「おむつとビール」よりも大切なものがあるビッグデータいろはの「い」(1/3 ページ)

ビッグデータのバンドワゴンに今すぐ乗るかどうかは別として、われわれは企業の既存の情報システムが柔軟性を欠いていることを改めて思い知らされる。加えて、突拍子もないインサイトを得るよりもデータを中心に事業を運営していく企業文化の方が大切であることに気づくだろう。

» 2012年06月20日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「ビッグデータ」の活用が戦略的なITの取り組みとして急浮上している。日々の業務から生み出されるデータを分析することで、経営の見える化を図り、将来起こるであろうことに見通しをつけ、次の打ち手を考える ── 企業における情報活用の取り組みは昔から変わらない。それにもかかわらず、多くの企業が「またバズワードか?」といぶかりながらも軽快なマーチを奏でるビッグテータのバンドワゴンに誘われてしまうのはなぜだろうか。

 市場では大量消費を前提とした21世紀型モデルが揺らぐ一方、TwitterやFacebookのようなソーシャルメディアが登場し、消費者一人ひとりの考えや感情が行き交う。Twitterでは1日に億単位ものつぶやきがあり、Facebookにはわずか1分のあいだに数万というフォトがアップロードされるという。便利になったモバイルデバイスとこうした新しいメディアが結びつくことで、かつて存在したことがない、「個」の気持ちが瞬時に流れる巨大なデジタルインフラが構築されつつある。

 新聞、雑誌、ラジオ、テレビの主要4媒体を凌駕する新しい社会インフラの出現に、「打出の小槌」と飛びつく企業もあれば、長年築き上げたブランドや信用を一瞬で失うのではないかと恐れを抱く企業もある。もちろん「業務のデータでさえ満足に活用できていないのに……」と困惑を隠さない日本企業も多い。

4つの「V」で語られるビッグデータ

 ソーシャルメディアやモバイルデバイスが生み出すデータは既に触れたとおり、膨大かつ多様で、まさに「データ爆発」という表現がふさわしい。こうした新しい技術を前にすると、ビッグデータのバンドワゴンに今すぐ乗るかどうかは別として、われわれは企業の既存の情報システムが著しく柔軟性を欠いていることを改めて思い知らされる。

 ビッグデータの特性はしばしば次の3つの「V」で語られる。

  • 「Volume」(多量)
  • 「Variety」(多様性)
  • 「Velocity」(速度)

 ネットワークに接続されたモバイルデバイスの普及などによって世界のデータ量は指数関数的に増加、2010年にゼタバイトの大台に乗り、2020年には35ゼタバイトを突破するという。それらのデータの多くは動画やテキストのような非構造化データが占める。また、Suicaなどの交通系ICカードを利用している読者なら実感できるだろうが、センサーや無線ICタグはリアルタイム処理を必要とする巨大な情報ストリームを生み出している。

 さらにIBMでは、毎年発行するレポート、Global Technology Outlookにおいて、第4のVとして、

  • 「Veracity」(正確さ)を欠く

 という特性をビックデータが持つことも注意を要すると指摘する。今後、ソーシャルメディアやセンサーが生み出す不確かなデータが急増するに伴い、「2015年には不確かなデータが80%を占めるようになる」からだ。

 データを分析することで、現状を把握し、将来起こるであろうことを予測し、次の一手を考える、という情報活用の原則は変わらないが、ここ数年著しいテクノロジーのブレークスルーは、企業がこうしたビッグデータの特性にも適切に対応し、ソーシャルメディア、モバイル、そしてセンサーなどが生み出す新しいタイプの膨大なデータを経営に生かすも可能にしている。

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