これも本当のことである。大部分とは、99%以上が未使用領域ということである。正確にはHDDでも論理的に起こり得るのだがその値の差が大きすぎるため、実際にユーザーが遭遇するのはFDがほとんどである。
これも実験をすればすぐに分かる。筆者はセミナーでPCの初心者向けにこういう類の実験を一緒にしているので、その様子を紹介しよう。
「1.44Mバイト=約144万バイト」であり、本来なら、1バイトのファイルを144万個格納できるはずである。ただし、実際にはファイル名などの情報も格納する必要があるので、仮に1ファイルを300バイトとしても4800個が格納できる計算になる。
詳細な解説は割愛するが、上記の例では40個前後でいっぱいになる。計算上、ファイル名などを考慮しなければ(純粋なデータ領域のみで比較するなら)、なんと99.997%が使われていないのだ(1.44Mバイトのうち40バイトしか使われていないという前提)。ファイル名などを考慮し、仮に1ファイル300バイトとみても99.2%が空いている計算となる。
それでは、どのようにすればさらに多くのファイルを格納できるようになるのか。そのままでは何もできないのでいったんファイルをHDDに移し、別にフォルダを作成する。フォルダをHDDに作成して40個のファイルを入れてもいいし、FDにフォルダを作成して40個のファイルを入れてもいい。その状態で、フォルダの中に次々とファイルを格納していっても、「ディスクが一杯になりました」という警告メッセージは表示されないのだ。当然ながら、その後に残りのファイルを全てコピーしても警告メッセージが表示されることはない。
簡単にこの事象を解説すると、ファイル情報(ユーザー側からは普段は認識されないファイルに関する情報)はFDの中にも格納する必要があるが、実験のようにFDの直下(例えばAドライブのすぐ下にファイルをそのまま出力する)に格納する場合、ファイル情報の格納領域が限定されているため、領域が一杯になると、OSが「もう出力できません」と判断するのである。ところがフォルダを1つ作り、その中にファイルを次々と格納していく場合ではファイル情報はデータ領域の中に一緒に格納されるので、FDの容量を有効的に活用できる。
実はこの「盲点」を突いた小さな情報漏えい事件が10年以上も前に起きた。筆者はその調査を担当していたのである。。
さてFDは、容量が少ないながらもその価値が認められ、10年後も20年後も使われていくのだろうか。それとも、消えていくのだろうか。どちらにしても情報機器の寿命は短く、そして、データ量は爆発的に増加しつつある。その視点でみるとFDの行く末は極めて興味深いものである。
一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。
情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。
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