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» 2014年02月18日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:インフォテリアが海外に賭ける思い

ここ数年で海外展開を加速させているインフォテリアだが、目下、海外売り上げ比率は2%程度にとどまる。しかし、「海外売り上げを5割」を目標に、そのための投資を積極化する。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 日本に年商100億円を超すソフトウェア会社は数社しかない。大きな理由は2つある。1つは、中小規模のソフト会社が開発した先進的な技術や機能を積極的に取り入れるユーザー企業が少ないこと。もう1つは、ソフト会社自らが海外の市場開拓に取り組まないことだ。

 世界の市場は日本の5倍、10倍もある。そう考えるのは、データ連携ソフトなどを手掛けるインフォテリアの平野洋一郎社長。「海外売り上げを5割」に伸ばすための作戦を練る。

投資の4割を海外市場の開拓に

東軟集団(Neusoft)グループとのパートナー契約調印式で握手をするインフォテリアの平野洋一郎社長(右)と大連東軟信息学院の温涛学院長(2011年7月に中国・大連で撮影) 東軟集団(Neusoft)グループとのパートナー契約調印式で握手をするインフォテリアの平野洋一郎社長(右)と大連東軟信息学院の温涛学院長(2011年7月に中国・大連で撮影)

 インフォテリアは現在、海外に4社の現地法人を持つ。米国と中国・上海に販売会社、中国の香港と杭州に開発会社を設立し、グローバルな開発・販売体制を整えつつある。年商10数億円のIT企業としては珍しく、平野社長は1998年の会社設立時から「世界で通用するソフトを開発する」ことを経営目標に掲げている。

 だが、目下のところ、海外売り上げ比率は2%程度にとどまる。米企業の買収、子会社化、現地法人の設立など拠点作りは2012年から2013年にかけて取り組み始めたばかりだからだ。欧州の拠点はこれからになる。しかし、この数年は投資の4割を、現地法人の設立から製品開発、マーケティング、人材確保など、海外の市場開拓に振り向けてきた。

 最も重要視するのは、海外向け製品の開発である。「日本製を翻訳しても、海外で売れない。最初から海外の文化や言語を取り入れたソフトにすることが大切」(平野社長)とし、いわば“マルチバイリンガル”のような考え方で海外版を用意する。英語版と中国版は既に海外拠点の技術者数人を中心に開発した。

 海外向け製品の開発は、競争力のある製品に仕立てる狙いもある。「海外でもまれないといいものはできない。いい人材も集められない」(平野社長)。現在、日本の本社に約60人、海外に40人弱を配置し、米国や中国、韓国、インド、バングラデシュ、イギリスなどの社員たちが国内外の拠点で開発やマーケティングなどに従事している。

2本の柱

 同社の主力製品は、データ連携ソフトの「ASTERIA」と、サーバに蓄積したさまざまなドキュメントや動画、画像などをスマートフォン、ダブレット端末から閲覧する「Handbook」の2つ。2002年に発売したASTERIAの累計導入社数は2013年10月時点で4000社超になり、ある調査会社によると2012年の市場シェアは50%近くになる。

 一方、2009年に売り出したHandbookの累計契約数(2013年9月時点)は582件となり、クラウドとスマートンフォン、タブレット端末の普及によって、着実に販売本数を伸ばしている。「2009年ごろ、外にデータを置くのはまかりならないという風潮だったが、今は逆に外にデータを預けるほうが安全となり、セキュリティポリシーを見直す企業が出てきた」(平野社長)ことなどが追い風になっている。海外市場の開拓は、Handbookから展開し、そこからデータ連携ソフトへと広げていく。ネット販売を含めた販売網も整備する。

 2013年度上期のライセンス販売は3割伸びた。これまでの伸び率は10%から20%程度だったことを考えると大きく成長したといえる。平野社長によれば、クラウドやビックデータに対応するために大規模化、大容量化を図ったことによる。ASTERIAの場合、上位バージョンを出すなど、「地道にしっかり機能強化を図ってきた」(平野社長)。その下地作りもしている。4年ほど前からユーザーとの直接契約を始めて、「ユーザーの要望や傾向をつかんだり、顧客満足を高めたりしてきた」(平野社長)。その成果も現れているのだろう。


一期一会

 平野社長は20歳の時、大学を中退し、ソフト業界に入った。ロータス(現IBM)などを経て、インターネットが企業で使われ始めたころの1998年、副社長の北原淑行氏と2人で、XML専業会社として事業をスタートさせた。ホームページを立ち上げたり、電子メールを活用したりする時代だったが、企業情報システムが必ずインターネットに乗ると見据えて、そこに必要なソフトの開発に取り組んだ。ITベンダーやOSなどに依存しない共通言語のXMLを活用して、ソフト部品を開発し、開発会社に販売する。自社製品を開発する中で、2005年に黒字化、2007年に東証マザーズに上場を果たした。

 1999年に開発した世界初の商用XML処理エンジンは、インフォテリアのベースに思える。その後も、企業の現場をつなぐ先進的なソフト、世界で通用するソフトの開発を貫いている。だが、平野社長が期待した以上には、自社製品は売れていない。伝統的なIT部門の中には「新しいことを手掛けて、何かあったら誰が責任を取るのか」という議論が起こり、経営者や利用部門は事業改革を求めているのに、IT部門自身がIT活用の抵抗勢力になっていることがある。

 そこで平野社長は、IT部門が抵抗勢力から改革、創造部門になってほしいとの思いもあって、最近、「タブレットやスマートフォンを使うと、こんなに便利になる」といった普及啓蒙的な講演をする機会を増やしている。クラウドの普及はそれを後押ししている。

 世界に打って出ることも大切なこと。売り上げの25%を投資に割くのもそのためであるが、株主やアナリストの厳しい目がある。例えば、Handbookを開発する際、彼らから「ASTERIAに注力すべき」と指摘されたという。iPhoneなどスマーフォンしかなかった時代だったが、iPadなどタブレットの登場で利用環境は一変する。先を読み、投資を決断する必要がある。そのため、インフォテリアは決算で見込み数値を公表しない。「開示すれば、言った通りにやれとなり、変化に俊敏に対応できなくなる」。

 50歳になった平野社長は先行投資を怠れば、ITベンチャーの成長はない、と考えている。

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