ここまで使える! パブリッククラウド活用の最前線

全業務システムをAzureで刷新――“フルクラウド”で改革に挑む国士舘大クラウド最前線(1/2 ページ)

国士舘大学は、全業務システムをWindows Azure Platformを使って刷新。また、クラウドを活用した学生向けサービスなども提供するという。プロジェクトを主導した同大学附属図書館の植田事務部長に、取り組みの背景と今後について聞く。

» 2012年01月27日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo 国士舘大学世田谷キャンパス内に立地する附属図書館

 4つのキャンパスに約1万5000人の学生を抱える国士舘大学。同大学は早くからICTの活用に取り組み、1973年に電子計算機センター(現:情報科学センター)および実務電算機室(現:情報基盤センター)を開設。2003年には大学附属図書館の主導で図書館学術リポジトリサービス「Kiss」の提供を開始するなど、学生・教職員向けICTサービスを積極的に提供してきた。

 2010年にはICTサービスのさらなる向上やICT関連コストの削減などを目指し、新たに「メディア情報構想検討委員会」を設置。同委員会のもとで学内システム刷新のためのプロジェクトを進め、2011年6月には日本マイクロソフトとともに学内ICTシステムの全面クラウド化を発表した。

 同年9月から順次新システムへの移行を進め、2012年度からは全業務システムのほか、学内SNSを含む学生ポータルなどもWindows Azure Platform上で本格稼働する予定だ。この計画で大学全体のICT関連コストを従来比で約30%削減することを見込み、現在は膨大な対象システムのテスト運用を行っているという。

国士舘大学を包み込んでいた“閉塞感”

 国士舘大では従来、学生管理や教職員の人事管理、施設管理など、業務ごとに全く異なるシステムを運用していた。そのためシステムごとに専用の保守管理要員を置く必要があり、結果的にランニングコストが年間10億円まで膨大化してしまっていたという。

photo 植田英範事務部長

 教職員人件費を除いた年間約80億円で施設管理や学内サービスなどを賄っている同大学にとって、この10億円という数字は財務上で大きな重荷になっていた。だが「これでも10年ほどかけて緊縮した金額。これ以上減らしたら成り立たなくなる限界点だった」と、同大学附属図書館の植田英範事務部長は振り返る。

 ICT関連コストのさらなる削減を実現するためには、業務をまたいで一元的に管理できる新システムを導入する必要があった。しかし、従来は開発コストとの兼ね合いでなかなかシステムの刷新に踏み切れずにいたという。

 「日本の大学で、業務システムを内製できるところはほとんどない。結局ベンダーに委託することになるが、これが非常に高い。以前、入試用の業務システムを刷新するための見積りをとった時、どのベンダーにも2億円程度かかると言われた。1万5000人程度の大学の入試用システムになぜ2億円もかけないといけないのか、全く理解できなかった」(植田事務部長)

 コスト削減のために必要な予算を捻出できない――この板挟みの状況を打破したのがWindows Azureだったと植田事務部長は振り返る。具体的には、Azure上でSharePoint OnlineやDynamics CRM Onlineなどを組み合わせてシステムを開発することで、それまでの見積りの50%ほどのコストで業務システムを開発できると分かったのである。

 また、タイムインターメディア(新宿区)が提供するASP.NET上の業務アプリケーション開発フレームワーク「DODAI」を利用することで、さらに開発コストを削減できたという。「ASP.NET上での開発経験があるベンダーが蓄積してきたサブルーチンモジュールを使うことで、新規に開発する部分が通常の20%ほどで済んだ」と植田事務部長は話す。

 「(Windows Azureの採用を決めたのは)当然の選択だった」と植田事務部長。こうして新規開発部分を減らしたほか、200台の物理サーバを撤廃してクラウド上に基盤を移したことで、同大学は業務システムの保守・運用コストを従来の4分の1に減らせると見込んでいる。

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