PCやインターネットの利用では“必須”の「ウイルス対策ソフト」の現状、そして未来について解説しよう。
筆者の手元に、2005年に岡山県立図書館で講演した時の資料がある。その資料には懐かしい内容が幾つか含まれているのだが、その1つに当時のウイルス対策ソフトへの不満がある。その昔、ウイルス対策ソフトとは別のジャンルとして「マルウェア対策ソフト」「スパイ対策ソフト」「ペスト対策ソフト」というジャンルがあった。今の人がウイルス対策ソフトと聞くと、これらの全てを包含しているイメージを持つだろう。それは間違いではないが、昔は別物であった。
ウイルス対策ソフトの企業の専門分野と、スパイとかペストと呼ばれていた不正アプリ対策を専業としていた企業のノウハウは全く別物であった。ところが、「総合ウイルス対策ソフト」と称していた大手のウイルス対策ソフトのパッケージに「スパイウェアも検知可能」とか、「ペスト系にも対応済み」と記載されるようになった。実際に筆者がテストをしてみると、世間で有名なペストやスパイ系の不正アプリを確かに検出したが、マイナーなものはほとんど検出できなかったのである。
ある雑誌社が2005年に調査した結果を引用してみると、次の結果だった(筆者のテストはロット数が違い過ぎるので割愛させていただく)。
メーカー | ウイルス系の検知数 | スパイ系の検知数 |
---|---|---|
A社 | 18414 | 641 |
B社 | 17612 | 169 |
C社 | 18110 | 201 |
このようにバラツキがあり過ぎる状況で、「スパイも検知可能」というのはいかがであろうか。ちなみにスパイ専用の検知ソフトの結果も公開されている。
(編注:いずれも2005年ごろの結果であり、現在の性能を示すものではありません)
こうしたそれぞれのジャンルはメーカーや製品は、その後どうなったのか。今を見れば分かるが、スパイ専用ソフトは市場からほとんどなくなっている。一部まだ発売されているが、シェアはたぶんあまりないだろう。その他の会社は倒産してしまったのか。いや、ほとんどは大手や中小を問わず、ウイルス専用対策ソフトの企業に吸収されていったのである。
利用者にとっては、ウイルスとかスパイとかは関係ない。自分たちにとっては、どれも勝手に不正行為を働き、情報を盗み出したり、重要なデータを破壊したりする。そういうものが無くなればいい。だから、必然的に別物だった対策ソフトが合体することになったのだろう。企業としても、その相乗効果として売上が伸びていくと期待する。その選択は多分、良い選択だったと思える。
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