クラウドと向き合うための勘所――討論会から探るユーザーマインド

クラウド活用につきまとう不安――その中身を知るクラウドと向き合うための勘所(1/2 ページ)

企業のクラウド活用において、ユーザーはどんなところに不安を抱いているのか。「メディア横断企画 クラウド討論会2011」では、不安の具体的な内容と解決の方向性について、メディア各社のトップが活発な議論を展開した。

» 2011年02月07日 10時00分 公開
[合田雅人,ITmedia]

 クラウドの本格普及に求められるものとは――アイ・ティ・アール(ITR)主催による「メディア横断企画 クラウド討論会2011」が1月下旬に行われた。主要IT系メディア(ITmedia/CNET Japan/TECH.ASCII.jp/ITLeaders/日経コンピュータ)のトップがクラウド時代と向き合うためのポイントについて活発な議論を交わした。

“ありがちな”不安だけ?

 討論会の冒頭は、モデレーターを務めるITR シニア・アナリスト 舘野真人氏から事前に実施したアンケートの説明が行われた。今回の討論会に向け、2010年12月下旬にITRとメディア各社が企業の情報システム関連担当者に対してアンケートを実施。全有効回答数は419件である。ここではクラウド活用についてユーザーが抱くさまざまな不安の声が寄せられた。

 クラウドに対する課題・不安として上位に挙げられるのは、まず「セキュリティ・情報漏えい不安」について、「非常に意識している」と答える人がに多いことが分かった。さらに「クラウド事業者の業務停止・倒産」「コスト削減につながるのかが不明」「サポート体制・障害時対応」「社外に情報を預けることの不安」という項目に対して、意識を強くしている回答者が多い。ただし、これだけ見ているとデータセンター事業者のホスティングサービスを利用する際に生じる不安と似ていると言えなくもない。(図1参照)

図1:クラウドに対する不安・課題-1(ユーザー企業全体、出典:「クラウド討論会2011」事前アンケート)

 事前アンケートのさらに別の結果では、「セキュリティに対する不安」「社外に情報を預けることの不安」に関しては、特にクラウド未導入企業が強く懸念しているのに対し、導入企業では不安や心配の度合いが若干少なくなることが分かった。最初はかなり警戒していたが、利用するうちに「特に問題なく稼働している」と不安が和らいでいくといったところだろうか。どんなITサービスを利用する際にも、ユーザーのこうした心理は一般的に現れるところだろう。(図2参照)

図2:クラウドに対する不安・課題-2(クラウド利用の有無別、出典:「クラウド討論会2011」事前アンケート)

すべての不安の解決に通じる問題意識

 それでは、クラウドだからこそユーザーが抱える不安はないのだろうか。また、ユーザーがクラウド事業者に対して目を光らせる、あるいは、ともに解決策を見いだして不安を和らげる必要のある点などがあるのだろうか。

 アイティメディア ITインダストリー編集統括部長の浅井英二氏は次のように話す。

 「まだ始まったばかりだが、クラウド事業者とユーザーは“なぁなぁの関係”ではいけない。他のサービスを利用していて長年のつきあいがあり、信頼関係を構築できていたとしても、クラウドサービスについてはSLA(Service Level Agreement)を厳密に締結し、サービス内容やシステム環境などについて、しっかりと情報開示するようユーザーが要求していく必要があります。問題はシステムが止まったときにどういう対応をしてくれるのかということ。事業継続マネジメントという面からも、どの時点でシステムが復旧されるのか、そして、利用者はどのような対応をしなくてはならないかを事業者に明確にしてもらう必要があるでしょう」

 これは、前段で取り上げたクラウドに対する全ての課題・不安に関連することだ。万が一問題が起こった時はどうするのか、その前にどういう約束事を交わすのか――基本的なことだが、クラウドサービスはまだまだサービスとして成熟していない面もあるので、十分注意したいところだ。

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