開発現場の心を大切に KLab・安井氏ネット企業で踏ん張るCTO(1/2 ページ)

海外に目を向けて事業拡大を図るソーシャルゲーム開発会社のKLab。そのビジネスを支えるインフラ基盤を担当するのが、CTO(最高技術責任者)でKラボラトリー所長の安井真伸氏だ。

» 2013年02月19日 11時00分 公開
[取材・文/伏見学,ITmedia]

アジア拠点のインフラを整備

 まずは、私が在籍するKラボラトリーの役割について簡単にご説明しましょう。社内ではよく「3年後の飯のタネを探すこと」がミッションだと話しています。現在当社で収益を上げている製品やサービスが未来永劫続くということはないでしょう。そこで「こんな新しい取り組みをしたい」と事業部門から持ちかけられたとき、すぐに技術面で適切なアドバイスだったり、実装だったりができるよう、さまざまな技術を試すようにしています。

KLab CTO Kラボラトリー所長の安井真伸氏 KLab CTO Kラボラトリー所長の安井真伸氏

 ただし、やみくもに手を出すことは推奨していません。現在、Kラボラトリーには8人のメンバーがいて、それぞれに得意分野があります。彼らには、その分野について誰よりも詳しくなれと言っています。もし新しい技術に触れるのであれば、とことん突き詰めるべきで、ちょっとかじる程度であれば初めから手を出さない方が良いのです。

 私自身はネットワークが専門領域です。数年前から当社は海外展開に注力しており、昨年はフィリピンと中国・上海に開発拠点を設立しました。私自身もインフラ基盤の整備や現地技術者の採用面接をはじめ、拠点の立ち上げに大きく携わりました。

 インフラ基盤の構築に関しては、ネットワーク環境が日本と大きく異なる点で苦労しました。中国だと、(インターネット通信における検閲システムである)グレートファイアウォールが存在するし、フィリピンであれば、ISP(インターネットサービスプロバイダー)をどうするかという悩みがあります。そうした中で、まずは社内ネットワークの整備に力点を置きました。海外拠点と本社、あるいは拠点同士の情報連携をする際に社内ネットワークを利用するのですが、このインフラをないがしろにしてしまうと、ビジネスにスピード感がなくなるどころか、業務自体ができなくなってしまいます。何とかフィリピンや中国のネットワーク環境を生かして、拠点間で社内ネットワークをうまく組んでいくことが大きな仕事でした。

 ただ、ネットワークを構築して終わりではありません。インフラ面でトラブルが起きた際に、現地のスタッフで修復できなければ意味がありません。そこで現地のスタッフが面倒を見ることができるシステムにすることが最低限の要件となります。それに伴い、スタッフの教育をしたり、実際に設計や構築に携わってもらったりしながらできるだけきちんとしたシステムを作り上げていきました。地道な作業ですがとても大切なことです。

組織の作り方

 こうした経験を通じて分かったのは、海外拠点の立ち上げ時に見られる問題というのは、その大半が組織上の問題だと思います。人の集まりをどう組織していくかが大事で、いかに仕事を回せる組織を作れるかが求められてきます。

 理想論でいうと、1つのことを言えば10のことができるようなエキスパート人材を最初から集められれば苦労しません。しかし、組織にはいろいろな人がいて、技術レベルもバラバラです。今持っているスキルをどれだけ生かして必要なものを作っていくか、足りないスキルはどう習得してもらうかといった部分が、経験を重ねることによってノウハウとして蓄積されていくのです。逆に言うと、今いる人材の有効活用と、その人材をいかに育てていくかということについてのノウハウがあれば、それは今後どんな組織を作るときでも役に立ちます。

 人材育成において気を付けなくてはならないのは、自らが手を動かして、現場と同じ目線で話をするということです。CTOだからといって、あれをやれ、これをやれでは人材は育ちません。同じ目線になって、「この人はこのスキルが足りないから、あれを教えなくていけないな」と適切なサポートをすることが重要です。

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