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» 2013年02月18日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:サイボウズにみるクラウド事業への「覚悟」

グループウェア大手のサイボウズが先週開いた会見で、クラウド事業の状況や取り組みについて説明した。説明に立った青野慶久社長が語った「覚悟」とは——。

[松岡功,ITmedia]

「クラウドの影響で売り上げが減ることはない」

 「クラウド事業をやると売り上げが減少すると言われているが、そうでないことが分かった」

 サイボウズの青野慶久社長は2月14日、同社が開いた2012年12月期決算・事業説明会でこう語った。説明会では事業全般に話が及んだが、ここでは青野氏から興味深い発言をいくつか聞くことができたクラウド事業に焦点を当てたい。

会見に臨むサイボウズの青野慶久社長 会見に臨むサイボウズの青野慶久社長

 まずは冒頭の発言の背景を説明すると、サイボウズがクラウド事業へ本格参入したのは2011年11月。同社の主力製品であるグループウェアをクラウド環境で提供するための自社基盤「cybozu.com」のサービスを開始したのが発端だ。従って、2012年12月期決算が同事業を含めた初めての結果となった。

 その結果は、売上高(連結)で41億4000万円。前期の42億2500万円と単純比較するとマイナスだが、2012年12月期は決算期変更のため11カ月の変則決算だったことから、前期と同期間(2〜12月)で比較すると5.8%の増収となった。

 冒頭の発言は、この結果を受けたものだ。青野氏によると、増収になったのは、クラウド事業による下押し圧力の影響が予想されたパッケージ事業が微減にとどまる一方で、クラウド事業が新たに積み上がったからだという。

 さらに11カ月分である2012年12月期の売上高に集計済みの2013年1月分を合算すると45億円強となり、従来と同じ決算期ベースで見ると過去最高の売上高になったとか。これをして同氏は「サイボウズは改めて力強く成長し始めた」と語った。

 確かに同社のクラウド事業の広がりには目を見張るものがある。cybozu.comの有料契約社数は既に3000社を超え、中堅・中小企業を対象としたノークリサーチの「2012年版SaaS/クラウド市場の実態と中期予測レポート」による「コラボレーションや顧客管理目的での導入済み/導入予定のクラウドサービス」のシェアでは、欧米の競合サービスに倍以上の差をつけて1位(12.6%)に躍り出たという。

 また、同社がcybozu.comにおいて今もっとも注力しているPaaS型の業務アプリケーション構築クラウドサービス「kintone」では、APIを公開して他システムと容易に連携できるようにしたり、ソリューション開発を促進するために新たなパートナー制度を展開しており、今後のクラウド事業の広がりに着々と布石を打っている。

「利益率が下がってもクラウド投資は続ける」

 「社名をドメイン名にしたcybozu.comにはまさしく社運をかけており、背水の陣でクラウド事業に取り組んでいる」

 こう意気込む青野氏だが、クラウド事業をめぐってはまだ大きな課題が1つ残っている。それは、増収基調こそ確保したものの、利益の減少傾向が止まらないことだ。

 ちなみに、2012年12月期の経常利益は4億9600万円。売上高経常利益率は12.0%で、前期の15.8%から低下した。経常利益は2008年1月期の11億2500万円が最高で、売上高経常利益率も28.5%を記録していた。この時点から経常利益は減少し続けている。

 その要因としてはリーマンショックによる売り上げ減少などもあるが、設備・インフラを全て自前で整備していることから累積で25億円に上るというクラウドサービスへの開発投資が重くのしかかっている。

 青野氏によると、この利益の減少傾向は2013年12月期も続き、経常利益は4億8000万円、売上高経常利益率は10.1%まで低下すると予想。「今期も利益面では厳しい1年になるだろう。逆に言うと、それでも次なる成長のための投資の手は緩めないということだ」と表情を引き締めた。

 ただ、いつまでも利益減少に歯止めをかけないわけにはいかない。歯止めをかけるだけでなく、利益増加基調へと転換させる目算が、果たしてあるのか。この最重要ポイントについて、青野氏はこう語った。

 「これまで数年間にわたってクラウドサービスの開発に先行投資を行い、事業を始めて1年余りでcybozu.comの有料契約社数が3000社を超えた。このペースでいけば、1年後、あるいは遅くとも2年後にはクラウド事業だけで黒字化できるという手応えを感じている。クラウド事業はいったん黒字化できれば、あとは安定的に利益を生み出し、全体の利益増加につながっていく」

 さらに同氏はこう続けた。

 「実はこれまで、クラウド事業には赤字続きの“死の谷”のような感触をずっと抱いてきた。このまま投資を続けて本当に回収できるときが来るのかと。しかし、ここにきてようやく上昇気運がはっきり見えてきた。このまま進めば大丈夫だと確信している」

 青野氏のこの言葉には、まさしく「覚悟」を感じた。クラウド事業にはこの覚悟が必要なのではなかろうか。グループウェアに強みを持つサイボウズだからこそ推進できるとの見方もあろうが、特に同社と同じ中堅規模のITベンダーにとっては、クラウド事業に取り組む上でのヒントがいくつもあるような気がする。そのベースとなるのは、間違いなく経営トップの覚悟である。

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