「中の人」が語るウルトラワークの実態サイボウズ流の働き方(1/2 ページ)

サイボウズは2012年夏から、時間と場所の制約を無くした「ウルトラワーク」を実験している。外回りの多い社員やオフィス業務がメインの社員はどう感じているのか。多様な働き方に挑む同社の内側をフェローの野水克也氏がレポートする。

» 2013年02月26日 08時00分 公開
[野水克也,サイボウズ]
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 サイボウズは、2012年8月26日から「ウルトラワーク」と称して、時間と場所の制約を無くした働き方を試験的に運用しています。

 元々、サイボウズでは月4回までの全社員を対象にした在宅勤務制度や短時間勤務制度などを導入し、グループウェアなどテレワークの仕組みを使った多様なワークスタイルを実現してきました。今回はそれをさらに発展させて、時間帯、場所の制限を一切無くしたら、働きやすさと生産性の向上を両立できるか試してみようというものです。

 本稿ではサイボウズの「中の人」から見たウルトラワークの様子と、その反応についてレポートします。


 まず私の場合、業務の多くが出張などを伴う講演や事例取材、商談ということもあって一週間の半分は試験運用をする前からウルトラワークの状態にありました。

 サイボウズの社内は、自社のグループウェアを使って社員全員のスケジュール管理や報告書の共有、プロジェクト管理、ワークフロー(社内手続き)などが既にクラウド上で運用されています。極端な話、業務を進めるだけなら、いつでもどこでも可能なのです。

 出張先ならホテルで朝食をとった後に、グループウェアで新しく入ったスケジュール、部門間のやりとりのメッセージ、報告書、ワークフローなどを確認します。私の場合、講演などのスケジュールを営業や広報部門のスタッフが入れてくることが多いので、予定が重なっていないか、移動できる範囲であるかなどを確認して、必要であればスケジュールのコメント欄で調整してもらうように返事をします。

 時間がかかりそうな文字だけのやりとり、もしくは誤解が生まれそうなやりとりにはテレビ会議を使うこともあります。昼間はよほどの場合を除いて外出先ではできないので、ホテルをチェックアウトする午前10時までか、チェックイン後の午後5時以降に行うのが恒例です。2人だけならSkypeを頻繁に使っています。

 移動中に仕事をすることもありますが、実はよく寝ています。プロモーションビデオで移動中に仕事をするシーンがよく見られますが、実際にはネットワークが遅かったり、無理な姿勢でキーボードを触ったりしなければならないので、私にとって効率的とは言えません。その分、ホテルにチェックインした後や早朝に処理します。

 クラウドやグループウェアの便利なところに、場所にかかわらずやりとりできる面があります。実は、時間に関係なくやりとりできる「非同期のコミュニケーション」という面もあります。コミュニケーションが必要な場合でも、移動中に寝ていた分を朝と夜の時間を使って取り返すことができます。むしろ、新幹線や飛行機の中では急ぎのメッセージに返信したり、他の社員の日報を読んだりする程度にとどめています。

image サイボウズの掲示板は、設定により購読するスレッドをユーザーが選択できる

 意外に思う読者がいるかもしれませんが、グループウェア上の情報で役に立っているのが日報です。サイボウズでは日報や社内向けのつぶやきという形で、半数以上の社員が日々の出来事や感じていることをほぼ自由な形式の掲示板などに書いています。そのほとんどが公開されていて、社員なら誰でも読むことができます。

 もちろん重要な商談などの報告書もアップされますが、私の場合は、他の社員の日報が重要な情報源になっています。

 日報は文章量が多いので、部下以外のものはほぼ読み飛ばす感じになりますが、一つの日報をぱっと見ただけでも、気になるキーワードくらいはすぐ目にとまります。それを毎日繰り返すことで、社内のトレンドや自分の仕事と関係するパートナーの動向、アクシデントなどの予兆をチェックできるのです。「読む」というよりは、「新聞の見出しを追いかける」という感覚でしょうか。

 事例取材などで書き起こさなければならない原稿が溜まってくると、家で仕事をする場合もあります。しかし、私は在宅勤務だと気が緩んでしまい、切羽詰った状況にならない限りはあまり効率的ではないと感じています。

 さて、ウルトラワークの試行中にわざと何度かカフェで仕事をしてみましたが、わざわざカフェへ通うという感覚にどうもなじめませんでした。こういうものは、普段から仕事をしている場所、つまりはホームがある上で「たまにはどこかへ逃げよう」という感覚から気分転換として出かける場合に効果があるのでしょう。むしろ、「どこでも仕事をしていいですよ」と言われると、楽しくないのです。あまのじゃくなのでしょうね。

 私を含め、サイボウズの社員の半数近くは裁量労働制です。それでも、ウルトラワークの試行前は昼間の移動中に寝てしまうことに少々申し訳なく感じていました。ウルトラワークで変わったことといえば、会社が勤務時間の自由を謳うことでこうした点を気にしなくなったことでしょう。

 それでは私とは違って、出張のない社員の場合はどうでしょうか。ちょっと変わり種のバリバリの管理職を取り上げてみます。

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