移動時間にスマホで業務マニュアルを量産するスキャンマン導入事例

スキャン代行サービスを提供するスキャンマンは、事業の拡大に向けて新規アルバイトの大量採用を予定する。そこで課題となっていたのが、新人トレーニングの効率化、時間短縮化である。

» 2014年05月14日 09時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

アルバイトのトレーニングが課題に

 企業内に蓄積された膨大な書類、あるいは社員個人の名刺の束などを電子化して、管理の効率化に役立てようとするサービスが増えている。この紙から電子データに変換する作業を行う、いわゆる「スキャン代行」サービスで成長著しい企業の1つが、スキャンマンだ。

スキャンマンの杉本勝男社長 スキャンマンの杉本勝男社長

 2013年8月に社員3人で事業を本格的にスタートした同社は、半年間で売り上げを倍に伸ばしている。スキャン代行サービスを展開する企業は多数存在するが、そうした中で同社の強みは、「派遣型」であることと、1日いくらという分かりやすい「料金体系」にあるという。「スキャニングするデータを社外に持ち出さずに作業するため、リスク管理などの面から顧客に喜ばれている」と、同社の杉本勝男社長は説明する。

 現在、顧客は個人と法人が半々の割合で、個人の場合は主に名刺のスキャニングを、法人の場合は、名刺のほか、契約書や帳票をはじめとする社内書類から年賀状、領収書に至るまで、あらゆる紙データをスキャニングしているという。杉本氏は「媒体が紙であれば、ホッチキス留めされているものでも、製本されているものでも、基本的にすべて電子化できる」と胸を張る。

 スキャンマンでは、一日当たり約6000枚(スタッフ1人の場合)の名刺をスキャニングできるため、個人であれば通常1日で依頼作業は完了するが、法人のケースだと「スタッフ3人で1、2カ月かかる案件もある」(杉本氏)のだという。主に企業からは事務所移転のタイミングで大型発注が来ることが多いそうだ。

 このように、案件の量が増え、内容が多様化する中で、スキャニング作業を行う人材の増員ならびに強化が必要となってきた。同社には現在、十数人のアルバイト社員がいるが、1年後には200人にまで増やす計画だ。そこで問題になってくるのが、アルバイトのトレーニングである。

 同社のアルバイトの教育は、最初に対面での新人研修を丸一日実施し、その後は実作業の中でOJT(On the Job Training)を行う。研修ではスキャナや専用アプリを使うために必要なツールをPCにインストールしたり、裁断機の使い方を学んだりする。その際にマニュアルを用意するわけだが、当然ツールごと、作業現場ごとに手順や内容が異なるため、その分のマニュアルが必要となる。以前同社では、Webページ作成ツール「Google Site」を用いてマニュアルを作成していたが、基本的に編集作業はPCで行うような仕様になっており時間がかかること、ちょっとした情報のアップデートも手間がかかることなどから不便に感じていた。「本来の業務以外のところで作業負荷が大きくなることが、ビジネス拡大の足かせになっていた」と杉本氏は振り返る。

道案内など、マニュアルの幅が広がる

 そうした中、新たなマニュアル作成ツールとして採用したのが、ネットベンチャーのスタディストが提供するクラウドサービス「Teachme」である。同サービスの最大の特徴は、スマートフォンから簡単にマニュアル作成ができる点だ。具体的な手順としては、スマートフォンのカメラで写真を撮影し、それに端的な説明コメントを書き込んでアップデート。その工程を繰り返すことで、ビジュアルベースの分かりやすいマニュアルが出来上がるといった具合である。

これまでのマニュアル(左)とTecahmeを活用したマニュアル

 スキャンマンでは、Teachmeを採用し、既存、新規問わずマニュアルを全面的に刷新。効果としては、以前と比べてマニュアル作成にかかる時間を5分の1に短縮。またスマートフォンで作成できることで移動などの空き時間を有効活用できるため、実質的には時間短縮だけでなくさらなる効率化が図れるようになった。このように簡便にマニュアル作成が可能となったことで、「かゆいところに手が届くような、ちょっとした手順書もどんどん作れる」(杉本氏)ようになり、同社では1カ月間で実に50個のマニュアルを新たに作成したという。

 例えば、ユニークな活用方法として、顧客企業の最寄駅からオフィスまでの道順をTeachmeで毎回作成している。初めて訪問する際に、駅の出口から交差点や目印となる建物など、ポイントごとに写真を細かく撮影。それらをつなぎ合わせて「○○社への行き方」といったマニュアルを作る。これによって後日派遣されるアルバイトが迷うことなく辿り着けるようになるという。「以前は各人が地図アプリなどを使っていたが、中には分かりにくい場所にオフィスがある顧客もいて、訪問時間に遅れてしまうようなリスクがあった」と杉本氏は話す。またこの程度のマニュアルであれば15分から20分ほどで完成するため、「会社帰りの移動時間ですぐに作れてしまう」(杉本氏)ことも大きなメリットだとしている。

 このようにマニュアルの整備が容易になったことで、上述したアルバイトの大量採用とそのトレーニングもスムーズに行えるようになる。これまで新人研修にかかる時間は6時間だったが、効果的なマニュアルが作成できるようになったことで、2時間にまで短縮できるようになったという。「現在は主に首都圏での営業活動に限られているが、今後は全国に活動を広げていくこともそう遠くはない」と杉本氏は意気込んだ。

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