印象です。これは、競技プログラミング自体の知名度が低いこともありますが、競技プログラミングに対して、ハードルが高いという印象を持っていたり、どう楽しいのか分からない、と思っている方が多いからではないでしょうか? 今回のトレーニング講座のメインターゲットは、まさにそうした方たちです。

 最強最速アルゴリズマー養成講座は、あくまでも読み物として書いているため、ほとんどの読者にとって自力では解決不可能な問題を取り扱っています。しかし、TopCoderでは、どのレベルのプログラマーでも楽しめるよう、問題のレベルが数多く用意されています。今回のトレーニング講座では、プログラミングを始めたばかりのような方でもTopCoderで問題を解く楽しみを味わってもらえるよう、一番簡単なDiv2のEasy/Medium問題から多数の問題を選出しています。講義内容としてはif文やfor文、配列などが分かっていれば十分ついて行ける内容で、実際にコードを書いて、実力がついていく楽しみを味わってもらいます。

 たくさんの方の参加をお待ちしています!


 Imagine Cup以後、連載などを通じて高橋氏の取り組みを見続けてきた記者からすると、高橋氏の地道な取り組みがここまで規模の大きなものになったことが素直にうれしい。少し前であれば、競技プログラミングやアルゴリズムに否定的な方も少なくなかった。しかし、その潮目が変わりつつあるように思う。そのうねりの中にいるのが、高橋氏であり、アプリケーションプラネットであり、優秀な“アルゴリズマー”たちが必要とされる場が日本にも生まれようとしている。国内のRedcoderたちがこの取り組みに賛同し、協力してこのうねりを大きくしていってくれることを期待したい。

世界でも有数のRedcoder、高橋直大がアルゴリズムの魅力と極意を伝授する「最強最速アルゴリズマー養成講座」はこちらから


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