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» 2011年02月25日 08時00分 UPDATE

中小企業の活力を高めるIT活用の潮流:赤字の腕時計修理事業を立て直したカイゼン活動の舞台裏 (1/3)

ROLEXなど高級ブランド時計の修理を請け負う共栄産業は、国内でも有数の技術力を誇る。ところが、かつての修理部門は毎月200万円の赤字を出し、技術者の業務統制もとれていなかったという。

[伏見学,ITmedia]

 18世紀末にスイスで誕生したとされている腕時計は、長い時を経て、今なお嗜好品として多くの人々の心をとらえて離さない。その長い歴史と同様、個々人にとっても「一生もの」という表現がなされるように、腕時計は長く大切に使われる代物といえよう。

 年長者が集う街として知られる東京・巣鴨。この地に本社を構える共栄産業は、ROLEXやOMEGAといった高級ブランドをはじめ、さまざまな時計の修理やオーバーホール、電池や時計関連商品の卸などを手掛けている。直販営業も展開しており、銀座の老舗デパート「松屋」など全国5カ所に販売店舗を持つ。

 その豪華絢爛なイメージから見過ごされがちだが、現在、時計産業は世界的に深刻な不況に陥っている。海外の大手ブランドメーカーは売り上げが減少、国内メーカーも同様で、マーケティング施策の見直しなどを迫られている。根幹となるメーカーがそうした状況にあるため、下請け会社や卸会社はさらに厳しい環境にさらされているという。

 そうした中、共栄産業は最大の強みである「技術力」を武器に、着実に顧客を増やし、売り上げを伸ばしている。この現状を築くことができたのは、数年前に断行した業務改善活動とITシステム改革のおかげである。

毎月200万円の赤字を出す

共栄産業の小林正博社長 共栄産業の小林正博社長

 1968年に創業した共栄産業は、時計用バッテリー電池の卸売り販売を主な事業としていた。ところが当時、仕入れた商品の中には液漏れしている電池が少なくなかった。通常であればメーカーに返品するのだが、それでは時間が掛かり顧客を待たせてしまうことになるので、自前で数人の技術者を雇い、液漏れトラブルの対応などを引き受けた。そうしているうちに、実績を買われて海外メーカーからも少しずつ時計修理の案件が増えていき、ついには1982年に一事業として修理部門を立ち上げるまでになったのである。

 同社が恵まれていたのは、当時扱っていた時計電池がヨーロッパ製だったため、OMEGAなどのブランド代理店を通じてスイスメーカーとのパイプを作れたことである。「電池のトラブル対応や海外から輸入した時計の検品(品質チェック)などを行っているうちに、修理も教えるということで数人の技術者をスイスに派遣して技術力を磨いた」と小林正博社長は話す。

 その後、時計販売事業にも参入。事業成長の大きなきっかけとなったのが、1998年放映の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」である、主演の織田裕二扮する青島刑事が身に付けていたWENGER(スイスの時計ブランド)の腕時計が爆発的な人気になったことで、日本での総販売元だった同社に注文が殺到し、売り上げを飛躍的に伸ばした。

 一方で、そのころの時計修理部門は不振にあえぎ、毎月200万円前後の赤字を出していた。その大きな原因が作業効率の低さである。腕の良い優秀な技術者を抱えていたものの、その“職人気質”があだとなり、例えば、自分が興味のある時計から優先的に修理するなど、作業の効率化とは無縁の仕事ぶりだった。修理件数は月間3000件程度にとどまっていた。

 もちろん、時計は販売した時点での利益が大きく、故障修理などのサポート業務はほとんど利益にならないという構造的な問題もあった。販売部門からも“お荷物”とのレッテルを貼られ、「修理事業を今後も続けていくかどうか、現実的に考えた時期だった」と小林氏は語る。

 先に述べたように、修理部門の課題は明確だった。作業を効率化し、生産性を高めるためにはどうすればいいか。そこで2004年の暮れ、トヨタカンバン方式の専門コンサルタントを招き入れ、全社で取り組む業務改善プロジェクトがスタートした。

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