SAPジャパン流のBring Your Own Device手段の1つでも本格的(1/3 ページ)

企業ITのトレンドの1つになった「BYOD」。企業への訴求に熱心なベンダーもあるが、ベンダー側はBYODをどのように考えているのか――。SAPジャパンでの取り組みを聞いた。

» 2012年08月02日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 個人のスマートフォンやタブレット端末、携帯電話などを仕事に利用する「BYOD(Bring Your Own Device)」が企業ITトレンドの1つになっている。社員にとっては使い慣れた機器や使ってみたい最新の機器で効率的に仕事ができ、企業側では社員に支給する機器などのコスト削減や働きやすい環境を提供できると、ITベンダー各社のユーザー企業に対する訴求も活発化。ユーザー企業でも関心が高まりつつあるといわれる。

 だが、BYODはユーザー企業にこうしたメリットを本当に提供するの、ITベンダーはBYODをどのように捉えているのか――注力ビジネスの1つにモバイルソリューションを掲げるSAPジャパンが、同社でのBYODへの取り組みについて説明した。

コスト削減は幻想

 SAPではERPをはじめとした業務アプリケーションのモバイル版を120種類以上(日本語対応は30種類以上)リリースし、モバイル端末を企業で集中管理するための「Mobile Device Management(MDM)」や、モバイル版アプリの管理や端末への配信を行う「Mobile Application Management(MAM)」、開発環境などの製品を提供している。

 ERPでおなじみの同社がモバイルに注力することに、違和感を覚えるユーザー企業は少なくないという。この点についてモバイルソリューション部長の井口和弘氏は、「コンシューマー市場で人気を集めるスマートフォンのような新しい機器を企業側が無視するのは難しい。むしろ取り込むことでメリットを得ていく方が良いという見方もできる」と話す。社員がスマートフォンを日常的に使うようになれば、企業としては対応を取らないわけにはいかなくなるという。

 そこでモバイル導入を考える場合に、PCと同様に機器を会社が購入して社員に支給するか、BYODにするかという大きく2つの選択肢が生まれる。いずれの場合でもモバイル環境に応じた業務システムやネットワークの整備、セキュリティ対策の構築が伴うが、BYODなら会社で機器を購入しない分、コストを抑えられると考える企業が多い。

 「しかし、BYODでは会社支給のケースよりもセキュリティなど多くの対応が必要になるのでコストが増える。結果的にほとんど同じか、少しだけ減るくらい。それよりは働くための選択肢を広げて、より良い仕事ができる環境を作ると考える方がメリットは大きい」(井口氏)。同社におけるBYODは基本的に「働き方の1つ」という位置付けである。

 モバイル活用でのセキュリティ対策は、盗難や紛失での端末の悪用を防ぐ、遠隔操作で重要なデータを削除したり暗号化して簡単には使えないようにしたりというものが主流だ。BYODでは端末内部に社員のプライベートな情報やアプリケーションと、業務のための機密情報やアプリケーションが“同居”することになるため、より複雑な対策の導入と運用を伴う。

 「端末の管理以上に重要なのがデータの管理だ。まずはデータを漏えいさせないこと、その上で社員のプライバシー情報とビジネス情報を適切に切り分けて管理しないといけない」(井口氏)

 さらに技術的な面だけでなく、人事や法務、総務などの部門と連携して制度面や運用面の整備も必須になる。国や地域によっては厳しい法律や規制が存在しており、社員が会社を訴えるリスクもあるという。

SAP全体でのモバイル機器の導入状況
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