ニュース
» 2013年09月17日 11時00分 UPDATE

過度な目的思考や強制利用は避けるべき 企業ソーシャル浸透のカギとは? (1/2)

企業がソーシャルメディアを活用する上で注意すべきポイントなどは何か。事例を交え、その勘所について、アクセンチュア 経営コンサルティング本部 人材・組織マネジメントグループ シニア・プリンシパルの作佐部孝哉氏に聞いた。

[伏見学,ITmedia]

過去の知識にしがみついても高価値は出ない

――企業におけるソーシャルネットワーク/ソーシャルメディア活用の現状をどう見ていますか。

 まず活用の前提として、ツールなどの普及状況を語るより、企業における社員の働き方の変化を見ておくほうが本質的です。

急伸するソーシャルメディア。5000万人のユーザーを獲得するのにラジオが38年を要したのに対し、Facebookはわずか4年未満である(出典:アクセンチュア) 急伸するソーシャルメディア。5000万人のユーザーを獲得するのにラジオが38年を要したのに対し、Facebookはわずか4年未満である(出典:アクセンチュア)

 アクセンチュアがテクノロジーの進化に伴い、社員の働き方がどのように変化しているかを知るために全世界で実施した調査によると、ハイパフォーマーの多くに見られる行動特性として、直接的な仕事だけではなく、さまざまな社内活動へ高い頻度で参加しているという傾向がありました。現在の仕事に直結していなくても、同じ分野に興味を持つ人とバーチャルネットワークでコネクションを作り、そこからパーソナルな人的ネットワークを拡大することに意欲的であるということです。

 実際、ハイパフォーマーの43%は、何か聞きたいときにすぐに質問できる人が10人以上いると答えているのに対し、標準的なパフォーマーは23%しかいませんでした。

 またハイパフォーマーの多くは、自分の知識や経験を人に伝えたり、共有することで、自分の考えが洗練され、透明性が増していくのを実感し、自分のためにもなると考えていることも特徴です。

 これは2つの変化を示しています。1点目は、知識や情報のコンビニ化(いつでも、どこでも、誰でも知識に簡単にアクセスできる時代)においては、過去の知識にしがみつき、そのストックで勝負していても高い価値を生み出せないということです。むしろ情報や知識のフロー(流れ)を構築し、パーソナルな人的ネットワークを築けている人のほうが高い成果を残せるのです。

 2点目のほうが重要で、誰でも知識にアクセスしやすい(知識そのものでは価値を生めない)ということは、キュレーションの仕方とか、アレンジの仕方で価値を出していくことが求められるのです。そのアレンジの幅を広げるためには、個人でコツコツと積み上げる(経験曲線)よりも、周りの人とのネットワークの広がりによって向上する(コラボレーション曲線)のほうが有効であるということです。

 いずれの変化を見ても、ビジネスパーソンとして価値を出していくために、ソーシャルネットワーク、ソーシャルメディアは重要なインフラ、武器となり得ることがうかがえます。

3つの既成概念を払拭せよ

――業務効率化やコミュニケーション活性化などに向けて、企業が社内でソーシャルメディアを活用する上で、注意すべきポイントは何ですか。

 ソーシャルメディアの導入や活用において、これまでのシステム導入では常識だった3つの既成概念を払拭したほうがいいとお伝えしておきます。

 まずは、社員の100%にソーシャルメディアを使ってもらおうと頑張り過ぎないことです。活用の成功、失敗を見極める指標として、例えば、社員の85%が使っているといった目標値が見られますが、業務処理に必要不可欠な基幹システムではないので、あまり意味がありません。顧客にはよく「両極端が危ない」というアドバイスをしていますが、むやみに利用者を増やした結果、参加者やその発信される情報の質が落ちてしまうことは、まったく使われないということと同じぐらい問題です。ゴールとすべきことは、利用数ではなく、ある程度、意識が高く、信頼できる“目利き”たちがネットワーク化し、情報をフローさせることで、その参画者がより実効性の高いアイデアを生み出すことです。

 例えば、英国の通信最大手であるブリティッシュ・テレコム(BT)は、社員に対し、ソーシャルネットワークやブログ、プロジェクト専用Wiki、ポッドキャストといった多様なソーシャルメディア・アプリケーションを利用し、異なる時間帯や事業所を超えてより密接に協働するインフラを構築した結果、社員のイノベーションを生み出す生産性が高まり、製品開発期間や製品開発から発売までに至る時間が短縮されました。その価値を定量的に測定することにも成功しており、1ポンドにつき20ポンドのリターンが生まれています。

 2点目は、目的や使い方を決めて、こう使うべしという、過度な目的思考は捨てたほうがいいということです。ソーシャルメディアはあくまでプラットフォームにすぎないので、利用シーンは個人が決めるべきです。そこを無理にコントロールしても「やらされ感」が出るだけです。

 3点目は、完成品よりも、発展途上のアイデアを共有することに意味があるという点です。以前のコラボレーションの取り組みでは、「モノ」を中心としたネットワークだったため、共有されるのは、社内で成功した実績であったり、最も良いアイデアや成果物(ベストプラクティス)でしたが、今の時代、過去の成果をため込んでいても、あっという間に陳腐化してしまうどころか、逆に新しい発想を縛る足かせになりかねません。

 今やソーシャルメディアが共有しているのは、「モノ」ではなく「ヒト」を中心としたネットワーク。完成品ではなく、参加者が気になっていることや、発展途上のアイデアをプロトタイプとして挙げ、そのアイデアに対するフィードバックやヒントをもらうという交流を通じて、アイデアを発展、熟成させていくという活用に関する発想の転換が必要です。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ