ハイブリッドクラウド時代の運用管理を考えるITmedia エンタープライズ ソリューションセミナー レポート(1/2 ページ)

このたびITmedia エンタープライズ編集部は「ハイブリッドクラウドで困らないためのシステム管理術」と題したセミナーを開催。専門家の意見や先進ユーザー企業の事例などが紹介された。

» 2013年01月15日 11時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 アイティメディアは11月30日、企業の情報システム部門や経営企画部門の担当者などに向けて、「ハイブリッドクラウドで困らないためのシステム管理術」と題したセミナーイベントを開催した。サーバ仮想化やパブリッククラウドの活用などによって企業の情報システムが複雑になる中、いかに効率的な運用、管理を行うべきか――。こうした課題に対して有識者や先進ユーザー企業などが解決策を講じた。

ハイブリッドクラウドを成功させるには

 オープニングとなる基調講演では、日本仮想化技術の宮原徹社長兼CEOがハイブリッドクラウドの導入および運用時のポイントについて解説した。宮原氏は「重要なのは、ハイブリッドクラウドに求めるものを明確にして取り組むことだ」と強調した。

日本仮想化技術の宮原徹社長兼CEO 日本仮想化技術の宮原徹社長兼CEO

 ハイブリッドクラウドとは、プライベートクラウドとパブリッククラウドを混在させて構築したシステムを指す。ハイブリッドクラウド環境をシームレスに利用するためには、

  • 仮想マシンのテンプレートイメージを共有
  • ネットワークの統合
  • ワークロードに応じてリソース配分
  • コストの最適化
  • BCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)サイトとして機能

 といった点を実現することが理想的だという。ただし一方で、イメージサイズが大きい、IPアドレス体系の違い、TCOやROIの算定が困難などさまざまな課題が存在する。現実的な視点を持ち、「パブリッククラウドとプライベートクラウド双方のメリット、デメリットを理解し、効果的に組み合わせることが肝要だ」と宮原氏は述べる。

 そうした中でハイブリッドクラウドを成功させるにはどうすればいいか。宮原氏は「ハイブリッドクラウドをプライベートクラウドの相互補完的な発展型としてとらえるほか、パブリッククラウド上で稼働するシステムの選定が鍵を握る」と話す。パブリッククラウドを活用するシステム選定に関しては、個人情報などセキュリティ面で外部に持ち出せないものを除外し、外部向けWebサイト、情報系システム、業務系システム、BCP/DRサイトなどを仕分けする。例えば、外部向けWebであれば、安く迅速に立ち上げ、シンプルな運用を行いたいというニーズがあるため、クラウド適正は高いといえよう。

 また、ハイブリッドクラウドにおいては、統合的な運用管理手法を取り入れて、運用管理コストを削減することも念頭に置くべきだという。統合監視ツールで監視を行い、共通管理部分は統合管理ツールやスクリプトなど、詳細管理部分は個別の管理ツールを利用して管理工数を削減するとともに、死活監視や性能監視、セキュリティ監視も実装する必要があるとしている。

「100%理想的なハイブリッドクラウドの実現は難しい。自社の目的を明確にし、運用管理を可能な限り標準化などすることが成功への近道といえるだろう」(宮原氏)

持たないプライベートクラウド

 続いてのセッションでは、インターネットイニシアティブ マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 GIOビジネス推進課 課長の喜多剛志氏が、同社のクラウドサービス「IIJ GIO」の特徴などを紹介した。

インターネットイニシアティブ マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 GIOビジネス推進課 課長の喜多剛志氏 インターネットイニシアティブ マーケティング本部 プロダクトマーケティング部 GIOビジネス推進課 課長の喜多剛志氏

 IIJ GIOは、HaaS/IaaSからSaaSまで幅広いサービスレイヤで提供する包括的なクラウドサービス。2012年第2四半期の時点で850社に導入されている。NTTドコモやコナミ、サッポロビールといった大手企業での採用も多い。複数のコンポーネントサービスがある中で、特に注目を集めているのが、IIJ GIOの上にユーザー専用のVMware仮想化環境を構築する「仮想化プラットフォーム VWシリーズ」だ。これを活用することで、「ユーザーは自由に仮想サーバを作成し、プライベートクラウドを構築できるようになる」と喜多氏は力を込める。

 そのVWシリーズのコンセプトが“持たないプライベートクラウド”の実現である。利用用途に応じて、サーバ、データストア、通信ネットワークの3つのリソースを必要なときに選択、組み合わせることで可能にするという。いわばユーザーのプライベートクラウド環境をIIJが預かっているというイメージだ。また、ユーザーが自社で保有するプライベートクラウドとWAN/LAN接続することで、ハイブリッド型のクラウド環境も構築できるという。

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