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» 2011年11月22日 08時00分 UPDATE

導入事例:多品種少量のサニタリー製品をWebパブリッシュするには?

個々の出荷量は少なくても、多品種を扱う必要があるブランドビジネスにおいては、すべての取り扱い品目を頭の中に入れるのは難しい。商談の場ですぐに製品をレファレンスできるツールとしてデータベースのWeb公開が有効だという。

[岡田靖,ITmedia]

商品数は膨大で組み合わせも複雑、変更も頻繁でカタログ制作が課題に

ishimura.jpg 「Tform」ブランドで高級サニタリーウェアを展開する大洋金物の石村元裕氏

 大洋金物は建築資材のメーカー兼商社だ。同社は建築金物の製造販売に加え、「Tform」ブランドで欧米サニタリー製品(バスタブ、洗面器、トイレやバスルームアクセサリー、キッチン周りなど)の輸入販売を手掛けており、このうちサニタリー製品関連事業は顧客の8割が東京であることから、担当するティーフォルム事業部では東京のショールームを、その営業拠点としている。

 施主にとってみれば、輸入サニタリーは、住宅やホテル、各種施設などを建てる上で重要なこだわりのポイントだ。その施主のイメージにふさわしい商品を選ぶのは、主に有名設計事務所や大手ゼネコンのインテリア部門といった業者だ。こうした業者が、ティーフォルム事業部の主な顧客となっている。

 「商品選びの上ではメーカー、デザイン、サイズ、色、据え付け方法など、いろいろな要素があり、商品点数は膨大な数にのぼります。商品点数は1万点ほど。カタログ掲載は2000点、そして写真が1万点くらい。かなりニッチな商品です。これだけ沢山扱っていて、年間10個以上売れるのは半数ほど、100個売れる商品は1割に過ぎません。3〜4割の商品は年間数個の出荷です。まさに多品種少量と言えます。スタッフはこれらの商品の情報が頭に入っているので、問い合わせを受けても即答できますが、多くの顧客はそこまで商品に精通しているわけではありません」と、同事業部マネージャーの石村元裕氏は話す。

 もちろん、同社は顧客に商品を紹介するためにWebサイトや紙媒体のカタログを以前から用意してきた。しかし、なかなか利便性を高めることが難しかったという。

 こうした課題に、カタログ制作者が声を上げた。松山貴至デザイン事務所 デザイナー/アートディレクターの松山貴至氏だ。

 「Tformの紙のカタログは100ページ以上にのぼります。大量のデータをExcelで受け取り制作していますが、作っている間にも、商品構成の変更があり、変わったところは再び流し込みをしなくてはいけませんでした。Webカタログ制作でも同じような悩みがあったと聞いています。もっと効率的に作業をしたいと考え、3年ほど前にFileMakerの採用を提案しました。FileMakerは以前の所属事務所で使っており、効果が期待できると考えたのです」(松山氏)

仕様を固めながらシステムを作り上げていけるのはFileMakerならでは

matsuyama.jpg FileMakerを提案したデザイナー/アートディレクターの松山貴至氏

 松山氏の提案を受けて大洋金物は、ファイルメーカー社のサイトで開発パートナーを調べ、SIerのシータを選んだ。シータはFileMakerだけでなく、印刷物やWebの制作に欠かせないデザイン系ソフトウェアの扱いも得意で、FileMakerを中核とした「THETA IRIS」というカタログ制作の自動化ソリューションを持っており、ティーフォルム事業部の課題を解決するのにふさわしいという判断だった。

 FileMakerで開発することにしたのは、カタログ制作の効率化に繋がる商品管理に加え、以前は主に紙の台帳で作業していた販売管理や顧客管理など、事業部の主要な業務の大半である。扱うデータが多岐にわたり、複雑に関連し合うため、シータの代表取締役である久岡摂氏は、特にデータベース間のリレーションに気を配ったという。

 「データベースの中で何を軸とするか、といった話し合いにかなり時間をかけました。実際にデータをExcelからFileMakerに流し込んで整理し始めたのは2009年の8月頃だったと思います。当時は商品管理の登録だけを行い、業務で使ってもらいながら、随時修正を加えていきました」(久岡氏)

 FileMaker上では、流し込んだデータの誤記なども見つかり、ユーザー自身で修正していった部分もあったという。商品データベースのの備考欄なども、FileMaker上で使いながら整理された。また、画面構成なども、ユーザーの声を反映して改良が進められていった。

 「完成したカタログを見れば分かる通り、商品を選べば施行事例の写真や関連商品なども表示される、かなり複雑なリレーションになっています。例えば洗面台を選ぶ際も、金具や配管などのオプションがあって、検索はとても複雑な条件で行われます。このような検索を可能にするにはRDB化が必須ですが、FileMaker以外のRDBでは要件を最初に決めないと次に進めません。とはいえ事前の仕様書でユーザーの理解を求めるなんて、無理な話です。まずデータベースに入れて、ユーザーに使ってもらいながら仕様を決めていけるのは、FileMakerならでは。このシステムも、一度要件を決めて作って使ってもらい、修正してまた使ってもらう、の繰り返しで練り上げました」と久岡氏は話す。

hisaoka.jpg シータの代表取締役、久岡摂氏

 ユーザーにとっても、実際に動いているシステムに対して要望を重ねて作り上げる手法が好評だったようだ。日々の業務を行いながら、「ここはこうした方が楽になるのではないか」と感じた部分を、徐々に改良していった。

 「事前に仕様書を作る開発手法の場合、ITの専門家が当社の業務をどれだけ理解してくれるかという問題もあります。それに対し、FileMakerなら試しに使える柔軟性があり、駄目なところは後から気軽に直せるし、ソート順序の修正など、ちょっとしたところは社内でもできます。私も、システムがかなり形になって動いている状態まで来てから営業的な観点でチェックしました。また、デザイン面は松山さんにもチェックしてもらっています」(石村氏)

 そして、システムを使いながら修正を加えていく過程で、ユーザー側も自然とFileMakerの機能に精通していくことになった。当初「できないだろう」と思って諦めていたことが、実は可能であると知り、実現した機能もあるという。

 「例えば『カウンターに置くタイプの洗面器』という複合的な検索も可能になりました。最初の頃は『できること』と『やりたいこと』が噛み合っていませんでしたが、こうした機能を知ることによって、作業をより楽にできるようになってきましたね」(石村氏)

最新の商品情報を、適切な組み合わせで閲覧できるようWeb公開

fm1.jpg FileMakerの活用で一新されたTformのWebカタログ。メーカーを選べば、そのメーカーの商品シリーズ、さらに個別商品、といった具合に商品を探していける。各商品のコーナーでは、単体写真だけでなく施工例や関連商品などの情報も連携されており、具体的な商品を選べる(クリックで拡大)

 こうして商品データベースが整理され、FileMakerからWebカタログへの直接出力、つまりWebパブリッシングが可能になってきた。しばらくの間はβ版として、従来のWebカタログとは別のURLで一部の顧客にだけ見せるようにしていたが、このほど旧Webカタログを廃止して正式版としてリリースしている。

 「これまでのサイトは、商品をたどらないとないと探せませんでした。しかしFileMakerで新しく作ったサイトは、顧客からも『使いやすい』と好評をいただいています。例えば、この洗面台には何を組み合わせるのが正しいか、関連商品も不安なく選べるようになりました。ただし、もちろん我々も正しく組み合わさるようにデータを入力しておかなければいけませんが」と石村氏は話す。

 とはいえ、もしデータに間違いが見つかっても、FileMaker上のデータを修正すれば、すぐにWebカタログにも反映されるようになっている。言うまでもなく、商品の改廃なども迅速に反映できるようになった。ちなみに、FileMakerからWebへの反映は、入力ミスなどがそのまま公開されぬよう、15分ほどのタイムラグを設けているという。

 一方、紙媒体のカタログについても、FileMakerのデータからダイレクトに流し込む手順が取り入れられた。松山氏は、この機能に大いに満足している。

 「デザイナーとしては、流し込みのオペレーションや素材データの突き合わせをしなくて済むようになり、本来の業務であるデザインそのものや、デザインの打ち合わせに注力できるようになりました」(松山氏)

将来的にはiPad+FileMaker Goをモバイル営業ツールとして使うことも検討

 新たなWebカタログは、ティーフォルム事業部の顧客が施主に説明する際にも効果を発揮しているという。

 「今までのWebカタログでは、例えば施主が『この水栓ではイメージと違うなあ』と言ってきたら、設計事務所はフリーズしてしまいました。他の製品をすぐに提案できなかったからです。今のシステムでは、『この商品に対応するパーツは何か』といった情報も即座に提供できます。設計事務所が施主に説明するのを支援する電子カタログ、というレベルになりました」(石村氏)

 石村氏らが顧客を訪問してプレゼンを行う際にも、FileMakerの電子カタログが活躍している。現状ではノートPCと紙のカタログの両方を持参し、それぞれのカタログを使い分けているが、今後はiPadとFileMaker Goの組み合わせでプレゼンを行うことも考えているという。

 「FileMaker Goを1ライセンス導入し、実際に試しているところです。家を建てるスパンが短くなり、工期が短くなってきている昨今、われわれも顧客に対して素早く提案していくことが求められます。想定しているのは、例えば施主が希望する商品の在庫の有無をチェックしたり、もしなかった場合にも『サイズ違いなら在庫がありますよ』といった返答を即座に行う使い方です。顧客は商品に詳しいとは限らず、示してきた品よりイメージに近い商品が別にある場合にも、このiPadカタログで見てもらって的確な提案ができるでしょう。それから、こうして選んだ品物の一覧をA4用紙などにレイアウトしてPDF化し、メールしたりプリントする、といった使い方も考えています」(石村氏)

fm2.jpg FileMaker Goに商品カタログを登録し、iPadを営業ツールに

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