“爆速×ビッグデータ”でヤフーが実現したことデータ基盤にも積極投資(1/3 ページ)

月に580億ものページビューを叩き出す巨大サイト「Yahoo! JAPAN」。そこで収集、蓄積された“ビッグデータ”を効果的に活用して、ビジネスに貢献しようと日夜奮闘するデータ専門部隊がある。

» 2014年04月16日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 総合情報サイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーが、全社を挙げてビッグデータの活用に熱を入れている。1日当たり約20億ページビュー(PV)、月間で約580億PVにも上るサイトの膨大なデータを分析して、ビジネス成長に向けた次の戦略に生かしていきたい考えだ。

ヤフー データソリューション本部 サービスソリューション部 部長の衣目麻里氏 ヤフー データソリューション本部 サービスソリューション部 部長の衣目麻里氏

 そのための投資も惜しまない。ビッグデータ活用を支えるシステムとして、約3700台のサーバで構成される並列分散処理基盤「Hadoop」のクラスタを立ち上げたり、データサイエンティストと呼ばれるような統計やデータ分析に長けた人材を積極的に採用したりする。

 2012年7月には、データ専門の組織であるデータソリューション本部を新設した。同本部は、Yahoo! JAPANにまつわるあらゆるデータを統括する。扱うデータの中身は、ユーザーのアクセスデータや検索データ、広告データ、地図データ、ショッピングの購買データ、会員登録データなど多岐にわたる。

 以前は、サービス部門ごとに独自で収集したデータを分析して、サイトデザイン改修やメニュー追加などに活用していた。しかし、「サービス部門の中だけで個別に改善しようとしても、うまくデータを生かしきれず、担当者の勘に頼るということもあった」と、データソリューション本部 サービスソリューション部 部長の衣目麻里氏は振り返る。

 現在は、データの収集から処理、加工、出力に至るすべての工程をデータソリューション本部が請け負い、数値データに基づく客観的な視点から各サービス部門にフィットしたデータ分析を行っている。また、100以上あるYahoo! JAPANのサービスのうち、10個ほどの重要なサービスとは密に連携しており、データソリューション本部のメンバーが張り付きでサービス向上に取り組んでいる。

マルチビッグデータをいかにビジネスにつなげるか

 データソリューション本部が誕生するきっかけとなったのは、2012年6月の宮坂学氏の社長就任と、それに伴うカンパニー制への組織変革である。「爆速」を合言葉に、各カンパニーのリーダーが社長さながらの権限を持ち、素早い意思決定を行うようになった。それを支援する上でデータの重要性が改めて見直されたのである。

ヤフー データソリューション本部 本部長の小間基裕氏 ヤフー データソリューション本部 本部長の小間基裕氏

 もちろん、データソリューション本部が設立される以前から、ヤフーではデータ活用に取り組んでいた。しかし、広告部門をはじめ、各サービス部門でデータを取り扱っていたものの、例えば、検索サービス向上のために検索データを使う、広告コンテンツを強化するために広告データを使うなどと、シングルプロダクトに対してシングルユースという発想だった。「ヤフーは多種多様なデータを持っているのが強み。それらを組み合わせて、ヤフーしかできないマルチなビッグデータ活用を行う必要性があった」と、データソリューション本部 本部長の小間基裕氏は強調する。それを実現するための部署がデータソリューション本部というわけだ。

 マルチビッグデータ活用の一例が、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」である。これは、サイトに蓄積された検索、広告データや、ソーシャル上のトレンド情報などあらゆるカテゴリーの膨大なデータを分析したレポートで、例えば、PVと検索キーワードデータ、Twitterのつぶやきを組み合わせて選挙の参院選議席を予測したり、インフルエンザの流行状況を可視化したりした。

 ビッグデータレポートは、あくまでもマルチビッグデータのパイロット的なチャレンジに過ぎないという。実際のビジネスに結び付けていく1つの取り組みが、昨年秋に発表したプライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)の開発である。ヤフーが保有するマルチビッグデータと、広告主が持つあらゆるデータをDMPで統合、管理する。これにより、広告主は適切なメディアに対して適切なマーケティング施策が可能になるほか、広告やマーケティング施策にとどまらず、顧客分析やCRM(顧客情報管理)にも活用できる。「人にフォーカスした最適な広告体験を提供できるようになる」と小間氏は述べる。

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