XPマイグレーションのアラカルト、忘れてはいけない課題：さよならWindows XP、そしてWindows 8.1へ（2/3 ページ）

[山本雅史，ITmedia]

Windows XPからの移行を計画する

　現状を把握できれば、使用しているWindows XPのPCから次のOSへのアップデートを計画することになる。ほとんど企業では新しいOSに移行する場合、PCを新たに購入することになるだろう。このためOSのアップデートは、PCのリース切れをタイミングに行われることが多い。

　大企業だけでなく、中小企業でも部門によってPCの導入時期が異なるため、社内で利用されるPCを一気に新しいPCへ入れ替えることはできない。徐々に入れ替えることになるため、常に複数の世代のOSが共存することを考えに入れておく必要がある。

　もう一つ重要なのは、Windows XPのPCでどんなソフトウェアを使用しているかだ。Windows 7/8/8.1でサポートされていないソフトウェアがあると、Windows XPへの移行は難しくなる。特に、Windows XP時代に独自開発したアプリケーションは動作しない可能性もある。開発元が新しいOSに対応したアプリケーションを発売していればいいが、開発した会社が無くなっていた場合は対応が非常に困難だ。

　Windows OSには、古いOSのアプリケーションをできるだけ動かすことができる「互換モード」がある。しかし、互換モードだけで、古いアプリケーションが動作するわけではない。Windows 8/8.1には、Windows XP自体を仮想環境で動かす仕組みが用意されている。この方がXP互換モードよりも高い互換性を持つ。

　全てのアプリケーションがWindows 7のXP互換モードや、Windows XPの仮想環境で動作するわけではないが、鼻から動かないと決めつけるのでは無く、検証してみることも必要だ。もし動作するなら、改修コストをかけずに移行ができる。これは延命策となるため、将来的にアプリケーションをどのようにしていくかを長期的に考えなくてはならない。

　自社開発したアプリケーションの場合、新しいOSへ移行するには新たに開発することになるため、コストが相当にかかる。「これだけのコストをかけても必要とされているのか」をよく分析すべきだ。年に数回、月に数回しか使われないアプリケーションなら、代替え手段を考えるべきだろう。このあたりはユーザーの声だけでなく、現実の利用状況をキチンと把握しておく必要がある。

　新たにアプリケーションを開発しても、数年後に新しいOSがリリースされれば、また改修が必要になる。こういったことを考えれば、自社で開発するアプリケーションはできるだけ少なくする方がいいのかもしれない。今後はPC側にアプリケーションをインストールするのではなく、ブラウザを使ったWebアプリケーション――サーバ側でほとんどの処理を行い、PCではユーザーインタフェース（UI）部分だけを動かすアプリなどへ移行すべきだろう。

移行はWindows 7、それともWindows 8.1

　Windows XPからの移行を考えれば、UIがあまり変わらないWindows 7への移行がほとんどかもしれない。しかし、タブレットやスマートフォンなどの新しいデバイスの普及、BYODなど新しいIT環境の登場を考えれば、Windows 8.1がいいだろう。

　Windows 8.1はタブレットなどの新しいデバイスへの対応を行っているため、今後のIT環境にも対応していける。タブレットとデスクトップなどを同じOSで利用できるのはメリットだ。PCはWindows、タブレットはiPad、スマートフォンはAndroidと分かれてしまうのは、IT管理という面からも面倒である。OSごとにセキュリティ対策ソフトやモバイルデバイス管理（MDM）ソフトなどを導入する必要があり、コストはかさむ。

　Windows 8.1ならPCとタブレットを同じ環境にできるため、コストも抑えられるだろう。ただ、BYODが普及すると様々なデバイスが入ってくる可能性が高い。

　Windows 7に移行したとしても、2015年1月31日にメインストリームのサポート期間が終了する（延長サポートは2020年1月14日まで）。このことを考えると、Windows 7に移行しても約6年後には新しいOSに移行をする必要が生じる。Windows 8/8.1のサポート期限はメインストリームサポートが2018年1月9日、延長サポートが2023年1月10日だ。このようなことを考えていくと、Windows 7やWindows 8.1への移行を果たしたとしても、10年以内には延長サポートが切れてしまう。そうなると、企業にはOSのバージョンに左右されないITシステムを作り上げる必要が出てくる。

各社がWindows XPからの移行サービスを提供している。富士通マーケティングでもWindows XPからWindows 7/8への移行をワンストップで支援するサービスが提供されている（富士通マーケティングより）。

大塚商会でもWindows XPからの移行サポートを提供している。「Windows XPサポート終了 かけこみ寺」として、中小企業の移行をサポートしている（大塚商会より）