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中小企業のサーバ仮想化、導入時の注意点とはITRのシニアアナリストが解説(1/2 ページ)

予算と人員が限られている中小企業にとって、IT導入の失敗は死活問題だ。今回は中小企業がサーバ仮想化を進める上での注意点を具体的に解説する。

» 2013年04月03日 10時00分 公開
[生熊清司(ITR),ITmedia]

 前回は、市場調査から国内企業における仮想化技術、さらにはサーバ仮想化の導入状況を見た。その結果、中小企業においてもサーバ仮想化の導入が増えていることを説明した。そこで、今回はサーバ仮想化を導入するにあたって、どのようなことに注意すべきかを説明していく。

 サーバ仮想化に限ったことではないが、たとえ同じハードウェアやソフトウェアを利用していたとしても、導入に成功する企業もあれば、失敗する企業もある。失敗する場合の多くは、事前の準備が不十分であることが多いと思われる。限られた予算と人員でITの導入と運用を行う中小企業では、プランAが失敗したから、別グループが進めているプランBに変更するというわけにはいかないため、十分な導入準備が求められる。

 では、サーバ仮想化の導入準備をどう進めていけばよいだろうか。

導入目的を明確にする

 ITコストの削減が目的であるといっても、ITコストにはさまざまな要素が含まれている。例えば、サーバ仮想化を導入するために、新しいハードウェアやソフトウェアを購入する場合は、そこで新たなコストが発生することになる。コスト削減を目的とするのであれば、サーバ仮想化導入によって、現状と比べて、どのようなコストが発生し、どのようなコストが減少するかをあらかじめ調べておく必要がある。図1は調べておくべき大まかなコスト項目を示したものである。

初期コスト ハードウェア購入費用
ソフトウェアライセンス費用
初期設定費用
システム移行費用
維持コスト ハードウェア保守サービス費用
ソフトウェア保守サービス費用
運用管理人件費
電力費用
設置スペース費用
図1 コスト項目

 これを、システムを利用する一定期間で比較する。ITRでは5年間でのコスト比較を行うことが多い。なお、5年間という期間を採用しているのは、サーバなどのハードウェアおよびソフトウェアの減価償却期間が5年であること、Windows ServerやLinuxなどのOSを稼働させるIAサーバのベンダーサポート期間が5年間であることが多いことによる。

 サーバ仮想化によるハードウェア台数削減が目的の場合、簡単に考えると、初期コストの増加に対して、維持コストの減少を見て、5年間でコストが減少するか否かを見ることになる。サーバ台数が少ない場合は、サーバの買い替えによって発生する初期コストの増加の方が維持コストの減少よりも大きくなり、思ったほどのコスト削減にならないケースも考えられる。

 しかし、サーバ仮想化によって得られるメリットは、単にサーバ台数を削減するだけではなく、下記のようなメリットもある。

旧OSやソフトウェアの延命

 最新のサーバに買い替えると、古いOSやRDBMSなどのソフトウェアをサポートしていないことがある。このような場合、サーバ仮想化を用いることによって最新ハードウェア上で古いOSやソフトウェアを動作させることが可能となり、OSやRDBMSのバージョンの違いで生じる非互換部分を改修するためのコストを削減できる。

可用性の向上

 一般的に、可用性を高めるべくスタンバイやクラスタリングなどを用いる際には、本番機と別のサーバを用意しなければならないために、物理サーバ台数が増えることになる。サーバ仮想化を用いることで、物理サーバの増加台数を削減しつつ、可用性を向上させることができる。

災害対策

 地震などの災害対策を行うためには、本番環境とは別の遠隔地に本番環境と同一のバックアップ環境を設置する必要がある。シンプルに考えると2倍のコストが発生してしまう。

 サーバ仮想化を用いれば、1台の物理サーバ上に複数の異なるOS環境を得ることができる。複数台の本番サーバに対し、バックアップ環境はサーバ仮想化で1台に削減。さらに、仮想サーバ環境ではOSとOS上のソフトウェアが物理的なハードウェアと切り離されているので、本番環境とバックアップ環境間でのレプリケーションをより簡単に行うことができる。また、バックアップ環境を自社で保有せずに、パブリッククラウド上に設置することも可能となっている。

 サーバ仮想化の導入目的を明確にしておく理由は、1台の物理サーバで複数のOSが稼働できることによるサーバ台数削減だけでなく、可用性の向上や災害対策を含めることによって、より多くのコストメリットが得られるからである。

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