フロッピーディスクの不思議萩原栄幸が斬る! IT時事刻々(1/2 ページ)

今となっては姿を消しつつあるフロッピーディスク(FD)だが、FDには大変に興味深い点が幾つもある。筆者が気になった“都市伝説”を解説したい。

» 2011年10月29日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 今ではほとんど使われなくなったフロッピーディスク(FD)には、幾つかの「都市伝説」がある。今回はその真偽について解説したい。

フロッピーって知っていますか?

 今の中学生に聞いてみると、半数の子どもがかろうじて知っている言葉が、FDである(筆者の知り合いの子どもなので世間の数字とは異なるかもしれないが)。最盛期には今のUSBメモリ以上に使われ、筆者もよく100枚入りのFDのパッケージを購入したものである。

 FDにはさまざまな規格や大きさがあった。米IBMが「ディスケット」と称していた時代には、8インチという大きさのものがあった。銀行の端末機のジャーナルがこの8インチのFDだったのだ。1インチが2.54センチだから、20センチもの大きさがあったのである。構造がペラペラで、取り扱いに注意しないと、すぐに読み込めなくなってしまった経験がある。

 そのうちに小型化が進み、5インチ(正確には5.25インチ)の大きさになり、今ではFDというとほぼ100%が3.5インチの大きさになってしまった。構造もプラスチックのケースで覆われているので、昔のように柔らかいものではない。

 規格もさまざまであったが、今では2HDが恐らく9割以上を占めるのではないだろうか。2HDは2DDと互換があるので、2DDも現役で使われている。昔、筆者が使っていたころの3.5インチ型は「1DD」であった。もうこの1DDのFDを読める機器は、ワープロを含めてほとんど現存していないのではないだろうか。筆者もこのFDを使っていたワープロを10年以上前に廃棄している。

 容量は2HDでは通常1.44Mバイト(フォーマット時)である。今の感覚でいえば、1.44Gバイトの1000分の1、1.44テラバイト100万分の1しかない。この大きさでは当然ながら動画はもちろん、ちょっとサイズの大きい1枚の画像すらも入らない。これがFDなのである。

 たったそれだけの容量だが、これでも昔は大変に活躍していたものだ。HDDがまだなかったころは、このFDでOSを立ち上げていた。今となっては、「信じられない」という人もいるかもしれないが本当のことだ。最近、1台のHDDを購入したが、容量は3テラバイトである。FDに換算すると、実に2百万倍以上もの容量がある。それが今日の状況だ。

都市伝説その1:「完全削除できる」

 これは本当のことだ。今のPCはHDDについて「クイック・フォーマット」と「フォーマット(初期化)」の2種類の操作ができるが、筆者はセキュリティ対策のセミナーで10年以上前から「フォーマット、初期化、イニシャライズなどの操作をしてもデータは完全に消えない。完全消去をするには専用ソフトが必要」と警告し続けてきた。この事実は今主流のどのメディアにも存在する。ところがFDだけはちがうのだ。

 FDでは「フォーマット」を選択するだけ(正確にはフォーマットオプションで「クイック・フォーマット」を指定しない)でデータ領域を完全に上書きし、前のイメージを消すことができる。筆者の実験ではヘキサ(16進)で“F6”で消去されていた。

 この事象を踏まえ、容量の小さな文書ファイルなどでもメールに添付できない、もしくは規則で制限されているような企業や事業所では、まだFDが現役で活躍している。そして使い終われば「通常のフォーマット」もしくはハサミでFDを分断して、データを使えないようにする。たった1回しか使わなくてもハサミで分断することに、もったいないと筆者の年代層は感じてしまうのだが、そのような運用を長年継続しているところが存在している。なおこうした環境にいる若者は、FDの廃棄に全く疑問にも持たない人が多いと聞く。読者はどう感じるだろうか。

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