苦心が見えた日本HPのUNIXサーバ事業戦略Weekly Memo

日本HPが先週、UNIXサーバ事業における新たな戦略展開を発表した。そこには同社ならではの苦心が垣間見えた。

» 2012年12月03日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

成熟期に入ったオープン系サーバ市場

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が11月28日、UNIXサーバ事業における新たな戦略展開を発表した。具体的には、OSにHP-UXを搭載したUNIXサーバ「HP Integrityサーバ」のラインナップを一新するとともに、HP-UXサーバをOEM供給する国内ベンダー各社のパートナーと「HP-UXテクノロジー・コンソーシアム」を設立した。

 HP Integrityサーバの新製品は、HPの最新テクノロジーとインテルItaniumプロセッサ9500製品ファミリー搭載により、前世代製品と比べて最大で3倍の性能向上と21%の低消費電力を実現。これにより、ユーザーメリットとして約30%のTCO削減を図ることができるとしている。

 会見に臨む日本HPエンタープライズインフラストラクチャー事業統括ビジネスクリティカルシステム事業本部の手島主税事業本部長 会見に臨む日本HPエンタープライズインフラストラクチャー事業統括ビジネスクリティカルシステム事業本部の手島主税事業本部長

 さらに詳しい新製品の内容については、すでに報道されているので関連記事等をご覧いただくとして、ここでは日本HPのHP-UXサーバ事業戦略、およびその一環であるHP-UXテクノロジー・コンソーシアムの設立に焦点を当ててみたい。

 発表会見の冒頭では、日本HPエンタープライズインフラストラクチャー事業統括ビジネスクリティカルシステム事業本部の手島主税事業本部長がまず、IDC Japanの調査結果をもとにHP-UXサーバが国内のUNIXサーバ市場で11年連続トップシェアを獲得し、2012年第2四半期でも34.7%を占めていると説明。さらに2010年に発売した前世代の「HP Superdome 2」が好調で、「過去10年にわたって販売してきた第1世代製品の販売台数を上回り、幅広い分野の企業のミッションクリティカルなシステムを支えている」と強調した。

 ただ、手島氏はその一方で、UNIX/Linux/Windowsを合わせたオープン系サーバの国内市場が2011年を境に成長期から成熟期へと移行したとの見方を示した。これは同市場が2011年以降、出荷金額ベースでマイナス成長が続くとのIDCの見通しを受けたものでもある。

 こうした状況から、同氏は今後のシステムのあり方として、「これからはユーザーに多くの負担を強いるスクラップ&ビルド型システムから、投資資産を最大限に活用しながら新技術をタイムリーに利用できる持続的成長型システムが求められる時代になる」との見解を示した。

 そこで同社がHP-UXサーバ事業戦略として新たに打ち出したのが、HP-UXサーバを持続的成長型システムのプラットフォームと位置付けて開発投資していくことと、「Working Together」をコンセプトとしてユーザーやパートナーの声を製品開発に反映していくことである。ちなみにHP-UXの開発については、インド・バンガロールの開発拠点でおよそ1000人のエンジニアが携わっているとし、HPとしての開発投資の盤石ぶりを強調した。

HP-UXサーバの継続的な強化をコミット

 そして日本HPならではの新たな取り組みとなるのが、「Working Together」をコンセプトとしてユーザーやパートナーの声を製品開発に反映していくことを目的としたHP-UXテクノロジー・コンソーシアムの設立である。

 手島氏は「多様化するユーザーニーズを製品開発へ迅速に反映すべく設立した。米HP本社やインドのHP-UX開発部門を巻き込んだ日本発のグローバルな取り組みだ」と強調した。

 同コンソーシアムではHP-UXサーバをOEM供給する国内ベンダー各社と連携し、HP-UXの品質や機能の改善活動、最新情報の共有や技術交流、共同評価や検証などを実施していくとしている。現時点では日本HPのほか、日立製作所、三菱電機インフォメーションテクノロジー、NEC、沖電気工業の4社が加盟している。

 さらに、今後は同コンソーシアムを手始めとしたHP-UXコミュニティ活動を販売パートナーやユーザーなどにも広げ、「ミッションクリティカル環境での長期にわたる安定的なHP-UX利用をサポートしていきたい」(手島氏)としている。

 同コンソーシアム設立の説明を聞きながら、日本HPの狙いという観点から2つのポイントがあるのではないかと感じた。

 まず1つは、ユーザーやパートナーに対してHP-UXサーバ事業の継続的な強化をコミットしたことである。とりわけユーザーにとっては、UNIXサーバ市場が縮小傾向にある中で、HP-UXサーバを使い続けて大丈夫か、という不安がつきまとう。同社は今回、開発投資にも言及しており、ユーザーのそうした不安を払拭したいとの強い意図がうかがえる。

 もう1つは、HPグローバルへの日本HPの発言力アップである。とりわけ同コンソーシアムに加盟したOEMパートナー4社の声は、日本HPとしてもHPグローバルに対して影響力の大きい発言になりうるだけに、これまで個々の要望だったものをコンソーシアムとしてまとめれば、さらに発言力が増すのではないか。それがHP-UXコミュニティ活動としてユーザーなどに広がれば、なおさらだろう。

 ただ、この2つのポイントは、裏を返せば日本HPにとって、これまで懸念すべき点だったはずだ。同コンソーシアムの設立は、それを解消しようという苦心の策ともいえる。手島氏が語った「米HP本社やインドのHP-UX開発部門を巻き込んだ日本発のグローバルな取り組み」に大いに注目しておきたい。

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