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» 2012年07月23日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:クラウドサービス利用の最新トレンド

市場としては着実に広がりつつあるとみられるクラウドサービス。富士通が先週明らかにしたクラウド事業の現状の話をもとに、その最新トレンドを探ってみたい。

[松岡功,ITmedia]

IaaSとプライベートクラウドが好調に推移

 富士通が7月18日、新たなクラウドサービスを発表する際に、自社のクラウド事業の現状について明らかにした。興味深い話だったので、まずはその内容を紹介したい。

 富士通の山中明執行役員常務 富士通の山中明執行役員常務

 会見を行った山中明執行役員常務ソフトウェアインテグレーション部門長によると、国内のクラウドサービス市場は2012年から2015年まで19%の年平均成長率(総務省のデータ)を示すとみられる中、富士通のクラウド事業は2011年度のグループ売上高で前年度比3倍の約1000億円を達成。順調に推移したという。

 ちなみに富士通のクラウド事業は、企業内システムに対してはプライベートクラウドとパブリッククラウド、社会システムに対してはパブリッククラウドを用意し、それらをインテグレーションするハイブリッドクラウド利用も合わせて、幅広いソリューションニーズに対応している。売上高1000億円はこれらの事業領域全体と、関連のハードウェアやソフトウェアなども含めたものである。

 山中氏は、売上高におけるプライベートクラウドとパブリッククラウドの内訳については公表しなかったが、「とくに好調に推移しているのは、パブリッククラウドにおけるIaaSとプライベートクラウド」と語った。

 富士通のIaaSは「Fujitsu Global Cloud Platform / S5」(以下、FGCP/S5)と呼ばれるもので、同社独自の技術基盤により、世界6拠点から信頼性の高い日本品質のサービスを提供しているのが売りだ。

 山中氏によると、2011年度を終えた時点での顧客におけるFGCP/S5の適用業務領域は、「新事業用インフラ」が49%、「企業内フロント業務」が37%、「企業内基幹系」が14%といった比率になった。「ほぼ5割を占める新事業インフラについては、スピードと柔軟性を重視する顧客が多い。一方、企業内フロント業務については、CRMやWeb会議などが活性化して前年度比3.8倍に急増した」と同氏は話す。

 また、2011年度のクラウド事業ではBCP(事業継続計画)対策についても、緊急連絡や安否確認サービスが前年度比4.4倍、リモートバックアップサービスが同3倍と急増したという。

最新トレンドとして見えてきた4つの方向性

 こうした状況から、山中氏はクラウド利用の最新トレンドとして、4つの方向性が見えてきたという。

 まず1つ目は「クラウドの利用目的はコストから迅速性および拡張性へ」。クラウドサービスの利用に向けては当初、コストを軽減したいというニーズが高かったが、最近では事業やサービスをいち早く立ち上げたいという要望が急増しているという。

 2つ目は「エンタープライズの重点領域は“現場系”にある」。現場系とは、売り上げ拡大、商品力や顧客サポートの強化につながる業務で、「そうした現場系こそクラウドの威力が発揮されつつある」(山中氏)としている。

 3つ目は「経営革新や事業拡大に直結する分野で活用が進む」。この点については、先に紹介したFGCP/S5の適用業務領域の動向が根拠となっている。

 4つ目は「コンシューマーからエンタープライズ、そしてソーシャルへ」。クラウドの利用は、当初コンシューマー向けから始まったが、それが今ではエンタープライズに浸透し、これからは本格的にソーシャル、つまり社会システムへと広がっていくとしている。

 こうして4つの方向性を説明した山中氏は、「クラウドは新たなICT環境として着実に根づいてきている。これを活用していかに新しいビジネスを創出していくかが、これからの私たちの使命となる」と、自ら言い聞かせるように語った。

 中山氏が語った4つの方向性は、クラウドベンダーとしての意図が含まれているにせよ、概ねクラウド利用の今後のトレンドを示唆しているのではないか。こうしたトレンドを認識しておくことは重要だと考える。

 ただ、1つ気になるのは、富士通のクラウドサービスを利用する顧客は大手企業が多いとみられることから、こうしたトレンドが中小規模の企業でも当てはまるかどうかだ。

 総務省が7月17日に公表した「2012年版情報通信白書」によると、大企業では一部利用も含めて約4割がクラウドサービスを利用しているが、中小企業は同じ条件で26%ほどにとどまる(図参照)。本来、クラウドがもたらすメリットは、大企業よりもむしろ中小企業のほうが大きいとみられていたが、現状はその利用率とともに利用トレンドにも、相当の“温度差”があるように思えてならない。今後のICT業界にとっての大きな課題になりそうだ。

 クラウドサービスの利用状況(出典:総務省「2012年版情報通信白書」) クラウドサービスの利用状況(出典:総務省「2012年版情報通信白書」)

 クラウドサービスの最新動向ということで最後にもう1つ。7月21日付けの日経新聞が、宅急便のヤマトホールディングスが今月中にも企業を対象に低価格のクラウドサービスを始めると報じた。その記事によると、グループ企業が持つデータセンターの空いた設備能力を活用し、他社の同様のサービスより価格を15%割安にするという。宅急便事業で培った情報管理技術を新事業に生かすとしている。

 プライベートクラウドを活用するユーザー企業が、自らクラウドサービスに乗り出すことは以前から予想されていたが、いよいよ現実化してきた格好だ。流通・小売業界で話題になっているプライベートブランド化が、クラウドサービス市場でも進展しそうな予感がある。このビジネスの大きなポテンシャルを感じる動きであるとともに、市場はますます激戦区となりそうだ。

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