東北で導入が進む自治体クラウドのこれからクラウド ビフォア・アフター(1/3 ページ)

東北各地で自治体クラウドへの円滑な移行と民間事業者の参入による経済波及効果が期待されている。そこで今回は、これまでの自治体クラウドの取り組みを整理するとともに、東北の被災地における自治体クラウド導入の現状と今後の展開について解説する。

» 2012年09月27日 12時00分 公開
[林雅之,ITmedia]

 自治体クラウドは、クラウド技術を電子自治体の基盤構築に導入して、情報システムの効率的な整備や運用、そして住民サービスの向上などを図ることを目的としているものである。

 全国には約1700の市町村があるが、団体ごとに情報システムを構築し運用保守することが財政的に困難な自治体が多い。クラウド導入による情報システムの集約と共同利用、システムのオープン化や標準化による地域全体でのコスト負担の軽減や業務の効率化、災害に強い情報システムの構築、さらには住民への効率的な行政サービスの提供などが期待されている。

 総務省地域力創造グループ地域情報政策室によると、自治体クラウドの導入は1割を超えているという。

総務省のこれまでの自治体クラウド推進の取り組み

 政府のこれまでの自治体クラウド推進に向けた取り組みについて紹介する。

 自民党は2009年2月23日に総務省 ICTビジョン懇談会が公表した緊急提言「ICTニューディール」、および2009年3月17日の「デジタル日本創生プロジェクト(ICTは鳩山プラン)」、2009年4月9日に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が発表した「デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜」で、総務省の電子政府や電子自治体の推進に当たって、クラウドコンピューティングなどの技術を積極的に活用する方向性を示している。

2009年:自治体クラウド導入の検証

 総務省は自治体クラウドの推進に向けて、2009年度から2年間、北海道、京都府、佐賀県、徳島県、大分県、宮崎県の6道府県78市町村が参加する「自治体クラウド開発実証事業」を実施している。

 総合行政ネットワーク(Local Government Wide Area Network、以下「LGWAN」)上で北海道、京都府、佐賀県の3つのデータセンターを利用し、住民基本台帳など基幹系の情報などを集約し、自治体クラウドの標準化による経済性、可用性、拡張性、バックアップ、業務改善などの検証を行っている。総務省はこれらの開発実証でプロセスや結果から明らかになった事項などを踏まえ、2009年度版、2010年度版「自治体クラウド開発実証に係る標準仕様書」を作成している。

 総務省が2012年9月11日に公表した「自治体クラウドの導入に関する調査研究報告書」では、平均21%、最大30%の費用削減効果や、自治体間の連携の強化などの成果が報告された。自治体クラウド開発実証の取り組みを通じて、2012年3月時点で30市町村が自治体クラウドを本格稼働している。

2010年:自治体クラウド推進のための体制整備

 総務省は2010年5月6日、当時の原口一博総務大臣が「原口ビジョン2」を公表し、自治体クラウドの2020年の成果目標を示した。自治体クラウド導入などによる業務改革を通じて、2015年までに情報システムなどへの経費の30%(1200億円/年)以上を削減し、より効率的な電子自治体の基盤構築への再投資などを通じて地域主権型社会を構築することを示している。

 2010年5月17日に公表した「スマート・クラウド研究会報告書」の「スマート・クラウド戦略」では、クラウドサービスの利活用戦略における自治体クラウドの推進を大きな柱としている。

 2010年7月30日には、省内横断的に自治体と協力して自治体クラウドの取り組みを推進するため、「自治体クラウド推進本部」を設置。同本部に有識者懇談会が設置され、自治体クラウドの全国展開に向けた検討が行われている。2011年7月7日には、「自治体クラウド推進本部有識者懇談会とりまとめ」を公表し、クラウドサービスを提供する際の提供主体や住民データのプライバシー確保やセキュリティ、システム構成、相互運用性の確保、SLAや計画策定や財政支援といった推進方策などが示されている。

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