「プライベート」クラウドコンピューティングが人気上昇中内輪ゆえの強固なセキュリティが強み(1/3 ページ)

「プライベート」クラウドコンピューティングは、ファイアウォールの内側に置かれた小規模なクラウド型ITシステムを通じてサービスを提供するものだ。メインストリームバージョンと異なるのは、内輪のネットワークで完結するという点だ。

» 2008年11月07日 08時00分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 まだ幼年期にありながらもミッドマーケットのエンタープライズIT分野でメジャープレーヤーとして着実に成長しつつあるクラウドコンピューティング(ユーティリティコンピューティング)は既に、カスタム設計の要素が色濃い構成へと枝分かれを始めている。

 クラウドコンピューティングは、1カ所のデータセンターからグリッドを通じて、数千あるいは数百万のユーザーにサブスクリプションベースでコンピューティングパワー、データストレージ、アプリケーションなどのサービスを提供する方式だ。一般的なタイプのクラウド――例えば、Amazon EC2、Google Apps、Salesforce.comなどがオンラインで提供するサービス――は、「パブリック」クラウドと呼ばれる。あらゆる企業あるいは個人が会員になって利用できるからだ。

 これに対して「プライベート」クラウドコンピューティングは、ファイアウォールの内側に置かれた小規模なクラウド型ITシステムを通じて同様のサービスを提供するというものだが、閉じられた内輪のネットワークにサービスが提供されるという点がメインストリームバージョンとは異なる。このネットワークには、社内の部門や営業所のほか、ビジネスパートナー、原材料サプライヤー、リセラー、生産チェーンを構成する企業など、自社と密接な関係のある企業や組織も含まれる。

 プライベートクラウドでは、その排他的な性格ゆえに、非常に強固なセキュリティを実現できる。そして、クラウドコンピューティングというコンセプトに魅力を感じた企業が、自社用のプライベートクラウドの構築を検討する最大の理由がセキュリティである。

プライベートクラウドに対するDellのアプローチ

 Dell Americasのポール・ベル社長は11月4日、サンフランシスコで開催された「Dreamforce」カンファレンスの円卓会議で、「われわれはプライベートクラウドコンピューティングに取り組む計画であり、顧客はこのトレンドに対して投資を始めている」と述べた。

 「プライベートクラウドエンタープライズの動きは、われわれのレーダーにしっかりとらえられている。われわれは、中小企業をサポートしているRackspaceなどのパートナーとともに、こういったホスティング方式に対応するつもりだ。自社のクラウドシステムを自力で構築しようとする顧客も増えている」とベル社長は話す。

 ベル氏によると、こういったシステムを構成するハードウェアのメインストリームサプライヤーとして、Dellはさまざまな角度からアプローチしようとしているという。

 「その1つが、サーバ仮想化市場でCitrixやVMwareと一緒にプライベートクラウドコンピューティングの共同プロジェクトを展開するというものだ。われわれは現在、VMwareのハードウェアビジネスの約3分の1にかかわっている」とベル氏は語る。

 「顧客の中でも、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)などの技術の導入を進めている企業が増えている。この技術はクライアントの仮想化を可能にする。実際、今日では、最終状態に至る手段は幾つか存在する」(同氏)

 VDIは従来のシンクライアントモデルに類似したサーバ中心のコンピューティングモデルだが、デスクトップPCとシンクライアントの優れた部分をシステム管理者とユーザーに提供するようにデザインされている。すなわち、データセンターで仮想デスクトップマシンを稼働して集中管理する機能を提供しながら、ユーザーにはデスクトップPCとまったく同じ経験を提供するのだ。

 「現在の状況に関連して思い出すのは、3〜4年ほど前にサーバ仮想化が盛り上がったころだ。この技術に対する関心が高まり、テストも盛んに行われたが、当時は市場が本格的に立ち上がるには至らなかった。ここにきて、サーバ仮想化が急激なペースで普及し、一気に主流になった」とベル氏は語る。

 プライベートクラウドコンピューティング用のVDIも、これと同じ方向に向かっているようだ。しかしベル氏によると、現在出回っているほかのクライアント仮想化技術は「まだ分断された状態」にあるという。

 「プライベートクラウドを実現する方法はたくさんある。われわれは現在、顧客がクラウドを構築する方法を決めるのを手助けするために、われわれのコンサルティング能力を拡大する作業を進めているところだ。サーバのバックエンドは何にするかといったことや、ネットワーキング問題、クライアントはどんなデバイスに接続すべきかといったことなど、解決すべき問題は多い」とベル氏は話す。

 「しかしセキュリティ上の理由から、われわれの顧客の間でプライベートクラウドコンピューティングは非常に強いトレンドになっているのは間違いない」(同氏)

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