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» 2011年09月12日 11時00分 UPDATE

Weekly Memo:DISとの協業に見たマイクロソフトの危機感

日本マイクロソフトとダイワボウ情報システム(DIS)による企業向けタブレット端末事業での協業は、マイクロソフトの同事業への意気込みとともに危機感も透けて見える。

[松岡功,ITmedia]

両社でWindows搭載スレートPCを拡販

 「スマートフォンもタブレット端末あるいはスレートPCも、市場が本格的に広がっていくのはまさにこれから。今はハードウェアもソフトウェアも1社でまとめているアップルが先行しているが、マイクロソフトはパートナー展開を基軸にしているので、その分、今後ビジネスが大きく広がっていくと確信している」

 日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、同社とダイワボウ情報システム(DIS)が9月5日に開いた企業向けタブレット端末事業での協業に関する共同発表記者会見で、市場での競合状況を問われてこう語った。

 ちなみに、マイクロソフトではタブレット端末と表現せず、「スレートPC」と呼ぶ。この表現にもマイクロソフトの思惑を感じるが、それはのちほどひもとくとして、ここでは適時、使い分ける。

 マイクロソフトが今、力を入れているのは、当然ながらWindows OSを搭載したスレートPCである。すでにPCメーカー各社も相次いで商品化しており、PC市場の裾野の広がりに期待が大きく膨らんできている。

 そんなタイミングを見計らって発表されたのが、日本マイクロソフトとDISによる協業である。具体的には、10月1日付けで、中堅・中小企業および教育市場向けにWindows搭載スレートPCを拡販する専任組織「Windowsスレート推進センター」を共同でDIS内に設立する。

 同センター設立の狙いは、全国87カ所にあるDISの販売拠点を通じて中堅・中小企業および教育市場へ多様な製品の選択肢を提供し、Windows搭載スレートPCの利活用シナリオ・ソリューションを創出することで、その導入を推進することにある。

 会見に臨んだDISの野上義博社長は、「このセンターが提供するソリューションとDISの営業力、そしてマイクロソフト製品群を組み合わせることによって、エンドユーザーにより付加価値の高い提案をお届けすることができると確信している」と力を込めた。

 これに対し、日本マイクロソフトの樋口社長も「両社はこれまでもPCおよびPCサーバで協業してきたが、国内で最もPC販売力のあるDISと一緒に、これからはスレートPCをはじめとした新しい市場をどんどん開拓していきたい」との意気込みを語った。

 さらに詳細な会見内容については、関連記事等を参照いただくとして、ここからはDISとの協業で見えてきたマイクロソフトの危機感にフォーカスを当ててみたい。

 日本マイクロソフトの樋口泰行社長(左)とダイワボウ情報システムの野上義博社長 日本マイクロソフトの樋口泰行社長(左)とダイワボウ情報システムの野上義博社長

マイクロソフトにとって絶対に負けられない勝負

 「Windows搭載スレートPCならば、これまで使用してきたWindowsベースのソフトウェアや周辺機器などの資産をそのまま活用することができる。そうした面からも企業の情報システムとの親和性や管理性に優れており、企業ニーズは非常に高いと実感している」

 日本マイクロソフトの樋口社長は、会見で繰り返しこう語った。DISと共同で設立したWindowsスレート推進センターは、そうしたニーズに対応したソリューションを生み出し、Windows搭載スレートPCの導入促進を図るのが最大の命題となる。

 だが、樋口社長が会見で繰り返しそう発言したのは、これまでWindowsで確固たる牙城を築き上げてきた企業向け市場を競合製品に侵食されないようにしたい、との思いが裏側にあるからだろう。競合するiPadやAndroid端末が、企業向け市場に本格的に進出してくる前に“企業向けはWindows搭載スレートPC”という市場の流れをつくってしまいたい、というのが本音ではなかろうか。もちろん、マイクロソフトとしては、企業向けを足がかりにiPadやAndroid端末が先行するコンシューマ市場へも打って出るつもりだろう。

 さらに、マイクロソフトがそうした流れを早くつくってしまいたいと考える理由があると、同社の事業に精通した業界関係者はこう話す。

 「マイクロソフトはこれから、Windows搭載スマートフォン、そしてオフィスアプリケーションのクラウドサービスであるOffice 365を本格的に展開する。その際、Windows搭載スレートPCはそれらの連携あるいは利用デバイスとして重要な役割を果たす可能性がある。それだけに企業向けのタブレット端末市場競争は、マイクロソフトにとって絶対に負けられない勝負だという危機感がある」

 一方、別の業界関係者がこんな話をしてくれた。

 「これまでのPCはオフィスアプリケーションを含めて、主に情報を“つくる”ものだった。それに対し、スマートフォンやタブレット端末は、主に情報を“利用する”ものといえる。情報を利用する端末としては企業向けでも、今後スマートフォンがどんどん進化して主役になっていくだろう。そうした中で、タブレット端末はどう使われるためにどう進化し、どれくらいの市場規模をつくっていくか、非常に興味深い」

 そして、その業界関係者はこう付け加えた。

 「タブレット端末をスレートPCと呼ぶマイクロソフトは、あくまでタブレット端末をPCと位置付けているのがミソ。おそらく同社ならではのスレートPCとスマートフォンの連携および使い分けを提案してくるのではないか」

 ちなみに、マイクロソフトはかつて「タブレットPC」市場を切り開こうと、ビル・ゲイツ会長を中心として熱心に動いたことがあったが、思惑通り行かなかった経緯がある。同社が「タブレット」と表現しないのはそれが理由とうがった見方もあるが、事の本質はそれよりもPCと位置付けるかどうかにありそうだ。

 さて、マイクロソフトはどんな提案をしてくるのか……。楽しみにしたい。

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