ニュース
» 2013年08月05日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:オープンデータのガバナンスは大丈夫か

横浜市と日本マイクロソフトが先週、オープンデータ活用の推進に向けて連携すると発表した。この機に、オープンデータ活用の利点とともに課題についても考えてみたい。

[松岡功,ITmedia]

横浜市とマイクロソフトがオープンデータ活用で連携

 「オープンデータを多くの方々が有効活用することで、地域の課題解決や企業の新たなビジネスの創出に生かしていくことができる」

 横浜市の林文子市長は7月29日、日本マイクロソフトとの連携強化を発表した会見で、オープンデータ活用の利点についてこう強調した。

 横浜市庁舎で行われた記者会見。右から日本マイクロソフトの樋口泰行社長、横浜市の林文子市長、横浜市教育委員会の岡田優子教育長 横浜市庁舎で行われた記者会見。右から日本マイクロソフトの樋口泰行社長、横浜市の林文子市長、横浜市教育委員会の岡田優子教育長

 横浜市と日本マイクロソフトが発表した連携内容は、これまで進めてきた「将来を担う科学者等の人材育成支援」を拡充するとともに、新たな取り組みとして「ICTによる女性の多様な働き方支援」および「オープンデータの推進による市内経済の活性化」を目指すというものだ。

 会見内容の概要については関連記事を参照いただくとして、ここではオープンデータの活用にフォーカスして、その利点とともに課題についても考えてみたい。

 あらためてオープンデータとは、企業や団体、個人などが自由に利用できるデータのことで、特に公共機関が保有するデータの有効活用によって、新たなサービスやビジネスの創出につながるものとして期待されている。

 横浜市と日本マイクロソフトによる連携では、ソフトウェア開発製品などの無償提供プログラム「Microsoft BizSpark」を横浜市内の企業に提供することで、オープンデータを活用したアプリケーションを開発するための環境構築を支援。また、アイデアソンやハッカソンなどのオープンデータの利活用を促進するイベント開催の支援や、日本マイクロソフトがオープンデータに関する海外の先進的な事例やノウハウを横浜市に提供するとしている。

 林氏によると、横浜市では昨年、市民によって横浜オープンデータソリューション発展委員会が発足し、組織や団体の枠を越えてオープンデータ活用による地域の課題解決や新たなビジネスの創出に取り組んでいるほか、総務省のオープンデータ流通推進コンソーシアムや内閣官房の電子行政オープンデータ実務者会議にも参加し、政府とも積極的に情報交換を行っているという。

 一方、日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「横浜市は自治体の中でもオープンデータ活用の取り組みが最も進んでいる」と語り、すでに今年2月、マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure」上で横浜オープンデータポータルが稼働し始めたことを紹介。また、世界各国でオープンデータ活用の支援を行っていることから、「これまで培ってきたノウハウを生かして国際都市である横浜市がさらに世界に発信していける仕組みづくりに貢献していきたい」と力を込めた。

技術の標準化やデータ自体のガバナンスが課題に

 オープンデータの有効活用が期待されている中、横浜市のように自治体がクラウドベンダーと連携して積極的に取り組むケースは今後も増えてくるだろう。そこで気になるのは、政府や各自治体がそれぞれにオープンデータ活用を推進すれば、技術の標準化やデータ自体のガバナンスといった観点から問題が起きないかということだ。

 技術の標準化が求められる背景には、データ形式や連携フォーマットに再利用を想定した標準がなく、機械判読できないといった問題がある。また、データ自体のガバナンスが求められる背景には、利用規約や法制度の不備とともに管理体制が不明確との懸念がある。

 これらの問題は実際、日本においてオープンデータ活用の必要性が高まった2011年3月の東日本大震災後に浮き彫りになった。当時、数多くのITエンジニアがボランティアで被災者や避難所、救援物資、混乱した交通網の状況、放射線モニタリングといった情報を、公共データを駆使して整理・活用しようとしたところ、その大半がPDF形式で再利用できなかったり、利用規約や管理体制が不明確で再利用の承認が得られなかったりしたという。その無念の思いを、筆者も複数のエンジニアから聞いた。

 こうした事態を受け、政府のIT総合戦略本部では2011年8月にオープンデータ戦略を打ち出し、2012年7月には電子行政オープンデータ戦略を策定。さらに今年5月には、第二次安倍内閣における新たなIT戦略案としてオープンデータ活用の推進を強く打ち出し、政府が保有するデータの形式を統一して一括検索できるシステムを2014年度に本格運用させる構えだ。従って、データ形式については横浜市をはじめとした自治体も、こうした政府の動きに同調するとみられる。

 となると、技術の標準化は進みそうだが、もう1つの問題であるデータ自体のガバナンスはどうか。例えば、政府と自治体間をまたがって利用されるようなオープンデータの管理責任はどこが持つのか。オープンデータを保管するクラウドがばらばらな状態できちんとガバナンスを効かせることができるのか。

 政府のIT総合戦略本部では、当然そうした問題解決への検討もなされていると思うが、あえてオープンデータのガバナンスは大丈夫か、と問い掛けておきたい。

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ