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» 2012年10月31日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:プロダクト事業の行く末(第2回)

富士通のプロダクト事業が厳しい。現状打破に向けたビジネス戦略を探る。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 富士通のプロダクト事業は厳しい環境にある。ハードウェアは単価の下落と企業のIT投資抑制で、売り上げが伸び悩んでいる。ミドルウェアは主な用途であるシステムインテグレーション(SI)の大型案件が減り、単品ビジネスが難しくなりつつある。事業の成否のカギは垂直統合にありそうだ。第2回はプロダクト事業から、富士通の将来を探ってみる。(第1回:サービス事業に活路を求める富士通

クラウドはソフトの塊

 2012年4月、ミドルウェア部隊とクラウドサービス部隊を一体にしたビジネスユニット「ソフトウェアインテグレーション」が誕生した。担当の山中明執行役員常務は「パブリッククラウドのビジネスをグローバルに展開し、より大きな事業に育てる」と意気込む。

 富士通には、2つのパブリッククラウドがある。1つはオンデマンド仮想システムサービスを発展させた「FGCP/S5」、もう1つは2011年8月から提供を開始したマイクロソフトのAzureをベースにする「FGCP/A5」である。2011年末までに国内2カ所、海外5カ所からデータセンターにクラウドサービスを提供したのを契機に、インフラサービス部隊からミドルウェア部隊に移管した。競合のクラウドサービスとの差異化も鮮明にする。BtoB向けの高信頼なサービスを、グローバルに均一に提供することだ。「Amazonがアグレッシブだ。当社が同じ土俵で勝負するのは容易なことではない」(山中常務)。価格競争に巻き込まれないためでもある。

 だが、ミドルウェア事業にとって、クラウドサービスはランセンス販売のチャンスを奪う強敵のように思える。それでも、サービス提供への流れを食い止めるのは難しい情勢にあると判断、ソフトをサービス提供する道を開拓することにした。「クラウドはソフトの塊。S5はミドルウェア部隊が開発した」(山中常務)という実績もある。

 山中常務によると、クラウドサービスは1つ1つのミドルウェア(ソフト部品)の組み合わせを前提に開発するので、構成するソフト部品はそれにフィットしたものに仕立てる必要もある。クラウドサービス部隊と一体にしたことで、そうした要望をソフト部品開発に取り込みやすくなる。

困難になってきた単品販売

 組織を一体化した、もう1つの大きな理由がある。ミドルウェアの位置付けが変わってきたことだ。最大の需要先である国内の大型SI案件が減少し、「(ミドルウェア)単品の商売が成り立たなくなってきた」(山中常務)。これまでは、国内のSIビジネスを伸ばすためのミドルウェアだったので、「SEありきの商品になっていた」(同)。分かりやすく言えば、開発した1つ1つのミドルウェアを、フィールドでインテグレーションするということである。

富士通 プロダクト事業の売り上げ推移(単位:億円) 富士通 プロダクト事業の売り上げ推移(単位:億円)

 だが、その需要が減ってきている。ミドルウェア事業の拡大には、国内外のパートナー企業との販売協業が欠かせなくなっている。問題は、欧州など海外市場は国内と異なり、大きなSIビジネスが存在しないこと。つまり、大量のSEがいないので、使いやすい、分かりやすい商品にしなければ、海外市場では売れないということだ。

 SIビジネス向けに開発した商品は、パートナー企業が売りづらい。2009年4月に100%子会社したドイツの富士通テクノロジー・ソリューションズ(FTS)に、資源管理ソフトの販売を提案した際、FTSが分かりづらい」「使いづらい」などと問題点を指摘してきた。そこで、「サービスやシステムの提供形態を考えて、1つ1つのソフト部品を開発する」(山中常務)ために、ハードやソフトの状況を自ら判断し、より簡単、安心に使えるよう最適化を図る富士通の独自技術(スマートソフトウェアテクノロジーと呼ぶ)を開発に取り入れた。

欧米ITベンダーと手ぶらでは組めない

 システムプロダクトビジネスを担当する豊木則行執行役員常務は「サーバ、ストレージも開発し続ける。手を抜くことはない」と強調する。ソフトと同様に、ハードも国内SIビジネスを支える一方、テクノロジーベンダーの地位を確保する重要な商品である。「欧米ITベンダーと手ぶらでは組めないので、テクノロジーはきちんと押さえる」(同)。すべてのハードやソフトを自前で揃えるのは難しいので、それを補完する商品や技術を調達するということだろう。

 富士通は垂直統合した商品開発にも力を入れる考えだ。狙いは、システム構築の期間短縮と費用削減にある。1つ1つのハードやソフトを選んで組み合わせていたら、その都度、テストを繰り返すなど稼働までの時間がかかり、コストも高くなる。ITベンダーの本音は総取りにある。ハードやソフトの単品で勝負するのではなく、セット商品に仕立てて各部品のシェアを伸ばし、売り上げを増やす作戦である。

 IBMが今年4月に発表したサーバやストレージ、ネットワークなどを統合したシステム製品「IBM PureSystems」や、オラクルのデータベースマシン「Oracle Exadata Database Machine」などが当面のターゲットになりそうだ。かつての大型メインフレームのように、ハード部隊とミドルウェア部隊が一緒になって開発に取り組み、まずはExadataの対抗商品を2012年末から2013年早々に発売する計画。海外市場で戦うためにも、欠かせない商品になるだろう。

 豊木常務は「プロダクト単体でも戦えるようにする。来年には次世代のUNIX機を出す。IBMに、UNIX市場すべてはやらない」と強気だ。

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