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» 2012年08月30日 08時10分 UPDATE

松岡功のThink Management:動き出したタレントマネジメント市場

今回は、ここにきて注目度が高まっている「タレントマネジメント」にフォーカスしてみたい。

[松岡功,ITmedia]

タレントマネジメントが注目される理由

 「タレントマネジメント」という言葉がここにきて注目を集めている。タレントマネジメントとは、従業員が持つ能力(タレント)やスキルなどの情報を、企業がデータベース化して一元管理し、戦略的な人材配置を行うための施策のことである。

 人事管理の一種であり、これまでの人事システムで保有してきた住所や年齢、学歴や職務履歴などの情報に加えて登録し、活用するものだ。

 企業がタレントマネジメントに取り組む目的としては、大きく次の3つが挙げられる。

 1つ目は、それぞれの部門や役職に求められる適性にマッチした人材を、社内から迅速に探し出すことだ。これにより、個々の人材の能力やスキルを生かして、それぞれの部門の生産性を向上させたり、新規のプロジェクトを素早く立ち上げて事業を開拓したりすることができるようになる。

 2つ目は、個人の適性やキャリアアップに沿った役割を用意し、能力や意欲を引き出すことだ。これにより、人事考課の方針を明確にでき、優秀な従業員の離職防止などにもつながる。

 3つ目は、潜在能力の高い人材を素早く見つけ出し、特別なプログラムに沿って育成していくことだ。これを戦略的に行えば、例えば熟練の技術者が離職した場合でも、後任に相応しい人材をすぐに登用できるようになる。

 このタレントマネジメントをITで支援しようという動きが、ここにきて活発化している。とくに従業員数が多い大手企業にとっては、ITを活用したタレントマネジメントが武器になりつつある。共通指標を用いて、全従業員を対象に多角的な分析が可能になるからだ。

 なかでも事業をグローバルに展開し、海外で現地従業員を大量に採用したり、M&A(合併・買収)で海外の企業を取り込んだ企業からの要望が高まっていることが、タレントマネジメントへの注目度を押し上げる大きな要因となっているようだ。

 これを支援するITの仕組みとしては、ERPパッケージや人事システムとデータ連携する専用のシステムをはじめ、最近ではクラウド型サービスが利用されるケースも目立ってきている。

SAP、Oracle、IBMが相次ぐ買収で本格参入

 そんなタレントマネジメント機能も併せ持つ人材マネジメントシステム「Rosic(ロシック)」を提供するインフォテクノスコンサルティングが8月29日、同システムの機能強化を発表した。

 会見に臨むインフォテクノスコンサルティングの勝又愛仁社長 会見に臨むインフォテクノスコンサルティングの勝又愛仁社長

 Rosicでは従来、人材データの一元化・可視化や分析の機能が提供されていたが、今回新たに人事業務の付加価値向上と経営への貢献を支援する「人件費分析・シミュレーション」の機能が追加された。

 この新機能も含めて従来の人事システムの枠を越え、経営戦略や現場のマネジメント、さらには従業員の活性化を目的にしているのが、このパッケージの最大の特徴である。

 10年前から改良が重ねられてきたRosicは、これまで本田技術研究所、旭化成、カルビー、ヨドバシカメラなど各業界を代表する企業の導入実績もあり、今後なお一層、日本企業向けに開発されたタレントマネジメント用の国産パッケージとして注目を集めそうだ。

 同日行われた発表会見では、同社の勝又愛仁社長のこんな発言が印象に残った。

 「ヒト・モノ・カネの経営資源のうち、情報形態として最も複雑なのはヒト。人材資源の可視化はいくつもの軸を重ね合わせて行う必要があるが、そこからさまざまな情報が見えてくる」

 Rosicには国産のソフトウェアとしてぜひとも存在感を発揮してほしいところだが、タレントマネジメント市場はこれから激戦区になる可能性が高まってきた。というのは、SAP、Oracle、IBMといったグローバルITベンダー大手がここにきてこぞってこの分野に注力し始めたからだ。

 SAPとOracleはもともと自社のERP製品と連携した形で人事システムを展開してきたが、それに加えて、SAPは昨年12月に米SuccessFactorsという企業を34億ドルで買収すると発表。Oracleも今年2月に米Taleoという企業を19億ドルで買収すると発表した。そして、さらに今週27日にはIBMが米Kenexaという企業を13億ドルで買収すると発表した。

 3社が買収に乗り出した企業に共通するのは、タレントマネジメント用ソフトウェアをクラウド型サービスとして提供していることだ。日本ではSAPジャパンがすでにこのサービスを展開しており、今後、日本オラクルと日本IBMも追随するとみられるが、そうなると先に述べたようにグローバル企業のニーズが強いことからも、クラウド型サービスが一気に主流になる可能性がある。

 いずれにしても、SAP、Oracle、IBMが本格的に動き出したことで、タレントマネジメント市場が活性化するのは間違いないだろう。

 ただ、筆者はこのタレントマネジメントに注目し始めてから、かつて懇意にしていた大手企業のCIOから聞いた言葉が頭から離れないでいる。それは「人事をITに頼りすぎると、どこかで必ず血が通わなくなる」というシンプルだが深いメッセージだ。人事システムの活用を否定するものではないが、ヒトを扱うだけに運用面で思わぬところに落とし穴があることを言いたかったのか。この問題意識を胸に秘めて、タレントマネジメントについてはいずれ詳細な事例取材をしてみたい。

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