プライベートクラウド構築のための4つの要素TechNetブロガーの視点

プライベートクラウドを構築するために必要なのは、「インタフェース」「プロセス制御」「リソース管理基盤」「サービス」の4つの要素である。

» 2011年01月25日 14時31分 公開
[高添修(マイクロソフト),ITmedia]

(このコンテンツはTechNet Blog「高添はここにいます」からの転載です。エントリーはこちら。なお、記事内容はすべて筆者の個人的な見解であり、筆者が勤務する企業の立場、戦略、意見等を代表するものではありません)

 先日、プライベートクラウドの目的について投稿させていただきました。目的を間違えず、やるべきことをしっかりと意識した上でプライベートクラウド化を進めていただければと思います。そして今回は、プライベートクラウド構築のための4つの要素について解説します。

 早速ですが、プライベートクラウドを構築する上では、最低でも4つの要素が必要となります。

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1. 利用者と管理者をつなぐためのインタフェース、またはトリガーとなるもの

  • 一般的にはポータル的なものが該当します
  • 申請・承認がスムーズで、利用状況確認などの可視化ができると、サービスとしての価値も上がります
  • しかし、そこはプライベートですから、メールや社内文書を利用することもあるでしょう

2. プロセス制御の仕組み

  • 利用者は申請し、IT管理者が承認とリソースの割り当てを行います
  • その承認プロセスやリソース自動準備のために必要になる作業のきっかけを作ります
  • 自社内の都合によってプロセスは変わるため、ここが柔軟だと運用管理のしやすいシステムになります

3. 自動的にリソースを準備・提供するためのリソース管理基盤

  • サービスとして提供するリソースを、利用者がすぐに使えるようにするための準備作業を行います
  • リソースの種類によってツールも処理も変わりますから、この管理基盤は複数存在する可能性があります

4. 提供するサービス

  • これは利用者からみたサービスそのものです

 プライベートクラウド=仮想マシンだと考えている方からすれば、わざわざ分かりにくくしているように思えるかもしれません。

 分かりにくいまま話を進めるのもよくないので、上記4つの要素を「仮想マシンをサービスとして提供するプライベートクラウド」に置き換えてみましょう。

 こちらです。

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 サービスが何か? がはっきりしている場合は、右側から見ていくとよいでしょう。

 例えば、仮想マシンをサービスとする場合、一番右側のサービス(リソース)は仮想マシンとなります。

 そして、サービスとしての仮想マシンを自動管理するために仮想環境の管理ツールが必要になります。

 プライベートクラウドの場合、その仮想環境の管理ツールをワークフローから呼び出すわけですが、承認と同時に自動的に仮想マシンができる仕組みがあると、プライベートクラウドらしくなります。

 もちろん、利用者が申請したり、権限を与えられたマシンを管理したりするUI、管理者が承認・リソースの割り当てを行うUIが、ポータルとして用意されていれば4つの要素がきれいにつながり、シンプルかつ効率的な管理ができるでしょう。

 さあどうでしょう?

 これって仮想化である程度できるじゃないか? と思われるかもしれません。

 確かに、仮想化の管理ツールはもともと自動化を意識していますし、最近のプライベートクラウド熱を受けて、セルフサービス用のUIや仮想マシンに特化したワークフローを追加してきているのですから、そう思うのも無理はありません。

 ただ、勘違いしないでほしいのです。

 プライベートクラウドの目的でも書いた通り、自動化に加えてサービス化も重要です。

 サービスと言っている以上は、利用者がほしいITを提供する必要があり、それは仮想マシン(だけ)とは限らないのです。

 そう、サービスの種類は無限にあり、時代の流れと共に変わっていくことでしょう。

 その時、その時に応じたサービスを、利用者に提供し続けるためのシステムを社内の管理者は考えていかねばなりません。

 それをあきらめた時、利用者は外のサービスに向いてしまうことでしょう。

 さて、話を戻します。

 これから社内のIT管理者は、上記の4つの要素をどのようなテクノロジーで実現するかを考えていかねばなりません。

 そのためには何をサービスとして提供するか? が重要です。

 そして、低コストでサービスを提供するには、運用基盤(ツールやスクリプティング環境と言っても良いでしょう)が自動化に向いている必要があります。

 (何度も書きますが)サービスですから、「リソース」と「コスト」のバランスが崩れないものを選択します。

 ワークフローやプロセスをどうするか? については、SIやコンサルの出番かもしれません。

 社内のITプロセスをどのように“プライベートクラウド”に合わせていくか? では、「プライベートクラウドの目的」でも書いたガバナンスが必要になるでしょう。

 また、サービスが一種類ならよいのですが、複数のサービスを1つのUIで提供するとしたら、サービスポータル(UI)やプロセス(ワークフロー)は複数サービスに対応したものにしなければならなくなります。

 とはいえ、プライベートですから、サービスごとにUIがバラバラであっても、サービスの一覧を表示する社内ポータルの整備や利用部門にとってわかりやすい課金システムさえあれば済むかもしれません。

 よって、プライベートクラウド化を推進していくためには、

  • 現時点で、社内ITの何をサービス化し
  • それをどのように社内に提供するか

を考え・進めるのと並行して、

  • 次はどんな新しいサービスを提供するか

についても検討していくことになるでしょう。

 最後に、仮想化以外のサービスの例も紹介しておきます。

 ドキュメント管理ポータルやチーム開発用のシステムそのものをサービスとして提供する……。特にプロジェクトごとに一定期間に利用するチーム開発用のシステムなどは、各プロジェクトごとに用意するよりも効率的だということはすぐに分かりますね。

 ちなみにこの2つは、Dynamic Data Center Toolkit for Hostersといって、ホスティング事業者様向けにサンプルのソースコードとドキュメントを提供する無償リソースです。

 自社内だけでなくグループ企業を含む複数社で利用するインフラと考えれば、マルチテナントを意識したホスティング事業者様向けのガイドが役立つことでしょう……。

 次回以降の投稿では、今日書いた4つの要素の1つずつ見ていくことにします。

修正履歴:「)」を追加。2011年1月25日17時20分。

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