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» 2011年01月31日 08時27分 UPDATE

Weekly Memo:NECとレノボが組んだ提携スキームの勘所

PC事業合弁に向けて交渉を進めていたNECとレノボ・グループが先週、戦略的提携を正式に発表した。両社が組んだ提携スキームの勘所とは――。

[松岡功,ITmedia]

持ち株会社に両社が出資

 前回のコラムで取り上げたNECとレノボ・グループの提携が先週27日、両社から正式に発表された。

 同日夜、都内ホテルで共同記者会見を行った両社のトップはそれぞれ開口一番、「この提携はNECにとって大きな広がりを持つものだ」(遠藤信博NEC社長)、「この提携でレノボは日本でナンバーワンPCメーカーの仲間入りをする」(ユアンチン・ヤン レノボCEO)と力を込めた。

 発表内容についてはすでに報道されているので関連記事等を参照いただくとして、ここでは提携スキームに注目してみたい。

 会見での説明によると、両社は2011年6月中を目途に「NEC レノボ・ジャパン グループ」を発足。このグループは、レノボが51%、NECが49%を出資する「Lenovo NEC Holdings B.V.」(登記上の本社はオランダ、本社機能は東京)を持ち株会社とし、その傘下に100%子会社として、現NECパーソナルプロダクツのPC事業を分離して設立する新会社「NECパーソナルコンピュータ」と既存のレノボ・ジャパンが入る格好となる。

 新しい合弁会社の社長には現NECパーソナルプロダクツの高須英世社長、会長にはレノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長が就任する予定だ。

 前回の本コラムでは、NECの100%出資子会社であるNECパーソナルプロダクツに対してレノボが50%超出資する方向との一部報道の内容を紹介したが、正式には持ち株会社に両社が前記の比率で出資する形となる。

 これは説明にあるように、合弁の対象がPC事業であることから、現NECパーソナルプロダクツから同事業を分離する必要があることと、レノボ・ジャパンを合弁に組み入れるために考えられた提携スキームだといえる。

 加えて、この提携スキームには、両社の販売店に対する配慮もうかがえる。とくにNECの販売店の間では、もし合弁会社が直接の取引先になれば混乱するのではないかと懸念する声もあったようだが、NECパーソナルコンピュータが設立されることで、そうした懸念は当面払拭できそうだ。

 とはいえ、今回のPC事業合弁を成功に導くためには、持ち株会社の役割が非常に重要となる。この持ち株会社については、会長に就く予定のラピン氏が「NECとレノボの長所を生かしたコーポレートアイデンティティの構築を図っていきたい。社員が誇りを持って働くことができ、顧客に安心して製品を購入してもらい、パートナーに積極的に取り引きしてもらえる会社を目指したい」と語っていたのが印象的だった。

共同記者会見に臨むNECの遠藤信博社長(右)とレノボのユアンチン・ヤンCEO 共同記者会見に臨むNECの遠藤信博社長(右)とレノボのユアンチン・ヤンCEO

レノボに合弁会社の全株取得権

 今回の提携スキームで注目されるポイントがもう1つある。合弁会社の発足にあたり、NECはレノボが新規発行する1億7500万ドル相当の株式を引き受ける形で、レノボの株式の約2%を取得する。これはNECがPC事業を合弁に移す見返りとなるものだが、両社が資本面でも直接関係を持つことになる。

 両社のトップはこの点について、「両社で長期的な戦略的提携関係を築いていこうという意思表示だ」と口をそろえた。そして、「両社は対等のパートナー」と幾度も強調した。

 しかし、レノボ主導と見る記者からは、重ねてNECの真意を探る質問が投げかけられた。中でも、今後、提携スキームが変わってNECのPC事業が完全にレノボ傘下に入る可能性があるのでは、との質問に、遠藤社長は「そういう話は一切ない。この提携は両社のシナジーを生かしていくことが基本だ」と力を込めて答えていた。

 ところが提携発表2日後の先週29日、両社が設立する合弁会社について、レノボが設立から5年後の2016年に、NECの同意を前提に全株を取得する権利を持っていることが一部報道で明らかになった。香港証券取引所に上場しているレノボの開示資料によると、合弁設立から5年後に、NECの同意があれば、レノボは合弁会社の業績に応じて最大2億7500万ドルで、NECが保有する全株式を取得することができるという。

 こうした報道に対し、NECの遠藤社長は同日、新聞各紙のインタビューに応じている。その発言を紹介しておくと、翌30日付けの朝日新聞では「契約だから、仮に合弁を終えた場合の条件を書かないといけない。だが、この条件を目的に提携したのではない。レノボもNECブランドなくして日本市場はあり得ないと理解しており、取得権を使おうなんて思ってない。(NECが合弁会社の株を売却する可能性は)今の時点で100%ない。そんなことを考えたら今回の提携はない」と答えている。

 また、同じく30日付けの日本経済新聞でも「契約に株の譲渡オプションがあるのは事実だが、相手が重視しているのはNECのブランド。それが使えなくなる合弁解消は考えていない」と回答。いずれも全株の売却はないと強く否定している。

 とはいえ、今回の提携によって、今後NECにPC事業売却の影がつきまとうのは宿命かもしれない。それを払拭するのは、ひとえに結果を出すしかない。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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