2013年新春インタビュー

Will to Winの精神 日本HP・小出社長2013年新春特集 「負けない力」(1/3 ページ)

PC、サーバベンダーとのイメージが根強いHP。しかし、近年ではハードウェアはもとより、ソフトウェア、ソリューション、コンサルティングといった「フルポートフォリオ」を掲げる。日本のIT市場で同社が目指すものとは何か。小出伸一社長に聞く。

» 2013年01月07日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]

 Hewlett-Packard(HP)と言えば、「PC最大手」「x86サーバの雄」といったイメージが根強い。だが近年は、クラウド、ビッグデータ、セキュリティをテーマに「フルポートフォリオ」による戦略を掲げる。2013年の国内IT市場で戦う同社の力を小出伸一 代表取締役 社長執行役員に聞いた。

クラウドは「地上戦」に

―― 2012年の全社業績は厳しいものでした。

小出社長 日本ヒューレット・パッカード 小出伸一社長

小出 ワールドワイドでの決算は確かに厳しい結果になりました。ですが、四半期ベースでみると第3四半期、第4四半期には最も厳しい時に比べると良い結果を出せたと思います。当社は売上利益率を重視していますが、先の決算では2けたの数字を達成し、キャッシュフローも増えています。ただ、そうした結果を覆ってしまうほどの問題もありました。この点を除けばHP全体としては高い競争力を維持していますし、例えば、PCの利益率も1〜2%というメーカーが多い中で、HPは5%を維持しています。日本HPとしては計画を達成し、対前年比でも成長を遂げているので、満足の行く結果だったと思います。

 こうした中、事業面では自動化サーバ「HP ProLiant Generation 8」などの新製品を投入したことや、ソフトウェア、クラウドのサービス、ソリューションといったお客様の経営課題を解決するため必要なものを全て投入できるようになったことが注目されます。昭島工場で「Made in Tokyo」のPC生産を開始し、お客様に近いところからインフラ、ソフトウェア、サービス、ソリューション、当社ではこれを「フルポートフォリオ」を呼んでいますが、このフルポートフォリオを提供できるようになりました。

―― 顧客企業の経営課題やITの課題をどうみていますか。

小出 日本のお客様の多くは、「ITの効率化をもっと進めたい」という思いが強くあります。多くのCIOが効率化されたIT、言い換えれば「筋肉質なIT」というものに興味を持っています。特に、昨年は円高の影響から製造業ではコスト削減が経営の緊急課題に浮上しました。経営層はコスト削減の1つのアイデアとしてクラウドに興味を持っていますが、この1年で「クラウドとは何か」という興味の段階から、「いかに使い切り、自社のビジネスに貢献させるか」という意識にまで高まったと感じています。

 それも、単に「守りのIT」ということだけなく、「攻めのIT」にITの投資を極力持っていくという姿も見え始めてきました。2012年前半は震災の影響で事業継続やバックアップ/リカバリに投資の重点が置かれましたが、後半にはコストをできるだけ減らし、その分をビッグデータやクラウドといった攻めの経営を支えるための分野にシフトさせるお客様が増えています。

―― 「攻めのIT」とは具体的にどのような事例が出ていますか。

小出 例えば、東京海上さんはオンプレミスで運用していたメールシステムを当社のクラウドサービス上に構築されましたが、その理由はコスト削減ではなくて攻めの経営を行うためです。国内の保険市場が成熟化しているので、成長のためには欧州やアジアといった市場に進出しなければならず、同社はグローバル経営を標榜しています。進出先では支店の開設や現地企業とのアライアンス、場合によってはM&Aも必要になりますが、その度に現地でメールシステムを構築するのは大きな負担です。今も「経費が下がる」という理由でクラウドを選択する企業は多いと思いますが、同社の事例はグローバルビジネスでの攻めの経営を実現するためにクラウドを選択されました。

 もはやメールは少しでも停止するとビジネスに影響するミッションクリティカルなものになり、同社のような金融業界では厳しいセキュリティや高いレベルのSLAも要求されます。しかも、短期間でシステムを構築しなければなりません。そうした要求に応えられるプレーヤーは限られていますし、お客様にとって経営上のメリットなるものを提供しないといけません。そういう意味でクラウドコンピューティング市場は空中戦から地上戦に移ったと感じます。

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