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» 2012年04月12日 08時00分 UPDATE

ビッグデータ時代到来 企業に求められる3つのスキル (1/2)

本稿では、データ分析をビジネスに活用する上で必要なスキルを洗い出し、企業における効果的なデータ活用のあり方を検討します。

[中林紀彦,日本アイ・ビー・エム]

 「ビッグデータ」がIT分野のキーワードとして大きくクローズアップされ、その分析による活用がビジネス的な効果として注目を集めています。一方で、IT技術、既存の組織や人材スキルでは解けない課題も徐々に浮き彫りになってきています。それは“データを分析してビジネスにつなげるスキル”です。

 このコラムでは、データ分析をビジネスに活用するために必要なスキルを洗い出し、どのようなアプローチを取ることで企業における効果的な情報活用を実現できるかを考えます。また、国内外の先進的な事例も紹介します。

3つのスキル

 では、さっそくビッグデータ時代において企業に求められるスキルを見ていきましょう。

ビジネススキル

 ここでいうビジネススキルとは、仕事で成果を上げる能力ということよりも、ビジネスのプロセスを標準化して理解し、各プロセスでどのような情報がインプット、生成されるかを理解する能力です。

 営業活動を例に取ってみましょう。通常、イベントやキャンペーンの販促活動によるアンケートなどから見込み顧客となりそうな顧客リストがCRM(顧客関係管理)システムに登録され、その情報を元に営業担当者が営業活動を行います。ここでは顧客の属性や興味のある製品、サービスなどがデータとしてCRMシステムにインプットされます。次に顧客が製品などを購入したら、決済システムに決済情報が、物品であれば物流システムに物流情報が入力、生成、記録されていきます。このように、どのプロセスのどういった活動によってデータが生成されていくかということを理解していることが大切です。

 加えて、どのプロセスが、もしくは、どのプロセスで作られるデータがビジネスの結果に大きな影響をもたらすかということを、感覚的にでも理解していることが、データを分析しモデル化する上で重要となります。例えば、顧客属性の中で年齢と性別よりも職業の方が購買確率に大きく影響を与えているなどということです。

数学的スキル(モデル化、パターン化)

 次に重要になのが、データを分析するための数学的なスキルです。これまでビジネスデータの分析スキルといえば、集計や平均値、標準偏差などを求めるような単純な統計学の力が中心でしたが、これから必要となるのはデータの集合からビジネスの法則を見つけ出す“モデル化”や“パターン化”のスキルです。科学の世界では一般的な手法であり、例えば、理想気体の状態方程式「 PV=nRT」は、気体の状態をモデル化し数式で表して一般化しています。

 同様に、ビジネスの世界でも、ビジネス活動の状態をモデル化し数式化する分析スキルが求められています。例えば、あるスーパーチェーンで店舗の立地やこれまでの売上実績、天候、気温、曜日から、集客数や商品ごとの売上金額が計算できるような数式を導き出すことができれば、適切な人員シフトを作成したり、商品をロスなく仕入れたりと、利益の改善が見込めます。

ITスキル

 ITスキルも欠かせません。まずはデータベースに関するスキルです。分析に必要となるデータがどこに保管されていて、AGEやJOBといったデータベースの項目が実際のビジネス用語とどう結び付けられているのかという基本的なことは、最近のITツールでかなり実現できるようになっています。しかし、業務ごとにビジネス用語が統一されていなかったり、データベースがバラバラだったりするのが多くの企業での現状ですので、まだ人に頼る部分も多いといえます。

 今後さらに必要になるのは、モデル化された数式を、ITを使って解く力です。例えば、ある商品の売上金額が顧客年齢に比例するというモデルがあるとします。これは、[売上金額]=α x [年齢] という数式で表せますが、係数αが何かを求めるためにはITを使って方程式を解く必要があります。これはごく簡単な線形回帰モデルですので、データ量が少なければExcelなどの表計算ソフトを使ってαを求めることができますし、SPSSやRなど専用の統計分析ソフトを使って導くことも可能です。数式がもっと複雑な場合にはプログラムを作成して係数を解析する必要がありますので、そうしたスキルを持ったITエンジニアが重宝されるでしょう。

必要な人材は社内にいる!

 以上、3つのスキルを紹介しましたが、残念ながらこのスキルを全部持つスーパーマンのような人材は日本企業では皆無と言ってよいでしょう。ではこうしたスキルを持った人材をどのようなアプローチで育成すればよいのでしょうか。

 いずれのスキルもかなりの専門性が必要とされるものであり、一朝一夕に身に付けられるものではありません。しかし実は、ビジネススキルをもった人材はそれぞれの事業部門にいますし、ITスキルを持った人材は情報システム部門にいます。

 一見難しそうな数学的スキルは、実は理系の大学院で研究経験がある人であれば備えていることです。物理学、化学、工学といった分野では自然科学における事象を数式化し、より精度の高いモデルをつくることを研究テーマとしていることが多く、中には計算シミュレーションなどを併用した研究経験を持つ人材もいますので、自然科学の事象をビジネス活動に置き換えるといった応用が可能です。

 これらの人材を企業の幅広い部門から集めて、データ分析の専門チームとして組織化することが、今すぐにでも始められることではないでしょうか。そして、経営企画や事業企画など、企業の戦略により近い部門の中に設置することで、これからの企業競争優位を支える仕組みとなるはずです。

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