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» 2013年04月25日 08時30分 UPDATE

ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略:慣習にとらわれるな! “業界初”を打ち出し続けるクレディセゾン (1/2)

一橋大学大学院の大薗教授が「ポーター賞」受賞企業のユニークな競争戦略を分析する。本稿ではクレディセゾンのクレジットカード事業をピックアップする。

[取材・文/伏見学,ITmedia]

 「競争優位の戦略」や「競争の戦略」を上梓し、競争戦略理論家として著名なハーバード大学経営大学院のマイケル・E・ポーター教授。このポーター教授をアドバイザーに、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科(ICS)を主催として、2001年に日本で創設されたのが「ポーター賞」だ。

 ポーター賞の目的は、(1)世界市場における日本企業の競争力を高めること、(2)独自性のある戦略により優れた収益性を達成、維持している企業の実践方法を広く社会に発表すること、(3)競争戦略の理論と実践が日本企業に広く根付くことである。そのために、製品やプロセス、マネジメント手法におけるイノベーションを起こすことによって独自性のある価値を提供し、その業界における“ユニークな”方法で競争することを意図的に選択した企業、事業を毎年評価している。

 第一次審査の審査基準は、

  • 各業界において優れた収益性を維持していること
  • 各業界において他社とは異なる独自性のある価値を提供していること
  • 戦略に一貫性があること
  • 戦略を支えるイノベーションが存在すること

 第二次審査の審査基準は、

  • 資本の効率的な利用
  • 独自のバリューチェーン
  • トレードオフ
  • 活動間のフィット

となっている。

 これまでに、松井証券(2001年)、アスクル(2002年)、良品計画(2007年)、テルモ 心臓血管カンパニー カテーテルグループ(2010年)、Plan・Do・See ブライダル部門(2011年)など、41企業・事業部が受賞し、ほとんどの企業がリーマン・ショック以降も競争優位性を維持しているのだという。

 こうした企業の競争力の源泉はどこにあるのか。本連載では、2012年の受賞企業に焦点を当て、ポーター賞の運営委員会メンバーである一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美教授に各社の競争戦略を解説していただく。第1回は、クレディセゾン クレジットカード事業を取り上げる。

事業スタート時から“業界初”

 日本のクレジットカード業界は、銀行の子会社、事業会社の子会社、独立系のクレジット会社の3タイプに分かれています。現在、クレディセゾンは独立系ですが、元々は旧セゾングループのクレジットカード会社として、西武百貨店の顧客を対象に事業をスタートしました。

一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美教授 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の大薗恵美教授

 当時、ほとんどのクレジットカードは、「男性」「一流企業に勤続10年以上の役職者」「持家」などを条件に、ターゲット顧客を絞り込んでいました。しかし、クレディセゾンは、上述したように、百貨店で買い物をする一般の人々を対象にしていたため、メイン顧客は20〜30代の女性でした。これは現在も変わらず、顧客の約70%が女性です。同社では顧客が実際にカードを利用するシチュエーションに基づいて事業戦略を発想していたため、競合他社と目指す方向性が最初からまるで異なっていたわけです。ここが1つの差別化ポイントと言えるでしょう。

 一方で、ハウスカードを発行する会社はほかにもありました。では、彼らと比べて大きく飛躍できた要因はどこにあったのでしょう。その答えは「イノベーション」です。クレディセゾンは、これまでの慣習を破り、顧客のために業界初となる新しい仕組みを徹底的に取り入れていきました。1982年の事業開始当初から、年会費無料、即与信、即発行、即利用を実施したほか、キャッシング用無人キャッシュディスペンサー設置(1982年)、西友食品売り場でのサインレス取引(1990年)、永久不滅ポイントの導入(2002年)など、さまざまなイノベーションを起こしています。

 こうした取り組みに対して競合他社からは「非常識だ」という見方もあったようですが、顧客の利便性をサービスの中心に据えているクレディセゾンにとっては、実に合理的な戦略であるといえるでしょう。また、必ずしも先行者が利益を上げるということはないわけですが、クレディセゾンの場合は、数多くのイノベーションを起こすだけでなく、それらがきちんと維持され、収益に結び付いているのが特徴的です。

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