富士通がソフトウェア事業を説明――海外勢に挑む

富士通がソフトウェア事業戦略を説明した。海外のIT大手がソフトウェア分野に注力する状況で、国内勢としての同社の取り組みを示した。

» 2011年09月16日 19時03分 公開
[國谷武史,ITmedia]
山中明 執行役員常務

 富士通は9月16日、ソフトウェア事業戦略に関する記者会見を開いた。海外のIT大手各社がソフトウェア事業に注力する状況を受けて、同社におけるソフトウェア事業の位置付けや今後の展開を示し、事業規模を3年後に現在の3〜4倍に引き上げるとの方針を明らかにした。

 会見の冒頭、ソフトウェア ビジネスグループ長 執行役員常務の山中明氏は、「ソフトウェアは富士通の成長戦略で重要な位置付けにある。この市場はIBMやOracle、Microsoft、SAPなど、海外の巨人ばかりという印象があるが、富士通としての具体的な取り組みを多くの方々に知っていただきたい」と会見の主旨を説明した。

 同社は、主力のシステムサービス事業やハードウェア事業に加え、近年はクラウド関連事業への進出にも積極的。山中氏によると、こうした状況でソフトウェア事業については、その取り組みが見えづらいという声が多方面から寄せられたといい、今回の説明の場を設けたとしている。

ソフトウェアは“基盤”

 現在のソフトウェア事業の主な領域は、「ソリューション/SI」「プラットフォーム」「クラウド」で、ソリューション/SIにおける国内での売り上げが事業の多くを占めるという。プラットフォームは、サーバやストレージの製品価値を高めるという位置付けで、クラウドもサービスを含めたビジネス全体の基盤を担う存在だという。

 「ソリューション/SIではSOA(サービス指向アーキテクチャ)やITILベースの信頼性がプライベートクラウドの構築ニーズに合致している。プラットフォームでは仮想化に伴うシステム統合での引き合いが強い。クラウドは一番の成長領域で、IaaSからPaaSに軸足を移しつつある」(山中氏)

富士通のソフトウェアポートフォリオ

 ソフトウェアのポートフォリオは、自社開発の製品を主体としているが、必要に応じてパートナー製品やオープンソースソフトウェアも活用。これをタイムリーに顧客に提供することが、同社の強みという。山中氏は「国内でこれだけの規模を持っているのは当社だけだろう。海外ならIBMが豊富なポートフォリオを持っているが、彼らにはまだまだ及ばない」と述べている。

 2007〜2010年のソフトウェア製品の導入実績は、国内が1万2000社、海外が2100社。海外市場で大規模企業顧客を多数獲得しているが、「一般に海外のソフトウェア市場規模は日本の10倍と言われ、それなら12万社以上の導入実績がないといけないので、海外を広げていく」(山中氏)とした。

 製品戦略では、「ユーザー企業の業務に適したラインアップ」「すぐに導入、利用できる」「どこにも適用できる」という特徴を打ち出す。ソリューション/SIにおける個別開発で培った技術やノウハウの体系化、パッケージ化し、クラウドやオンプレミスに柔軟に対応できる製品や、ハードウェアとソフトウェアを統合した商材も展開する。

 このほか、2011年度中に「グローバルソフトウェアセンター」を設立する計画もあるという。ソフトウェア製品の国内での開発を継続しつつ、グローバルソフトウェアセンターが海外向けの販売やマーケティングなどの活動拠点になる見込みだ。

ミドルウェアを基軸に

新田将人 ミドルウェア事業本部長

 製品展開の中では特にミドルウェアが重要な位置を担うとしている。ミドルウェア製品の取り組みについて、ミドルウェア事業本部長の新田将人氏が説明した。

 新田氏は、同社のミドルウェアが顧客企業へのシステムサービスで成果を上げていると、事例を披露した。あるプライベートクラウドの構築ではSystemwakerやServerViewブランドのミドルウェアによって、サーバの調達期間を3カ月から5日に短縮し、調達コストを70%削減した。

 また、全国にある100台のデータベースを1台に集約するというプロジェクトではSymfowareを利用して、他社製品を利用するよりも3倍高い集約効果を上げたとしている。新旧の複数のJavaアプリケーションを統合するというケースでは、Infostageの活用でコストを抑制しながら1台のサーバで統合運用できる仕組みを実現した。

 山中氏が製品戦略の中で「すぐに導入、利用できる」とした特徴についても、新田氏は「スマートテクノロジー」というコンセプトで実現しているとした。Symfowareではサーバ導入時の設定工数の削減や、異常検知の自動化と容易なリカバリ、Interstageでは高負荷時における安定性維持を、それぞれ可能にしているという。

“ビッグデータ”活用のソフトウェア技術でも海外勢に引けを取らないという

 大規模データの処理については、同社が2011年度第4四半期に開始すると8月に発表したPaaSサービスの「コンバージェンスサービス・プラットフォーム(CSPF)」において、ミドルウェアがサービスの重要な部分の多くを担っている。また、分散キャッシュ技術によって大規模データの長期保持を可能にするという「Interstage XTP(仮称)」を2011年度下期に、インメモリデータベース製品の「Symfoware Server」を2012年度上期に投入するとしている。

 なお、山中氏は、ソフトウェア市場における同社の現状を「IBMなどに比べれば規模は10分の1ほどだが、利益率の高さをみても善戦している」と述べた。エンタープライズ向けやクラウド向け製品については、海外勢と肩を並べる規模のポートフォリオを実現しているという。

 だが、コラボレーションやエンタープライズコンテンツ管理製品は、同社単独では難しいとしており、市場動向をみながらパートナー製品の活用などで対応する。ポートフォリオ強化にM&Aなどの方法も常に検討しているが、現状では「日々、慎重に検討している状況」(山中氏)とした。

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