富士通、ビッグデータを活用するためのPaaSを発表

大容量データの蓄積・分析やリアルタイム処理が可能な「コンバージェンスサービス・プラットフォーム」を提供する。

» 2011年08月30日 19時44分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通は8月30日、多種・大量のデータ(ビッグデータ)を活用するためのPaaS「コンバージェンスサービス・プラットフォーム(CSPF、仮称)」サービスを2011年度第4四半期に開始すると発表した。ビッグデータ市場の拡大を狙うとしている。

 CSPFは、ビッグデータのリアルタイムもしくはバッチによる処理、データの統合、分析、利用のための技術やリソースをサービスとして提供する。ユーザー企業は、自社のシステムやデータベース、センサーネットワークで収集したビッグデータを富士通のデータセンターに送り、利用目的に応じて分析したり加工したりできる。サービス詳細は検討中だが、ぺタバイトクラスのデータにも対応できるといい、小量データなら数百円程度から利用できる見込みだ。

コンバージェンスサービス・プラットフォームの概要(左)と技術特徴

 当初のサービスは「先行版」という位置付けで、情報の収集や検知、統合、開発支援、運用管理などのメニューを予定。APIによる連携方法や開発環境の整備も進める。2012年度第2四半期にリリースする「バージョン2」で、情報の活用や分析、交換といった利用のためにメニューを提供するという。活用するデータを、ユーザー企業のアプリケーション、もしくは、6月に発表した「SPATIOWL」など富士通が提供するサービスと連携させる形態や、分析したデータを有償で外部に提供する形態も検討する。

川妻庸男 執行役員常務

 事業を担当する執行役員常務の川妻庸男氏は、CSPFについて、多店舗展開する小売企業がビッグデータから顧客の好みを分析して事業戦略に生かすといったものから、位置情報や時間情報、人間の特性などの分析結果を組み合わせて公共サービスを提供するといった用途まで、多種多様な情報サービスに対応できると説明。

 当面は、既にビッグデータを日常的に収集・蓄積している金融などの一部業種での本格利用を見込んでおり、川妻氏は将来的に高度な情報サービスを提供する「スマートシティ」の基盤になることも期待して、ビッグデータを活用する市場の開拓に注力する考えを示した。

現実世界とクラウドをつなぐ

 CSPFの発表の場では技術概要も紹介された。開発を指揮するコンバージェンスサービスPF開発統括部長の藤田和彦氏によれば、CSPFのコンセプトは「現実社会を映し出す情報の流れを一元的に制御する」といい、これの実現に必要な技術を富士通研究所らと共同で開発している。

藤田和彦 コンバージェンスサービスPF開発統括部長

 「ビッグデータに“5W1H”のような視点に基づいて位置や時間、人・モノの属性などのタグを付け、用途に応じたコンテキスト(文脈)を抽出して、活用する。人が求める情報をコンピュータで導き出せるようにしたい」(藤田氏)。また川妻氏は、「例えば、製造設備の保守では経験豊かな技術者がわずかな変化を感じ取り、具合を判断する。システムがこれを再現できるわけではないが、その状態を数値や分析で分かるようにできれば、若手技術者の育成に活用できるだろう」と述べた。

 まず入力されるビッグデータについては、状態遷移モデルを基にした「並列イベント・ストリーム処理技術」を用い、定義されたルールに従って制御に必要な処置をリアルタイムに実行する。また、ビッグデータの統合などでは、外部システムやファイルデータベース、リレーショナルデータベースに加え、「格納庫」と呼ぶ独自のデータベースを利用する。格納庫は、情報をファイルの状態でカテゴリ別に登録しておき、分析などの際に安定した性能で情報を取り出せるのが特徴という。

例えば、店舗では来店客の特徴や行動状況、販売管理といった多様なデータを分析して、売り上げを伸ばす施策の立案などに役立てる。こうした仕組みを自社で構築するのは、データ利用のノウハウも含めて苦手とする企業が多く、富士通は仕組み自体をサービス化した

 情報分析では、Hadoopの分散ファイルシステムと並列分散処理を活用して、短時間でユーザーが必要とする結果を導き出せるようにした。また、分析などを行った情報はマッシュアップなどを利用して、高度な情報サービスに展開できるようにもしている。CSPFはマルチテナントで運用されるが、同社ではユーザーが希望するセキュリティを確保した上で、各テナントが持つ情報を相互に交換して付加価値を生み出せる仕組みも検討しているとのことである。

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